「ひとまず、魔夜が強化されない程度で時間を稼ぎます。瀬那さん、もう一度見てもらえますか?」

「俺はいいけど、結月ちゃんは大丈夫?」

「大丈夫です。なんとか持たせます」

 そういうと結月は結界から飛び出し、魔夜に向かって一直線に駆けて行った。

(瀬那さんが集中する時間を作る──)

 結月は魔夜に向かって双剣を振りかざす。
 魔夜はその攻撃を軽く受け止める。
 
 負傷している結月は本領を発揮できず、受け身を取るだけでもじりじりと後退せざるを得なかった。
 

「結月ちゃんっ!右胸!!」

「──っ!」

 結月に瀬那が心臓の位置を伝える。

「ふっ!」

 結月は指示の通りに魔夜の右胸を貫いた。

(……いけた……?)

 結月は今度こそ心臓を貫いた感触を感じていた。

 しかし、魔夜は動きを止めず、結月を蹴り飛ばした。

「──っ!」

 地面に投げうつように飛ばされた結月。

「結月ちゃんっ!」

 瀬那が結月に向かおうとしたとき、二人同時にある気配を感じた。


 二人が気配のしたほうを振り返ると、そこには朔がいた──