「おはよう!」
「おはよ~」
入学式から一週間たちクラスにもだいぶなじんできたころでそれは起こった。
「今日は新入生歓迎の親善試合の出場者を決めようと思う」
担任のステイン先生が教室に入ってくるなりそんなことを言い出した。
「な、なあフレッドリック。親善試合ってなんだ?」
「あれ?グランは知らなかったのか……。親善試合ってのは俺たち新入生が先輩方に自分を売り込む行事なんだ。魔法研究会や剣術訓練部みたいな部活に入る時に有利になるんだよな。もちろんそこに出なかったから……とか全然活躍できなかった……とかでもはいれる部活もあるんだが勝って活躍したほうが強い部活に入れるぜ」
「へ~そんな行事があったんだね」
「俺は知らなかったことのほうが驚きだよ」
「じゃあ参加する人は手を挙げてくれ。……おお、全員か今年はやる気があるなぁ」
「こんな行事があったなんてびっくりだね」
「私たちも知らなかったわ」
「出るからには絶対勝とうね!」
「でも個人戦になるからみんな敵ってことになるぞ?」
「は!そうだった。ぅぅぅ絶対に負けないよ!」
「私たちはグランと毎朝訓練してるから他の人はあんまり注意しなくてもよさそうね」
「でもものすごく強い人が他のクラスにいるかもしれないしこのクラスの人たちも奥の手を持っているだろうから」
「それもそうね」
「ここにいる人たちにはある程度手の内をさらしているのですからそこが不安です……」
「そうだねでも私はグランに教えてもらった奥の手があるよ!」
「「「「「いいなぁ……」」」」」
「よ、よかったらみんなにも教えようか?ティナのとはまた違うけど」
「同じものでもいいんですよ?」
「それだとダメなんだサリーネ。今回ぼくがティナに教えた技はティナ専用に創ったものなんだ。それをティナ以外の人が使ってもうまく使えなかったり本来の威力が発揮されないんだ」
「なるほどね……。じゃあ私たちにも創ってよ!」
「わかったよ。それぞれ何個か考えておくから出来たらその中から選んでもらうよ」
「「「「「やったぁ!」」」」」
「ちなみにティナにしか教えてないのか?」
「いや妹にもいざという時の護身のために教えてあるよ」
「カノンちゃんにも教えてたんだ」
「また会いたいなぁ……今度はできれば遊びに行きたい!」
「今度の休みにでも連れてくるよ」
「そういえば転移の技能が使えたんですね」
「こんな便利なスマホも創れるし」
「「「グランっていったい何者!?」」」
「「「「ははは……」」」」
新入生歓迎大会の出場を決めたグランたちはより一層朝練と放課後の訓練に打ち込んでいた。
「そういえばこの間言ってた奥義が完成したから伝授してくよ」
「マジか!ついに俺もグランみたいに強くなれるんだな!」
「これで優勝間違いないわね!」
「より一層やる気がわいてきました!」
「でも扱いが難しいから大会までこれの習得に時間を費やした方がいいね」
「なるほどね」
その後グランにそれぞれ教えてもらい習得に向けて練習に励んだ。
そしてついに大会初日を迎えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「今日は大会初日だね!」
大会は二日間に渡って行われ一日目の予選トーナメントでベスト8まで決め二日目に決勝トーナメントと先輩方によるエキシビジョンマッチがある。
「せめてベスト8には入りたいよね」
「そうですよねそのためにグランに今までいろいろ教わってきたんですから」
「奥義はなんとか間に合ったけどあまり使いたくないわね」
「ここぞってところまで温存しときたいからね」
「じゃあ頑張っていこう!」
「「「「「「お~!」」」」」」
第一回戦はグランvsニールだ。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いいたす」
「では第一回戦始めっ!」
グランは試合が始まると同時に魔法を組み立てた。
「火焔竜!」
「……えっ?」
その結果ニールはあっけなく敗れた。
「……あ、あれ?」
「しょ、勝者グラン選手!」
その後もグランは危なげなく勝ち続けベスト8まで駒を進めるのだった。
「「「「「「「あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いします」」」」」」」
七人はグランの部屋に集まり新年を祝っていた。
グランが転生したアリストタパスは地球とほぼ同じ月日の経ち方だった。
1年が12月に分けられており、1ヶ月は30日、一週間は6日間の360日であった。
今日はそんな一年の始まりということで一番広い(物が無く首席のため)グランの部屋に集まっていたのだ。
「今日からまた一年が始まるね!」
「そうだね。今年も婚約者としてよろしくねティナ」
「こちらこそよろしくグラン!」
「また二人だけの空間を作っちゃって……わたしたちをのけものにしないでよね!」
「「はっ!!」」
「ご、ごめんね〜」
「そうだ!いろいろ正月に食べるものを作ってたんだそれを食べよう!」
「「「「賛成〜!」」」」
「じゃあ準備してくるからちょっと待ってて」
そう言ったグランが台所へと駆けていくと話題は自然と学園のことになった。
「そういえば入学してからもう9ヶ月経つのよね……」
「もうそろそろ進級だぜ?信じられないよな」
「私たちはかなり変わったわね。……主に実技面が」
「グランに徹底的に鍛えられましたから……。みんな奥義も教わって完璧にしましたし」
「学業面もかなりいいんじゃないか?グランはいつも的確な答えを返してくれたし、教え方も学園の教師に負けず劣らずって感じだったもんなぁ。やっぱりグランはすごいぜ!」
「お待たせ〜」
そう言ってグランが持ってきたのは鍋と重箱だった。
「おお〜〜!これっておせちとお雑煮?」
「そうだよ。流石に揃わなかった食材は他のもので代用したけど前に食べたものと同じようになってるはず……」
「すごいわねグラン。おせちも作れたなんて」
「ありがとうエリー。じゃあ冷めないうちに早速食べようか」
グランが全員に魔法で料理を行き渡らせるとみんなで食べ始めた。
転生組以外は初めて見る料理に興味を持ったのかさっきからずっと眺めていた。
「これはお雑煮?とっても美味しいわね!」
「こっちの栗きんとんも美味しいです!」
「この伊達巻きっていうやつ甘くて美味しいね!」
「この煮しめも味が染みてて美味いぞ!」
「それは良かった。気に入ってもらえたみたいで」
「食べ終わったら教会に行きましょう!」
「いいわね!ついでに街も見ていきたいわ。何かやってると思うの」
おせち料理とお雑煮を食べ終わりグランたちは教会にやってきた。
お布施を払いお祈りをすると転生組は神々の世界へと誘われた。
「久しぶりじゃ。よくきたのぅ三人とも」
「お久しぶりですタパス様。あけましておめでとうございます。」
「今年もよろしくな。まあいい座ってくれ」
「そっちでの生活はどうじゃ?」
「とっても楽しいですよ!」
「はるとも一緒にいられるし……」
「楽しそうでなによりじゃ。これからも他の者たちと存分に楽しんどくれ」
「「「はい!」」」
少し短めの邂逅が終わると元の場所に戻ってきた。
(向こうにいる間こっちの世界は時間が止まってるんだろうか?)
「じゃあ街に行ってみよー!」
街に出ると屋台を出している人や大道芸をしている人がたくさんいてかなり賑わっていた。
「いっぱい美味しそうなものがあるね!」
「あっちの方なんか面白そうです!」
「じゃあ全部端から回ってこうか」
「そうしよう!」
その後街を歩き回り存分に楽しんだグランはまた来年も来ようと心に誓うのだった。
「今日はついに決勝トーナメントだね!」
あのあとティナ、ナミア、エリザベート、フレッドリック、シャミア、サリーネは全員決勝トーナメントまで駒を進めた。
八人中七人が知り合いのためそこで潰しあうことになってしまった。
「今日はみんな試合相手になるね……」
「私はここにいる人たちよりもあと一人の方が心配だなぁ。魔法をバンバン撃ってくると厄介なんだよねぇ……」
「私はそれよりもあと一人の方が心配だわ」
「なんとか奥義は間に合ったけど……」
「あまり使いたくはないわね」
「グランの方が怖いと思うぜ……」
「「「「「それな」」」」」
「唯一奥義が効かない相手ですからね……」
「「「「「確かに……」」」」」
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「では本日も試合を開始しましょう!」
司会がそう宣言すると会場は熱気で包まれた。
「初戦の相手は……」
「グラン!最初は私とだよ!」
「最初はナミアか。手加減はしないから全力で行くぞ?」
「望むとこだよ!前世では勝負事は全部私の方が強かったし」
「前はそうだったけど今はそうも行かないぞ!俺が絶対に勝つ」
「二人とも頑張って~!」
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「それでは早速始めていきましょう!第一回戦のカードはこの二人グラン選手vsナミア選手だ!グラン選手は今年度首席の超優秀な選手!何でも入学試験では魔法訓練用の的を全て破壊し剣術ではギード先生に唯一勝利!ナミア選手はグラン選手の幼なじみで剣術ではこの学園トップクラスとなります!さらにこれまでの試合を無傷で乗り越えてきた!この二人どっちが勝ってもおかしくないほどハイレベルな戦いが見れることでしょう」
選手紹介がされ二人は試合会場に入場した。
(ナミアは肉弾戦特化型だ。下手に突っ込んだら向こうに軍配があがる。かといって魔法をただひたすら放つにしても即座に距離を詰められて終わりだろう。向こうも魔法が弱点なことは知っているはずだからな)
(グランは始まってすぐに距離は詰めてこない。まず様子見の魔法を放つはずだからそれをかわすか迎撃するかで少しずつこっちから距離を詰めていこう!)
「それでは試合開始っ!」
開始の合図と共に二人は動き出した!
「身体強化ッ!」
先に動いたのはナミアだった。
(グランに動かせたら後手に回ることになる……!だから先にある程度ダメージを……)
「させるかっ!火球十連!」
(ナミアが距離を詰めてくるのは読んでたけどここまで早いとは……作戦を組み直さなきゃいけないな)
「ハッ!」
ナミアはグランが放った火球を全て剣圧で薙ぎ払った。
「なっ!?」
(嘘だろ!?剣圧だけで!?何かカラクリがあるはず……)
その後グランはしばらく魔法で様子見することを決めた。
「フッ!……ハッ!随分と余裕みたい……だね!グラン」
「まさか……そんな余裕なんてないよ。むしろナミアこそ余裕みたいだね。剣圧だけで俺が放った魔法を消してくるとは思わなかったよ」
「私だってここに入るためにッ!……訓練してたんだから!それにここにきてからもッ!グランと毎朝訓練してたでしょ?」
「そうだったね。少しナミアのことを見くびっていたよ。ここからはギアを一つ上げていくぞ?」
「望むところだよ!」
「一時付与:火纏!」
グランが使った一時付与はこれを付与した武器で攻撃するとその属性の追撃が発動するというものだ。
また属性によって効果が出ることもある。
例えば火なら切れ味増強、水なら切り口が滑らかに、風なら剣速上昇と言ったところだろうか。
また纏わせている属性の魔法を打ちやすくもなる。
「火球七連ッ!」
「身体強化:風花」
ナミアが身体強化を発動すると火球は一瞬にしてかき消された。
「身体強化に属性をかけられるようになってたんだね……」
「切り札は持っておかなきゃね」
「そうだね……でもこっちにも切り札の一つ二つぐらいあるさ」
身体強化:風花は風と氷の複合魔法だ。
魔法が苦手なはずのナミアが使うには難しい魔法だ。
しかし今回使えたのはナミアと風、氷属性との相性がいいからだろう。
(それにまだナミアはアレを使っていない……注意しておこう)
(グランはまだ全く力を出していない……私が勝つのは相当厳しいけど無傷で終わらせてあげるわけにも行かない!)
「「はあっ!!!」」
グランとナミアは同時に駆け出すと互いに相手に切りかかった。
「やるねぇグラン!」
「剣術はやっぱりナミアには敵いそうにないよっ!だから……風刃」
「えっ!?」
グランは一時付与を一瞬にして風纏へと切り替え風魔法を発動した。
(これぐらいで倒せるような相手じゃないけど……)
「……さすがグランだね。でも私にそれは効かないよ」
「!?む、無傷だと?」
「もしかしてこれが切り札だった?だったら私の勝ちだね!」
「……まさか防がれるとはね。でもこれで終わりじゃないよ?第二ラウンドと行こうか」
(ナミアには俺の魔法を防ぐ手段を持っている。防ぐタイミングで隙が必ずできるはず!)
(グランはもう私が魔法を無効化する技能を持っていることを察してる。だからもう変に隠したりしないで力で押し通る!)
準決勝が始まりかなりの時間が過ぎた。
二人とも疲労が目立ってきていた。
「準決勝が始まってかなりの時間が経ちました!両者一歩も譲らぬ激しい戦いが続いております!この勝負どちらが勝つのか!?」
「そろそろ体力や魔力が厳しいんじゃない?」
「そ、そっちだってもう持たないんじゃないの?」
「俺はまだまだ大丈夫だよ」
「じゃあ最後にお互いの最高の攻撃で決着を着けようよ」
「いいよ。ナミアは昔からその勝負のつけかたが好きだったからね」
「これが一番手っ取り早いんだからいいじゃん!」
「それもそうだな」
「「いざっ!」」
そういって駆け出すとナミアは剣術をグランは魔法剣を発動した。
「始源流 壱の太刀 始刃ッ!」
「魔法剣:雷撃ッ!」
「「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
二人が中央で激突し、最後に立っていたのはグランであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「やっぱり負けちゃった……」
「でもナミちゃんはがんばったほうよ。あのグランをあそこまで追い詰めたんだから」
「私グランの魔法剣初めて見たよ!それを使わせたナミちゃんはすごいと思うなぁ」
「というかナミアはどうやってグランの魔法を防いでいたの?魔力障壁を展開しているようには見えなかったのだけれど」
「それは私の固有技能の効果だよ。魔法無効化っていう発展型のスキルなんだ」
「それはまた珍しい技能ですね!」
「でしょ~?でもまだまだ発展途上だから中級程度のものまでしか防げないんだ」
「だから最初の魔法がだいたいはじかれてたわけだ」
「「「「「グラン!」」」」」
「ナミちゃんを傷物にするなんて……」
「ほんとひどいよね……。責任、取ってくれるよね……」
「……え!?そ、そんなつもりじゃ…………」
「「「ナミちゃんかわいそう」」」
「え、ええ……」
「……そろそろいいかな?」
「ぷっ!アハハ!グランが本気困ってるなんてなかなか見れないよね」
「ほんとにね。満足したわ」
「もうやめてよ……本気でどうしようかと」
「ちなみにどうするつもりだったんですか?」
「……ノーコメントで」
「「「「いやらしい~」」」」
「グラン後でお説教ね」
「なぜに!?」
鬼のような形相をしたティナとそれを見て笑うみんなの姿がそこにあった。
「っとそういえば今フレッドリックたちの決着がついたみたいだ」
「それでどっちが勝ったの?」
「アレグサンダー・レア・ギガスト選手だ」
「「「「「フレッドリックが負けた!?」」」」」
グランvsナミアの試合が終わり少しして始まったフレッドリックvsアレグサンダー。
その結果は予想外の結果であった。
「事前の予想だと勝てそうだったのにね……」
「確かアレグサンダーさんは今年の入試の第五席だったはずです」
「ちなみに私は?」
「ナミアさんは第四席です。ちなみにティナさんは第六席、フレッドリックさんが第七席、エリーさんが第八席です」
「私そんなに上位だったんだ!」
「でもグランと特訓してたのに負けるなんて第五席は伊達じゃないわね」
「アレグサンダーさんと戦う時はそれぞれ注意していこう!」
「「「「「了解!」」」」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その後ティナvsエリザベート、シャミアvsサリーネの試合が終わりベスト4が決まった。
その結果はティナとシャミアの勝利であった。
「ティナ強いわね……」
「伊達にグランに鍛えられてないからね!」
「お姉様やっぱり強かったです」
「昔から私の方が強かったもの」
「みんなー!次の対戦表が出たぞ!」
準決勝はシャミアvsアレグサンダー、グランvsティナとなった。
「ベスト4も決まったところで準決勝戦を始めましょう!」
司会が宣言すると会場は更なる熱気に包まれた。
「ではまずシャミア選手vsアレグサンダー選手の試合から始めましょう!」
「舞い散れ!桜吹雪っ!」
「草花嵐」
「きゃっ!」
「勝者アレグサンダー選手!接戦を勝ち抜き決勝へと駒を進めたのはアレグサンダー選手だ!」
「アレグサンダーさん強いね」
「草花嵐はかなり難しい魔術だったはず……」
「と言うかお姉様が使ってた桜吹雪って何ですか?」
「あれは僕が奥義と一緒にあげた魔剣だよ」
「「「「「魔剣?」」」」」
魔剣とは魔法が込められた剣のことである。
この剣を使うときに魔力を込めると魔法を纏わせて戦うことができる。
「それってグランがよく使っている魔法剣と同じ?」
「そうそう。あれってかなり扱いが難しいから長期運用には向いてないんだよね」
実際グランも勝負を決めるときにしか使っていなかった。
それを安定させて発動できるように開発したのが魔剣である。
グランも持ってはいるが使う機会が特になかったため未だに使ったことはない。
「「グラン!私も(俺も)欲しい!」」
「……また今度創ったらあげるよ」
「「やったー!」」
「私もなにか欲しいな……」
「ティナにも考えとくね」
「わ、私も……」
「エリーにもなにか創っておくよ」
「ほ、本当?ありがとう」
その後リクエストを聞いているとシャミアが戻ってきた。
「おつかれさま~」
「ありがとう。負けちゃったわ……」
「アレグサンダーさん強かったからね」
「グラン!私たちのかたきをとって!」
「じゃあまずはティナに勝たないとね」
「いくら相手がグランでも負けないよ!」
「こっちだって負けるつもりはないからね」
そんなこんなでグランvsティナの試合が近づいてくるのだった。
「それでは準決勝グラン選手vsティナ選手の試合を始めます!両者入場してください」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
会場が熱気に包まれ、準決勝が始まった。
「グランと戦うのは初めてだね!助けられてたあの頃とは違うんだから覚悟してよね!」
「もうティナにはある程度手の内はさらしてるけどそう簡単に負けるわけには行かないよ」
「「いざっ!勝負」」
「それでは試合開始っ!」
「先手必勝だね!氷縛鎖炎檻っ!」
「っく!?」
試合が始まると同時にティナは拘束系の魔法を放った。
(グランに動き回られると厄介だからね)
「これで終わりだね!魔法剣:大爆発っ!」
ティナは投げナイフに魔法剣を発動させ、グランに投擲した。
「おっと!これはさすがのグラン選手でも防げないか!?」
「私の勝ちだね!」
「…………」
爆発と同時に煙が巻き起こりグランの姿が見えなくなった。
観客は静まり勝負の行方を見守っていた。
「……グラン?」
(煙でよく見えないけど誰かが倒れてる?)
「こっちだよティナ」
「っ!?」
刹那背後からさっきを感じたティナはとっさに飛び退いた。
ティナの後ろに現れたのはグランであった。
「いやぁひやひやしたよ……まさか転移まで封じられるなんて」
「……やっぱりすごいねグランは。いったいどんな手を?」
(さっきまで倒れていた人がいない……幻覚魔法?)
「種明かしは後でするとして取りあえず今は決着を着けよう」
「っ望むところだよ!」
「風嵐」
「炎神乱打っ!」
両者の魔法が拮抗し純粋な魔力勝負となった。
「っきゃあ!」
その結果押し負けたのはティナであった。
「勝者グラン選手!決勝戦はグラン選手vsアレグサンダー選手となりました。決勝戦は明日執り行います。皆様本日はありがとうございました!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「負けちゃったね……」
「グランが強すぎるのよ!私もティナの戦法だったら行けると思ったんだけど……」
「……奥さんをいじめて楽しかった?グラン?」
「変な言い回しをしないでよナミア……いじめてなんか」
「これはティナのことを甘やかさないとダメじゃないの?」
「ついでに私たちのことも!」
「……まあまた今度ね」
「「「「!!!」」」」
「グランはどうやってティナさんの拘束魔法を突破したんだ?」
「最初に捕まったのは僕が作り出した幻覚だよ。まあ正しくは分身と言った方が正しいかな?」
「つまりあれは偽物だったのね」
「姿を消す魔法も使って後ろの方で様子を見てたよ」
「だからグランはあまり抵抗しなかったんだね!グランだったらすぐ逃げれそうなのにって!やっぱりグランはすごいね!」
ティナは負けたことはもういいのか尻尾が千切れるんじゃないかというほどふりふりして興奮した様子だった。
そんな微笑ましい様子を影から見ている人物がいるとは誰も気付かずに……
〜アレグサンダーside〜
私はアレグサンダー・レア・ギガスト。
騎士になることを志し、日々精進している身だ。
ギガスト家は代々王族に仕える騎士の名家だ。
しかしそんな私にも悩みがあった。
自分ではわからないがよく影が薄いと言われる。
今だって魔法を展開していなくてもわかる距離にいるのに全く気づかれる気配がない……。
それゆえ王女殿下に顔や名前すら覚えられていないっ!
先程試合をした時だって初対面のように……だがそれはそれでいいのかもしれない。
自らの存在に気づかれないのは隠密の時に大いに役立つ。
その時まで自らの腕を磨いておこう。
そんなことを考えながらもアレグサンダーはグランたちの会話に耳を傾けていた。
どうやら決勝にまで駒を進めただけあってグラン殿はかなりのやり手のようだな。
これは楽しめそうだが果たして私の存在に気づくことができるかな!?
〜グランside〜
「ついに決勝か……アレグサンダーさんはどんな人なんだろう?」
久々に強そうで未知の相手と戦えることにグランは気分を良くしていた。
「なんか楽しそうだね〜グラン♪」
「どんな人だろうって考えててね」
「仲良くなれそうな人だといいなぁ……でもでもとにかくがんばってね!」
「ああ!ありがとう!」
ティナはそういうと観客席の方へと戻っていった。
「じゃあそろそろ向かいますか!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それでは両選手入場してください!」
流石に決勝戦ということもあって会場のボルテージは最高潮だった。
「グラーン!負けるな〜」
「二人とも頑張れ〜」
「アレグサンダー!若干ハーレムができているグランのことをボコボコにしてくれ!」
「なんか邪念が混ざった声援が聞こえるような……」
「アレグサンダーだ。よろしく頼むグラン殿」
「グランです。よろしくお願いします。アレグサンダーさん」
「それでは試合開始っ!」
グランは試合開始の合図と共に防御魔法を発動した。
「魔力障壁プロテクトウォール」
「陽炎!」
それと同時にアレグサンダーが詠唱を終え魔法を発動した。
(さてアレグサンダーさんはどう出る?とりあえず姿を消す魔法を使ったみたいだけど……っ!?)
グランが異変を感じたのと同時にパリンっと甲高い音が会場に鳴り響いた。
「障壁が破られた!?っまずい神速!」
「っくこれを躱すか……厄介だな。だが問題ない身体強化:風嵐ブースト:ストーム」
「なっ!?」
(上級身体強化!?しかも神速に食らいついてくるだと!?)
「悪いがここで決めさせてもらう!聖剣術聖光剣ホーリーフレア」
「かは……っ!?」
「「「「「「グラン!?」」」」」」
「なんとここで今まで無傷で勝ち進んできたグラン選手が攻撃をくらったっ!これは面白くなってきましたね」
こうして試合は第二ラウンドへと移り変わっていくのであった。