結婚相手は常に仮面をつけた辺境伯、マークス・キースラクシード様。その素顔を見た者は社交界にもおらず、陰では醜悪な顔をしているのでは。などと噂されているそう。
 まあ、わたくしは社交界になどまったく出た事ないので詳しくは知りませんけど。
 妹のモルニカに毎度あれこれ雑用を押し付けられるわ、出た所でどうせわたくしはモルニカを引き立てる為の踏み台になるのが決まっているようなもの。
 そもそもわたくし、表舞台に立つより裏方仕事の方が性に合っているのですわ。
 家門としては歴史を持ち、古くより侯爵位をいただく我が家ですけれど、父と妹の散財癖の酷さのせいで何故かとても貧乏です。
 しかも厚顔無恥な妹はその散財や起こした問題を全てわたくしがした事にする始末。父も父で、いつも母を下げて自分を上げるような真似をしていたと。

 典型的なクソ野郎ですね。おっと、口が滑ってしまいましたわ。

 そんな使い物にならない父の代わりに母が領地の運営をして、わたくしも母の手伝いをしていたので……そもそも社交界に出る時間などわたくしには無かったのです。
 特に興味もありませんでしたし。
 しかしそんな母が一年半程前に過労で急逝し、それからは私が家門を切り盛りしていた。しかしそれももうおしまいのようですわ。

 だって妹がわたくしに出て行けと言ったんですものー。これは仕方無いですわー。
 そんなこんなでわたくしは結婚式当日を迎えました。ちなみにこれまでの二ヶ月間で一度たりとも辺境伯様とはお会いしておらず、度々送られてくる手紙でやり取りをするだけでした。
 手紙で見た感じでは辺境伯様は淡白な印象を受けましたけれど、同時に義理堅い印象も受けた。
 モルニカと比べて可愛くも愛嬌も無いわたくしですけれど……きっと役に立つ所をお見せすれば、追い出したりはしない筈。
 長年領地を運営してきた実力を発揮するのみ! です!