夢見る気持ち

それから数日後、成美から電話がかかってきた。
ちょうど大学の授業が終わって家へと帰ろうとしている時だった。
「ねえねえ、桃子。最近理恵と連絡とってる?」
理恵と訊かれて、ちょっとびっくりした。脳裏に、先日の理恵の姿がちらついた。
「ううん」
「そう…。それがさあ、私この間、用があって理恵に電話かけたんだけどさあ、ずいぶん沈んだ声だったからどうしたのって訊いたら、彼氏と別れたんだって」
「え?! 彼氏と」
そんな馬鹿なと思った。あんな親し気な感じの二人が、別れるなんてことあるのだろうか。
「そうなの、彼氏と別れたんだって。だから元気なかったみたい。もし理恵に会うことあったら、彼氏のことは言わない方がいいと思うよ。それじゃあね」
成美は言うだけ言うと、向こうから電話を切った。
そんな馬鹿な。私はまた繰り返し思った。しかも沈んでるってことは、理恵が振られたということだろう。あんなに真っ直ぐで、真面目な理恵を振るなんて、なんて奴だと急に腹が立ってきた。その一方で意気消沈としている理恵のことを思うと、何かできないだろうかと思った。
 成美は触れないようにって言ってたけど、理恵のことが心配だった。理恵はまだ仕事中にちがいない。仕事帰りに会えないだろうか……。
大学の窓の外は夕暮れ色に染まりつつあった。命を燃やしているような、まばゆくゆらぐ金色の夕日が窓の外に見えた。理恵はこんな夕日に見とれることもなく、オフィス街の職場で何を思っていることだろう。
私は理恵に、今日会えないかメールを送った。するとすぐに返事がきた。どこで会うか訊かれたけど、お互いの家から近いのは、公園だったので、そこで会うことにした。公園のそばには小さな喫茶店がある。でも、こういう話は喫茶店で話すことでもないだろうと思った。
私は大学を出ると、公園へと向かった。理恵が来るまで、結構時間があるので喫茶店に入って時間をつぶすのもいいだろうと考えていた。ゆっくりと歩きながら、理恵になんと声をかけようか、そればかり考えていた。