夢見る気持ち

並木道を通って、住宅街へと入って行く。途中で何人かの女子高校生達とすれちがった。彼女達は、はしゃぎながらしゃべっていた。私と理恵もかつては彼女達のように、何も考えずに他愛ないおしゃべりをして過ごしてきたことを思い出した。あの頃、彼氏なんていなくても十二分に楽しかった。今だってそうに違いない。そう思いながら、歩いて行くと、目的の公園にたどり着いた。
古びたベンチが幾つかあり、二つのブランコと、すべり台、鉄棒に砂場がある小さめの公園だ。健太君が、ひざ小僧をすりむいたのもこの公園に違いない。最近会っていないが、健太君や美香さんは元気だろうか。画家になりたいというひたむきな美香さんは、親御さんに許してもらえただろうか。そこも気になるところだと思っていると、犬の散歩をしている人が三人いた。一匹は柴犬で、もう一匹はゴールデンレトリバー、そして最後はウェルシュ・コーギーだった。
三匹とも飼い主のしつけがいいらしく、吠えあうこともなく、尻尾を振りながら、散歩をしていた。三匹は愛嬌のある顔をしていて、穏やかそうな表情を浮かべていた。それぞれの飼い主達は顔見知りらしく、互いに挨拶を交わしながら、立ち話を始めた。
私はとっさに腕に抱えていたクロッキー帳を手に取り、その飼い主達に話しかけていた。
「あの、すみません。ワンちゃん達をスケッチさせてもらってもいいでしょうか」
それぞれの飼い主達は、皆、笑顔で答えてくれた。
「ええ、ええ、いいですよ」
「うちの犬なんかで良ければ」
「その代わり美人に描いてやってくださいね」
快く引き受けてくれたので、私はすぐさまクロッキーを開始した。
こんなに違った犬種の犬を、一堂に描けるというのは、まさに幸運かもしれない。私は手早く、犬達の様子を鉛筆で描いていった。犬達は、動物園で見た動物と同じく、じっとはしてくれない。素早く的確に描くことが命だったりする。そして飼い主達だって、そうそう待ってはくれないだろう。
犬達はというと、地面の臭いをかいだり、互いの犬を眺めたり、飼い主の方に視線をやったりと、興味あることに対して、黒いつぶらな瞳を動かしながら、尻尾をぱたぱた振っていた。
私は犬の体の造りを正確にとらえようと、夢中になって部分クロッキーをした。そして最後には飼い主にもしっかり見てもらおうと、三匹それぞれの全体像を描いたものを一枚ずつ描いた。
飼い主達は、話しを終えると、私に声をかけてきた。
「見せてもらっていいですか」
私はどうぞとばかりに、三人にそれぞれの自分達の犬のクロッキーを手渡した。