結月は右肩の痛みに耐えながら、大きく呼吸を乱す。
 朔は横目で結月の様子を見やり、琥珀を呼んだ。

「琥珀」

 琥珀はすぐに朔の隣に素早く現れ、主人の指令を待つ。

「こいつを凛のところへ運べ」

「朔さま、私は大丈夫です」

「うるさい、言うことを聞け」

「……はい」

 結月は朔の凄みに耐え切れず、頷くしかなかった。

 琥珀は結月の腹の部分に顔を近づけて、何度も自分に乗るように促す。

「うん、ありがとう。宮廷までお願いできる?」

「く~ん」

 琥珀はわかった、と返事をするように鳴き声を一つあげると、結月が乗りやすいように伏せた。
 結月が琥珀に身体を預けると、琥珀は結月の傷を労わるようにゆっくりと立ち上がる。
 主人に近づき顔を一回寄せて挨拶したあと、結月を乗せた琥珀は、そのまま宮廷に向かった──