朔は一息つくと、瀬那のもとへと向かう。

「傷の様子は」

 朔は俯いて座り込む瀬那に声をかけた。
 一方、瀬那は朔から目を逸らし、地面に目を向けたまま返答をした。

「はい、問題ございません……」

 瀬那は歯噛みしたあと、ばっと顔をあげて朔のほうを見た。

「申し訳ございません!結月ちゃんを守れず、そして朔さまにお助けいただき、何も……何もできず……自分は……!」

 地面の土を強くかき寄せ、爪に食い込むほど握り締める。
 朔はそれを一瞬見やると、ゆっくりと口を開いた。

「あいつは守られるようなやつじゃない。それに、俺が来るまであいつとお前が戦った。死んでない。それでいい」

 瀬那は目を見開き、唇を嚙みながら朔を見る。
 朔の言葉から、結月への気遣い、思い、そして何より、自分への労いがかけられているのを感じて、瀬那は胸が苦しくなった。

「……はい。ありがとうございます」

 それしか言えなかった。
 自分の力不足と、そして主人の優しさを同時に感じる。
 瀬那はやるせなさと悔しさ、不甲斐なさを感じて、自分自身を殴りたい気持ちになった──