凛は宮廷へ走り戻る途中に自らの過ちを悔いていた。
 なぜ敵は一人だと決めつけて駆けだしてしまったのか。
 なぜ守り人全員で向かってしまったのか。
 なぜ主人とその婚約者のみを残して出てしまったのか。


(斎という少年がいうには敵はもう一人……その敵は宮廷に向かっているはず)

 凛が大きな岩を軽い詠唱攻撃で壊して最短距離で進む。

(──っ!宮廷から妖気を感じる……)

 負傷した蓮人と瀬那の治療は実桜に任せていた。

(蓮人も瀬那もかなり傷が深い……早めに治療が必要になる……一刻も早く片づけなければ……)

 主人とその婚約者結月の安否が気になる。
 敵の本命は結月、もしくは主人である朔との両方であると凛は推測した。


 戻る間に凛は気配のみで戦況を読み取ろうとした。
 しかし、敵が一体消失した後にもう一体の異質な何かの気配を感じた。

(まさか……さらなる襲撃……?)



 宮廷まで残りわずかと迫ったところで凛は違和感を覚えた。

(敵の気配が変わった……あと、何か……何か神聖な強い力を感じる……朔様の気配ではないということは……結月さんか)

 凛は足を止めることなく宮廷の中にいる朔と結月のもとへ向かった──