「今回のお話はお断りさせていただきます」
「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」
グランは断ると会長だけでなく、ティナたちも驚いた様子だった。
「なんでなんで!?メリットしかないんだよ?」
「絶対に考え直したほうがいいわ!本当にチャンスなのよ!?」
ティナとエリザベートがそう言うと他の人達もそうだとうなずいていた。
「一応理由を聞いてもいいかい?」
「昨日の夜考えたんですけど僕の場合メリットになるはずのものもあまり意味ないかなって」
「?どういうことだ?」
グランが懐からギルドカード取り出すと全員が驚いた顔をした。
「この通りSSSランクなので」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
グランが取り出したカードはこの世界で最も硬いといわれるアダマンタイトでできた黒色に輝くものだった。
ちなみにアダマンタイトは超希少金属であり武具にするには向いていないためこのような使われ方が多い。
「き、君はSSSランク冒険者だったのか……」
「ど、どうしてSSSランクになってるの……!?昨日まではSSランクだったのに」
「今朝ギルドから連絡が入ってここに来る前に行ったらSSSに昇格したんだ」
「今までどんなことをしてたのよ……でもさすがグランね」
「やっぱりグランと一緒にいると飽きないです」
「まさかグランがもうSSSランクになるなんて……これからも頑張らなきゃ」
「私大丈夫かしら……?がんばって特訓しなきゃ」
「グランすげーな!」
「グラン君がまた離れていく……」
グランは自分がSSSランク冒険者であることやその資格で将来は大丈夫なことなどを説明した。
「それに僕が生徒会に入っちゃうとみんなとの時間が減っちゃうので」
「「「「「「「グラン……」」」」」」」
「なるほどな。思ったより手ごわいようだ。しかし私もSSSランクと聞いてだまっていられるわけがない!」
「というと?」
「私と勝負しろグラン!」
「勝負?」
「ああ。私が勝ったらグラン君は生徒会に入れ。グラン君が勝ったら好きにするといい」
「……わかりました。やりましょうか!」
~アントネットside~
「それでは試合を始めますわ!」
私はアントネット・レア・ブルトン。
誇り高きブルトン家の長女にしてこの学園の生徒会副会長ですわ。
もともと会長になる予定でしたがクリスとの選挙に敗れ副会長になりましたの。
私よりも強い彼女は実にいいライバルですわ。
今となっては彼女の人柄もわかり実力も対等だったため仲良くいい関係を築けてますの。
そんな私ですが驚いたことにグランさんが生徒会に入るのを拒否し、入会をかけて会長と勝負をすることになりましたの。
何せ私が審判に選ばれたのですから!
まったく羨ま……ではなく不愉快ですわね。
この私でも勝てるかどうか五分五分ですのにいくら首席だからって会長に楯突こうなんて……。
でもクリスが勝つに決まってますわ。
~グランside~
闘技場にやってきた一行は早速試合の準備をし始めた。
試合が始まり戦闘態勢に入った二人はお互いに間合いを詰められないでいた。
やっぱりクリスタベルベッカ会長は強いか……。
さすがは生徒会長だね。
今まで戦った中で間違いなく一、二を争うレベルだ。
グランが冒険者の依頼で戦ってきた盗賊や犯罪者たちは練度の低いものが多く、グランに匹敵するものは一人もいなかった。
強いて言うなら騎士団の訓練に参加する依頼で模擬戦をした団長が一番強かったぐらいだ。
ちなみに騎士団団長に勝って以来騎士団に気に入られよく指名依頼が入っている。
その騎士団長に匹敵するとなるとさすがは生徒会長といったところだろうか。
ある程度たったところで二人は同時に駆け出した。
「海割流一ノ型水割!」
「魔法剣:雷撃っ!」
「はぁっ!」
「やぁっ!」
なんて腕力だっ!?
しかもシンプルに技がうまい……。
これはちょっと本気でやらないとまずいかもな。
結局均衡状態に陥りグランが引いたところでクリスタベルベッカが追撃を決めようと追ってきた。
「転移!」
「なっ!?」
グランは転移をしてそれをかわすといったん距離を取った。
「強いですね会長」
「これでもこの学園のトップだからな。そういうグランこそさっきのには驚かされたよ。まさか伝説といわれた転移が使えるとはなな
「この魔法は僕の固有技能なので」
「なるほどな。それじゃあ私も固有技能を見せるとしようか。今までみたいに防げるとは思わないことだ」
そういうとクリスタベルベッカは固有技能を発動した。
「海割流一ノ型水割っ!」
「何の!魔法け…………っ!?」
突如グランをおぞましいほどの悪寒が襲い、それに従ってグランは回避を選んだ。
刹那グランのいた場所に大きな地割れが走っていた。
なんだったんだ今のは!?
地面が切れている?
確か学園の闘技場はかなり頑丈な素材で作られているうえ防御魔法に状態維持魔法までかかっているから簡単には傷つかないはずだ。
もし傷がついたとしてもすぐに魔法の効果で修復されるはずだからこんなに長く残らないはず……!
つまりここからいえることは
「会長の固有技能は鋭利化の上位互換とかですか?」
「私の固有技能は……」
「私の固有技能は絶断。物を絶対に斬るシンプルな固有技能だ」
会長の固有技能が判明しその後も二人の戦いは熾烈を極めた。
グランはいつ会長が絶断を使用するかわからないためできるだけ防御はせずに回避に努めた。
その結果グランが避け回ってるだけの試合が続いていた。
これはまずいな。
このままだとジリ貧で負けることになる。
そろそろ攻撃の一手に出たいけどどの技能を使おうかな。
下手に中途半端だと絶断でやられるから注意しないと。
「まさかグラン君がここまでの実力だとはね。副会長でもはじめはここまで持たなかったんだからね。さすがはSSSランクの冒険者といったところか」
「会長こそここまで技能を持続して放てるなんて優れた技能なんですね」
「そろそろ決着をつけたいところだが……」
「そうですねそろそろ終わりにしましょうか」
グランとクリスタベルベッカは互いに見合いお互いの最高の技を放った。
「海割流奥義海断裂波!」
「魔法剣:空間裁断」
二人の周りに衝撃波が発生し争いは熾烈を極めた。
両者ともに衝撃波に対応し一歩も譲らない様子で距離を詰め攻撃体制へと入った。
「一時付与氷花っ!」
「武具神:刀剣創造!斬撃強化っ!鋭利化っ!」
「海割流秘奥義海開っ!」
「桜栄二刀流桜吹雪」
「はあぁっ!」
「やぁっ!」
クリスタベルベッカのすべてを断ち切る絶断の斬撃とグランの乱れ突きがぶつかり合い拮抗が続いていた。
これでも勝てないか……。
本当にこの学園のトップなだけあるね。
しょうがないから一瞬だけあれ使うか。
「……憑依:剣神ヤマト」
「ぬお!?」
グランの剣戟が一時的に速度を増しクリスタルベルベッカを圧倒した。
「はあぁっ!」
「くっ……かはっ……」
グランの渾身の一撃が決まり接戦であった模擬戦はグランの勝利で幕を閉じた。
~クリスタベルベッカside~
「負けたか……」
約束通り私はグランを諦めることにした。
しかし何かあった時には力を貸すように頼み込み承諾を得る事に成功した。
私に勝る力を持ちながらおごることが無いのは純粋にすごい。
俄然彼に興味がわいてきたな……生徒会で働いてもらえないのはとても残念だ。
しかしこれから先きっと彼と関わる機会がまたあるだろう。
その時が楽しみだ。
~グランside~
「グランすごいね!まさかこの学校で一番強い生徒会長に勝っちゃうなんて!」
クリスタベルベッカとの試合が終わり、放課後になった。
グランはティナと二人で王都に買い物に来ていた。
「なんか久々のデートだね」
「学園の入学式からずっとみんなで一緒にいたもんな」
「二人でいることが新鮮だよね。みんなで一緒にいる時も楽しいけど二人の時のほうがグランを独り占め出来てうれしいな♪」
「///これからももっと二人でいろいろなところに行こうな」
「うん!」
グランとティナは二人で遊びにこれたことが本当にうれしいのか甘い空気を醸し出していた。
「でもでも本当によかったの?あんなに好待遇で会長にも泣きつかれたぐらいなのに……」
「ティナも聞いてたと思うけれど冒険者の最高峰であるSSSランクになったんだ。とはいってもまだまだ駆け出しだけどな。だから僕にとってはメリットが少なかったんだよ」
「確かにそうだけどさ……まあいっか!グランと一緒にいる時間が変わらないから」
「みんなといる時間も大切だけどティナと二人の時間もこれから増やせるように頑張るよ。僕の大事なお嫁さんだからね」
「///グラン……」
ティナはうれしいのか狐耳をピコピコさせ尻尾をはち切れんばかりにぶんぶんと振っていた。
(やっぱりかわいいなぁ。改めて二人の時間を大切に過ごそう!)
二人は他にもいろいろな話をしつつ王都を散策するのであった。
二人をっている跡がいるのも気付かずに……
生徒会長との模擬戦から一週間がたった。
すでに入学から二か月以上たちそろそろ夏休みムードが高まってきていた。
「そろそろ夏休みだな!グランはどこかに行くのか?」
「僕は家族と自分の領地に戻るよ」
「いいよな~自分の家の領地があるなんて」
「フレッドリックはないの?」
「うちは準男爵だから産まれた時から王都だよ」
「なるほどね~フレッドリックの家も名誉貴族だったね」
「でもなんでグランの家は領地持ってるんだ?騎士爵だったよな……」
「確かに……その辺は俺も気にしたことなかったな」
その後疑問が解けないままほかのみんなが来て夏休みの予定の話へと戻っていくのであった。
「おはよう~二人とも」
「何の話をしていたのですか?」
「そろそろ始まる夏休みはどう過ごそうかって話だよ」
「みんな自分の領地に戻る感じか?」
「私はグランと一緒かな?私の家も同じ方向にあるし」
「私たちは一緒にお互いの領地を巡る予定よ」
「私たちは王女ですから」
「一応何かあった時のためにある程度は王都にいないといけないのよね。別にどこかに行っちゃいけないって訳ではないのだけどね」
「大変なんだね……お土産買ってくるからね!」
「私たちも!」
「何か希望があれば言ってね。できるだけ添えるようにするから」
しばらくして担任のステインが入ってきてホームルームが始まり今日の連絡がされる。
「おはよう皆!今日の授業は夏休み前の特別授業だ。全員大講義室に集まるように」
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大講義室に全校生徒が集まり講師を待っていた。
「特別授業なんて聞いてないけど楽しみだねグラン!」
ティナは尻尾をふりふりしながらそういった。
「多分夏休み前だから安全教室とかそんなところだと思うぞ」
「懐かしいわねSNSとか交通安全とかよくやったわ」
「でも両方ともほぼほぼないのに何をするんだろう?」
グランやナミア、エリザベートの転生組は前世でよくやっていた講義を思い出していた。
しかしその予想は外れることになる。
「お待たせしました!それでは講師の方々に登場していただきましょう!」
そういって出てきたのはグランがよく知っている人物だった。
「本日講師を務めるカール・レア・ベルセリアだ」
「同じく講師でカールの妻のニーナ・レア・ベルセリアよ」
「父様!?母様!?何でここに!?」
講師として出てきたのはグランの父であるカールと母であるニーナだった。
これにはティナも驚いたらしく「お義父様とお義母様が講師……?」とつぶやいていた。
ナミアたちはグラン叙爵の時に会っているがなんでグランの両親が?と戸惑い気味だ。
ほかの人も誰だ?といった反応が多い。
そんな中さらに驚く発言をした。
「これから夏休みを迎える君たちにこの国のことについて話しておきたいと思う」
「かつて剣聖、聖女と呼ばれた私たちが実際に体験した話よ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~カール&ニーナside~
私たちはこれまで冒険者として数多くの地域を巡ってきた。
その過程で様々な人と仲良くなったり、時には対立したりもしたよ。
そんな旅を続けているうちにいつの間にか私たちは剣聖と聖女と呼ばれるようになった。
始めは噂程度だったがその称号はいつしか世界規模で通用していったんだ。
どの国へ行っても冒険者たちに尊敬され、恐れられていた。
やがて国からも正式に称号を与えられた。
でもその裏で世界は動き出していたんだ……グラハム教の手によってね。
セレナーデ教ではその時内部で意見が対立して二つの派閥に分かれた。
片方は今皆さんが信仰している教えと同じだがもう一つのほうが問題でな。
ある日突然一部の人間が通称邪神と呼ばれる神を信仰する反セレナーデ派が現れたんだ。
そいつらがセレナーデ教会と分裂した後は聖セレナーデ神聖国はこの事実を必死で隠そうとした。
だがもうその時には遅かった。
急激に勢力を伸ばした反セレナーデ派はその後グラハム教と改名し今もその勢力を伸ばしてるわ。
そんなグラハム教は始めこそ真面目に勧誘活動をしてたんだけど今ではテロ組織になってるの。
皆さんがこの事や私たちを剣聖と聖女だと知らなかったのは箝口令が敷かれていたからよ。
だから剣聖とか聖女の存在自体は絵本で知っていたと思うけど実際に誰なのかはわからないはずよ。
でももう隠しきれなくなってきてるわ。
奴らの活動が活発化してるからね。
そんなわけで今年から情報を開示することになったの。
一人でも被害者を減らすためにもね。
ということでこれから夏休みでいろいろなところに行く皆さんに私たちからある技を伝授するわ。
もし巻き込まれたり奴ら見かけたそれを使って捕縛して欲しいの。
これは国から出ている緊急依頼よ。
緊急依頼は冒険者、傭兵、騎士、そしてその見習いを徴兵して使える依頼なの。
もちろん無理にとは言わないわ。
でもいざというとき身を守る事ができるように私たちが派遣されてきたのよ。
じゃあこれから始めるから全員校庭に移動してね。
~グランside~
カールとニーナに技を教わり、放課後になった。
「父様!母様!驚きましたよ」
「すまんなグラン。さっきも言ったとおり箝口令があったのでな」
「本当にお義父様とお義母様があの伝説の剣聖様と聖女様なんですか?」
「そうよティナ今まで黙っててごめんね」
「っとそうだ!さっきみんなと話してたんですけどなぜベルセリア家は領土を持ってるんですか?」
「良い質問だねフレッドリック君。実は先代国王から直々に領土をもらったんだよ」
「私たちはグラハム教を一度壊滅寸前まで追いやったわ。その時に騎士爵の爵位と例外として領地もいただいたの。」
「うちは騎士爵で跡を継げないから領地は私たちが死んだら国に返されることになっているんだ」
「でも多分グランが叙爵されましたからきっとグランの領地になると思います」
その後二人は用事があるということで帰っていった。
残ったグランたちは教えてもらった技を復習することにした。
「それにしてもカール様とニーナ様はすごいね!まさかあんなに捕縛魔法のバリエーションがあるなんてね」
カールとニーナが学園の生徒に教えたのは捕縛魔法だった。
しかも一つではなく数多くのパターンを用意してだ。
「でもそれ以上に驚きなのはそれをすべて使えたグランよね……。私達は多くても二つが限度なのに」
「人それぞれ得意不得意があるからあまり悲観しすぎるのもよくないわよシャミア」
「そうですよグランが化け物なだけですから」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なんかものすごくヘイトを買っていたような気がするけれどとりあえず今日の訓練を始めようか」
「今日は何するんだ?」
「今日はさっき教わった捕縛魔法の練習にしようと思うんだ」
様々な方法で逃げまわるグランを捕縛魔法で捕まえるといったものだった。
「僕はそう簡単に捕まるつもりもないし何より転移があるからね。だから全員まとめてかかってきていいよ」
「「「「「「「!!!」」」」」」」
「随分と舐めたこと言ってくれるじゃねーか……」
「私たち一人ずつならまだしもまさか全員でも余裕とはこれは宣戦布告ととらえていいかな?」
「ま、待ってくれ!フレッドリック、アレグサンダー僕はそんなつもりで言ったんじゃ……」
「これはグランが悪いでしょ」
「そんな……ティナまで」
「フフフ……日頃の恨み晴らしてやるわ!」
「今までの精算をしましょうかしら?」
「大会の借りは返させてもらうね!」
「どうせなら何か賭けませんか?」
「「「「「「「いいね!」」」」」」」
みんなに喧嘩を売ったグランは「やる気になって良かったけど思ったより殺意高いな!?」と心の中で叫びつつ訓練を開始した。
グランが喧嘩を売り始まった捕縛魔法の訓練はグランの圧勝で終わりを迎えた。
ルール的にはグランを五分以内に捕縛魔法で捕まえたら終わりというものだった。
また五分を超えるとグランが一気に捕縛魔法を発動しみんなを捕まえていた。
「全然勝てなかった……」
「なんであんなに一度に大量に発動できるのよ……しかも全部属性違うし」
「みんなも鍛えればあれぐらい簡単にできるようになるよ」
「私はグランみたいに何種類も魔法適性を持ってないから無理だよぉ」
「それはちょっと違うよティナ。適正はある程度得意かどうかを見るだけで普通に訓練すれば使えるようになるから」
「「「「「「「そうなの!?」」」」」」」
「ぜひ他の属性も教えてください!」
「私もお願い!」
「じゃあこの後概念だけ教えようか。みんな僕の部屋においで」
「「「「「「「やった!」」」」」」」
その日の訓練を終わらせたグランたちはみんなで寮へと帰るのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
寮へと着いた一行はカノンも交え、魔法を学ぶための勉強会を開いていた。
「こうして集まるのもなんだか恒例になってきたわね」
「いつも呼んでくれてありがとうございます!」
「カノンも久しぶりだね!」
「はい!私も早く学園に入って皆さんと一緒に学びたいです!」
「じゃあ始めようか」
「そうね今日はもう時間もあまりないし早いところ済ませちゃいましょう」
雑談もそこそこに勉強会を始めることにした。
「まず属性の確認からだね。じゃあカノン。属性を全部言えるかな?」
「はい!基本属性の火・水・風・土・光・闇・氷・植物と希少属性の神聖・機械で合計十属性です」
カノンは嬉々としてグランの質問に答えた。
「そうだね。今の十属性の魔法は固有技能とは違って訓練すればだれでも使えるものなんだ。ただ人それぞれ適性があってそれが無い属性は使うことができないというのが今よく言われているんだ」
正解したカノンは誇らしそうに胸を張った。
「でもでもグランが言うにはどの属性でも自由に使うことができるんでしょ?」
ティナがそう聞くと他の面々もうんうんと頷いた。
「そうなんだ。あくまで使いやすくなるってだけで使えないことはないよ。訓練は大変だろうけどね」
その後グランは各属性のイメージを教え今日はお開きとなった。
グランの両親の正体が判明した翌日から学園は休みに入った。
いわゆる大型連休である。
地球で言うとこのゴールデンウィークだろうか。
グランたちは普段通り朝練をするために集まっていた。
学園は休みだが施設は全て使える。
朝練にはカノンも参加することになりグランは迎えに行っていた。
「お兄様!今日は誘ってくれてありがとうございます!」
「普段は一緒にできないから休みくらい一緒にね」
「他の皆さんに会えるのも楽しみです!お兄様に訓練の成果も見せたいですし」
二人が訓練場に着くとちょうどナミアとエリザベートが模擬戦をしていた。
他のみんなは観戦だ。
「風魔弾!」
「魔力障壁!召喚:ブラッドベアー」
エリザベートは固有魔法でもある召喚魔術を駆使しナミアを追い詰めていた。
ナミアは魔法と剣で応戦していた。
形成はナミアの方が有利に思えたがブラッドベアーの登場で大きく変わった。
「ブラッドベアー、グランドクロス!」
「えっ!?」
ブラッドベアーは赤い体毛で覆われていて血のように赤いためその名がついた動物である。
しかしこのクマは見た目に反してなんと地属性の使い手なのだ。
ナミアもこのことを知らなかったみたいでやられてしまった。
「まさかそのクマさんが地属性だったとはね。まさに初見殺しだよ」
「私も最初は驚いたわよ。でもすぐに仲良くなれたから良かったんだけどね」
「エリーは昔から動物に好かれるよね」
「グランはめちゃくちゃ警戒されてたわねそういえば」
その後グランとカノンも合流し朝練を始めた。
グランとカノンは模擬戦をやることにし、他のみんなも同じく模擬戦をすることにした。
あとでナミアたちともやることを約束し二人は向き合った。
「じゃあお兄様行きますよ?前までの私と思って舐めてかからないことです!」
「カノンがどんな成長を遂げているか楽しみだよ。じゃあまずは火球百連!」
「そんなのはお見通しです!水球百連!」
「まずいっ!広域障壁!範囲防御」
「きゃっ!」
グランが放った火球とカノンが放った水球がぶつかり見事に水蒸気爆発が起こった。
グランは瞬時に防御魔法を放ち周りにいたみんなと自分たちを守った。
しばらくして蒸気が晴れるとみんな無事だったみたいで驚きの表情を見せていた。
「……ご、ごめんなさい」
「大丈夫だった!?」
「はい……」
「何事もなくて良かったよ。でも戦闘の観点から言ったらその判断は間違ってないから今回の失敗から学んで次に活かそう!」
「二人とも大丈夫!?」
「無事だよありがとう。そっちは?」
「グランの魔法のおかげで大丈夫よ!なんなのあの魔法は!?あんなの宮廷魔術師でも使ってるの見たことないわ!」
「皆さん本当にすみませんでした!」
「いいっていいって!みんな怪我なかったし」
(でもまさか水蒸気爆発が起こるなんてな……)
そんなこんなでトラブルがありながらも朝練を終えるのであった。
朝練を終えたグランたちは一度部屋へと戻り、食堂に集まっていた。
何気に食堂で全員が揃うことは珍しく、カノンも今日は一緒に食堂で朝食をとっていた。
「グランはこの大型連休で何するの?またこの間みたいに旅行にでも行く?」
「旅行いいね!今回は短いから日帰りでどこかに行ってもいいかもね」
「でも日帰りって無理なんじゃないの?どこに行くのも遠いもの」
「私たちもどこか遊びに行きたいねエリー」
「お兄様の旅行は移動が転移なので日帰りでも十分行けますよ」
ナミアとエリザベートは日帰りは無理なのではないかと思った。
しかしカノンが転移魔法の存在を思い出させてくれた。
あれほど模擬戦で悩まされていたのになぜ忘れていたのだと二人は思った。
「そういえばグランは転移が使えたわね。私たちも行きたいわ……」
「私たちは王都から出たことありませんし」
「じゃあみんなで行くか?」
「いいのか!?俺行きたいところがあるんだよな」
「私も私も!」
その後みんなでどこへ行くかの話し合いが始まった。
ティナやナミアたち女性陣は景色がきれいなところが良いと言い、グランたち男性陣もそれに賛同したため候補地を探し始めた。
「綺麗な紅葉とか見れるところとかいいですね」
「街並みが綺麗なところもいいよね」
「じゃあ水都はどう?あそこなら少し行けば世界一美しいと言われる高原もあるし街並みも幻想的だから」
「「「「「「「「賛成!!」」」」」」」
そんなこんなで連休の予定が決まり早速明日から行くことになった。
女性陣たちはこれから買い物に行くらしい。
グランは何か依頼でも受けようかとギルドに行くことにした。
「俺も一緒にギルドに行ってもいいか?実はまだ冒険者登録してなかったんだよな」
「じゃあ一緒に行って軽く依頼でも受けてこようか」
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「おお……ここが冒険者ギルドか……」
「凄いよね。王都だからこんなに立派っていうのもあるけど」
グランたちが中に入ると多くの冒険者がこちらを見てきた。
普段だったら子供が登録しに来ただけに見えるので冒険者たちもすぐに興味を失っていた事だろう。
しかしグランは史上最年少でSSSランクに登り詰めた有名人のためかかなり注目を集めていた。
「お久しぶりですグラン様。本日はどうされましたか?」
「久しぶりハルカさん。今日はこっちのフレッドリックの登録をしに来たんだ」
「こちらが噂の……私グラン様専属の受付嬢をさせていただいておりますハルカと申します。以後よろしくお願いします」
「俺はフレッドリック・レア・サロタだ!よろしくな!」
「では登録を行いますのでこちらをご記入ください」
「じゃあぼくは依頼見てるから終わったら来てね」
「おう!また後でな!」