(落ち着け……琥珀がいるということは朔様は無事。それに凛さんに寄り添っているということは、凛さんもやはり事情があって敵と通じていた。それに魁が気づいて攻撃した? なんにせよ、凛さんを助けないと)

 もたれかかった木から勢いよく起き上がるが、毒が残っているせいでめまいがしている。

(きつい……けど、大丈夫。凛さんを助ける。死なせない。絶対に全員で帰る)

「私に任せてもらえませんか?」

「結月?」

 結月は双剣を抜き、千草色に変化させると目をつぶり、神経を集中させる。
 脳内では凛と捜索した涼風家の蔵でのことを思い出していた。

(あの蔵で見つけたわずかな手がかり。あれをずっと自分なりに考えていた。『翠緑の風』。私は知ってる。これは……)

 結月の周りに渦を巻くように千草色の光が舞う。
 それに呼応するように結月の双剣が脈を打つように、鼓動する。

「我が涼風の名において命ずる。生きとし生けるものへの祝福をこの者に与えたまえ」

 その言霊をきっかけに、結月と凛を囲むように光の柱が立つ。

「す、すごい……」

 結月の目は藍色に輝き、凄まじいイグの力が結月のもとに現れる。
 そしてゆっくりとその光は凛へと吸収されていき、やがてあたりは静かになる。