宮廷最奥部に位置する部屋「泉水の間」。
 円卓に座する五人の男たちは深夜にも関わらず、会合を開いていた。

「間違いないんだな?」

 朔が問う。

「はい。実桜と私の前で豹変したように妖魔をなぎ倒し、そのまま意識を失いました」

 凛が一際冷静な口調で当時の状況を報告した。

 結月は妖魔を一撃で仕留めた。
 否、実際のところもはや常人には『一撃に見える』その斬撃で敵の息の根を止めていた。
 そしてそのまま力尽きてその場に倒れこんだ。

「ひとまず、かすかな外傷の治療を行い、自室で眠っていただいております」

 その言葉を最後にわずかな静寂に包まれた。
 新たに言葉を発したのは瀬那だった。

「じゃあ、やっぱり【神器】で間違いなさそうってことですか?」

「はい。涼風家の刻印も見られましたし、間違いないと思います」

「12年前のあの時に行方不明とされていた【神器】は結月に継承されてたってことっすか?」

 蓮人は確認をするように凛に質問をした。

「おそらく。千十郎さんの報告では、神社の前で結月さんを見つけたときには『すでに持っていた』ということですから、継承は済んでいたと見るのが自然です」

「朱羅はあの日涼風の娘と神器を消滅させることができなかった。あるいは『あえてそうしなかった』」

 朔が頬杖をつき、長い足を組みながら言葉を発した。
 あえてそうしなかったのであれば、何を目的に朱羅はそうしたのか。
 その場にいるもの誰もが答えを出すことができなかった。