入学式から一夜開け授業初日になった。
少し早めに寮から出ると廊下でフレッドリックと会った。
「おはよう!フレッドリック」
「おう!おはようグラン。今日からだな」
「どんなことをやるんだろうね?」
「俺はは魔法が苦手だからな……。あんまり魔法は受けたくないな」
「そうなんだ」
「火魔法だけは得意なんだけどな」
「もしよかったら魔法を教えようか?その代わりといっては何だけど剣術の訓練相手になってよ」
「まじかっ!本当にいいのか?」
「いいよいいよ。別に減るもんじゃないし。」
「ありがとうな!俺も魔法の練習も剣の練習も出来るし願ったりかなったりだ!」
「じゃあ早速明日からってことで」
「おう!」
その後二人で教室に向かうとティナたちがいた。
「おはよーグラン、フレッドリック!」
「おはよう三人とも」
「おはようティナさん、ナミアさん、エリザベートさん」
「二人はもうなんの授業受けるか決めた?」
「私たちは今考えてたの」
この学園では基礎的な授業の他に最低でも2つは専門的な授業を受けなければならない。
それは選択制で武術学、魔法学、魔道具学、経済学、内政学などなど合計26の講座を選んで受けることができる。
「僕は武術学、魔法学、魔道具学、冒険学、貴族学を選んだよ」
「俺は武術学、魔法学、冒険学、貴族学だ!」
グランとフレッドリックが選択したのは実技多めであった。
「実技多いね!私は魔法と魔道具と内政かな?」
「私は剣術と内政と魔法と貴族だよ!」
「私は魔法と経済と貴族よ」
ティナ、ナミア、エリザベートはそれぞれが得意そうな内容を選んでいた。
「って内政?ナミアが?」
「私にだってわかるよ〜!最悪グランに聞けばいいし」
「ま、まあ頑張ってくれ。わかんなくなったらいつでも教えるからな」
「うん!ありがと!」
そろそろ時間になるので席に着くと隣に座ったフレッドリックが
「ところでグランの旦那〜誰が本命なんですかい?」
「どんなキャラ!?誰ってティナは婚約者だし……」
「だけどよ!グランだって知ってるだろ?この国が一夫多妻制だってことぐらい」
「もちろん知ってるけど……僕はティナ一筋だよ」
そんな事を言ってると先生が来て今日の授業が始まった。
「シイラ・レア・レティガユです。これから一年間よろしくお願いします。なにか授業でわからないことなどがあったらいつでも聞きに来て下さい。今日は初回なので基礎的なことしかしませんが、明日からは本格的に授業に入っていくので予習をしておくように。それでは早速授業を始めます」
一限、二限目は座学だ。
社会学担当のシイラ先生がこの世界の仕組みや成り立ちについて詳しく教えてくれた。
とは言ってもここに受かった生徒はみんな学習済みのため本当に確認レベルであった。
「次は実技だから体操服に着替えて校庭に集まってくれ」
担任兼実技担当のステイン先生がみんなにそう告げた
「着替えいこーぜグラン!」
「オッケー。実技何すんだろーな?」
「初日だからそこまでキツくないとは思うぞ」
フレッドリックと一緒に着替えたグランは校庭へと向かった。
「じゃあ早速始めるぞ。今日は剣術の訓練だ。まず二人一組になって……」
結論から言うとステイン先生の実技はスパルタだった。
それはもうかなりのもので体力のないものはこの世の終わりのような顔をしていた。
「はぁはぁ……さ、流石にあれはやばくねーか?初日から授業時間ずっと走り込みとか。しかもほぼ休みなくそのまま四限目に魔力操作の訓練だぜ……」
「そうかな?結構いけたとは思うけど……」
グラン以外はみんなバテていた。
「グランが異常すぎるんだよ……」
「流石に運動好きな私でもきつかったよ。部活の走り込みの方がよっぽど」
「わ、私は……もう無理」
「ま、まあ次は昼休みだからまだいいんじゃない?これで一限目とかだったら本当に鬼だと思うけど」
昼休みになり食堂にやってきたグラン達はそれぞれ好きなものを頼んでいた。
「ここにあるものが全部無料で食えるとかやばいよな」
「噂によれば王宮で出てくる料理とほぼ同じ品質みたいよ。なんでも料理長が元宮廷料理長とか」
「本当?普通に食べようとしたら超高級じゃん!」
「いろいろすごいところだよな」
「もう卒業したくなくなっちゃうね!」
「でも卒業出来なかったもう一年あの地獄を見るのよ?」
「うぅぅ〜〜それは嫌かも……」
「三年間悔いなく楽しもう?」
「そうするよ」
昼休みが終わると選択した専門授業になる。
朝のうちに希望調査が集められているため今日から参加が可能となる。
「魔法学の教室はこっちだよね」
「大講義室だよ」
「ちょっと早いけどもういこう!」
今日の五限目は全員同じである魔法学だ。
グラン達は大講義室へと向かった。
魔法学の教室である大講義室にやってきたグラン達は席に着くと開始を待っていた。
「どんな事をやるのかな?」
「魔法に関する理論とか論文とかを紐解くって書いてあったわよ。しっかり呼んだ?ナミちゃん」
「読んだよ〜。でも具体的に書いてなかったじゃん」
「どうかしら?読んでなかったんじゃないの〜?」
「そんな事ないもん!」
そんな会話の後授業が始まった。
「魔法学担当のアートス・レア・レゼルボーだ。ここでは魔法の研究を主にすることになる。じゃあさっそく始めるぞ」
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「結構面白かったな!まだまだ魔法は奥が深いぜ!」
「原理がわかるともっと魔法が使えそうな気がしてくるよね!」
「面白かったわねグラン」
「…………」
「グラン?どうしたの?大丈夫?」
「っああ、大丈夫だ。って悪い聞いてなかった」
「も〜しっかりしてよね!私の旦那さんなんだから」
「「む〜!」」
「?ごめんごめん少し気になることがあってさ」
(昨日から学園にいる間中ずっと視線を感じるんだよな……。気のせいだといいけど)
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〜シャミアside 〜
それはグランたちが部屋でお茶会をしていたころ…
「どうして!私が首席じゃないの?せめてサリーネが首席なら分かるのに」
「でも次席じゃないですかお姉様。まあ私も三席には納得いきませんが」
「そうよね!二人でずっと頑張ってたのにベルセリアの長男にその座を奪われるなんて……。そうだわ!入学したら本当に首席に相応しいかどうか見極めましょう」
「でも学園の厳しい審査を通っているんですからふさわしいとは思いますよ。何せあの学園が…ですから」
「だけどやっぱり私たちでも見極めたいじゃない?」
「それもそうですね。ちょっと観察してみましょう」
それから何日か経ち入学式の日になった。
「今日は入学式ですね!お姉様」
「そうね。どれほど今日という日を待ち望んだことか。今日のあいさつできっと化けの皮が剝がれるわ」
「楽しみですね!不正をして得た地位でふさわしくない行動をとることがいかに恥ずかしいか。よく見てきましたものね」
「ええ。もし本当に首席なら必ず感動するようなスピーチをしてくれるはず!」
「すごかったですわ…。本当に私たちと同じ年齢?」
「しかも辺境の騎士爵家の出なのにあの人数に注目されていても堂々としていました…。私でさえかなり緊張してしまうのに」
二人の目論見は外れグランのすごさを思い知らされた二人は軽いめまいを覚えながらも自室へと戻った。
「で、でも今日は式典だったけど明日からは普通の授業日だからきっと気を抜くはず!」
「それもそうですね!明日が楽しみです」
二人は今日のことはまぐれだと信じ明日にかける事にした。
「シャミア・フォン・ダイナースですわ。王族ですが気軽に話しかけてくださいまし。これからよろしくお願いしますわ」
「サリーネ・フォン・ダイナースです。シャミアお姉様の妹になります。お姉さまと同様に気軽に話しかけてください。よろしくお願いします」
二人が自己紹介をするとクラス中がざわめきだした。
(みんな私たちの噂をしていますね!)
(ええ。私たちのほうが注目度が高いしそのうち忘れられるでしょう)
その日の授業はオリエンテーションで終わった。
本格的な授業は明日からだ。
二人は今日の自己紹介でグランより注目を集められた事で満足していた。
「これで彼はもう何もできないでしょう」
「私たちの完全勝利ね!明日からが楽しみね」
まだ何も始まっていないうえにそもそも一方的な嫉妬であることに気づくこともない。
そんな二人は思い知る事になる。
グランが不正をして首席になったわけでなく実力のみで首席だということを。
そしてそんな二人とかなり差があるということを……
朝二人が学園に行くと既にかなりの人が来ていた。
その中にグラン達もいた。
二人は特に気にすることもなく席へとついた。
(みんな来るの早いわね)
(楽しみなのはみんな同じみたいです)
その後先生が来てホームルームが終わると早速授業が始まった。
「シイラ・レア・レティガユです。これから一年間よろしくお願いします。なにか授業でわからないことなどがあったらいつでも聞きに来て下さい。今日は初回なので…………」
(早速化けの皮が剥がれるわね。さあ本性を表しなさい!)
「じゃあここを……グランさん答えてください」
「この国は貴族制で成り立っています。貴族制はなんらかの理由で貴族となった人たちのみで政治をします。
なので物事がとてもスムーズに進みますが民衆の意見が届きにくいという欠点があります。
平民は自分が住んでいる地域を収めている貴族に税金を払い、そこから貴族が国に税を納めると言う仕組みで成り立っています。
また地域によっては税率が異なりそれによって受けられるサービスも変わってきます。
税率が高いと教会でかかる費用が安くなり、逆に低いとそれらのサービスが高額になります」
「満点です。よく勉強していますね。ちなみに議会制という体制も他国にはありますがこれに関しては何か分かりますか?」
「はい。議会制では平民も政治に参加できるので国に民衆の意見を取り入れやすいという利点があります。
しかし欠点として意見が拮抗し議会が滞ることがありスムーズに事を進めることがとても難しい点があります。
また議会制は税金を納めるのが国という点で違っています。
貴族などを間に挟まず直接税金を納める必要があるので一律の税率になっています。」
「すごいですね。ここはこれからやるはずの範囲なのに……ありがとうございました」
(なんであいつが答えられるのよ!?わたしたちもまだやっていないところなのに!)
(どれだけ予習してるんでしょうか?そこは筆記試験ほぼ満点といったところですね)
座学が終わり実技の時間になった。
(私はあいつがガリ勉タイプと見たわ!魔法は使えたとしても剣術や体術までは無理なはず)
(これで剣術も体術も完璧だったらもはや人間業じゃないです)
「走り込み終了だ!少し休憩したら次は素振りに行くぞ」
(丸っと一時間走り込みは無理ですって……さ、流石にきつい……)
(こ、これは結構来るものがありますわ。せ、精神的にも鍛えられてるような……)
王宮の訓練よりも厳しい実技一時間を終え休憩しつつグランに目をやった。
「「なっ………………!!!!!」」
グランは休憩時間を活用し魔力循環の訓練を行なっていた。
この訓練は普通かなり集中していないととてもできるものではなく集中しないでやると魔力が暴発してしまいとても危険だ。
そのため普通は体力面か魔力面かどちらかの強化になるのだが……。
(なんであんなことが今できるの!?暴発する様子もないしあの走り込みの後でも涼しい顔をして魔力循環なんて……)
(しかも循環させた魔力で組み立てては消している術式は……絶級クラス!?)
((首席って……やばい))
この世界に存在する魔法は技能由来のもの(先天的)なものと術式組み立て型(後天的)なものに分けられる。
魔法が使えないものはいくら頑張っても使えないが、元々使えるものは術式を覚えることで魔法の種類を増やすことができる。
そんな事をしなくてもグランには創造魔法や全属性が使用できる技能があるのだが
ティナを救い出した件以来また技能が封印されてもいいようにある程度は術式発動もできるようにしておいたのだ。
そんな事を知るはずもない二人は今までの自分達の行いがバカらしく思えてきた。
(私たちは自分より才能がある人に嫉妬していただけなんだわ……でも少しの違いかと思ったのにまさかここまでとは……)
(私たちはなんて恥ずかしい事をしていたのでしょう)
そして初日が終わる頃には二人のグランへの嫉妬は憧れへと変わっていた。
魔法学の授業が終わり初日の授業が終わった。
「今日はみんなこれで終わりね」
「明日は二コマあるから頑張らなきゃね!」
「でもまだ時間あるよな」
「じゃあみんなでどこか遊び行く?」
「いいね!私は王都で買い物したいな♪」
「ちょっといいかしら?」
「ええと確か……」
遊びに行くことが決まりどこに行くか決めていたところ王女様たちが話しかけてきた。
ティナは獣人のため必ずではないが他の者たちは貴族のため王族には臣下の礼をする習慣がついていた。
「いかがなされましたか?王女様」
グランがそう聞くと
「ここは学園ですからかしこまらなくていいですよ?」
「あなたが身分は関係ないっていったんでしょう?」
「そ、そうですがさすがに……」
「じゃあ王女命令といったほうがいいかしら?」
「……わかりました。」
ティナはずっと不思議そうにしていたがグランたちが臣下の礼を崩すと
「あの~あなたたちは?」
「私はシャミア・フォン・ダイナースですわ」
「妹のサリーネ・フォン・ダイナースです」
「ダイナースっていうと王女様?」
「そういうことになります」
「私はティナ!よろしくね♪」
「よろしくお願いしますわ」
「よろしくです」
「ねえねえ!二人も一緒に遊びに行かない?」
「「「「えっ!!!」」」」
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「結局シャミア様とサリーネ様も来たね……」
「あ、ああ大丈夫なんだろうか心配だな……」
「危なかったらグランが守ってね」
「もうやってるよ……」
(まさか本当に来るとは)
ティナが二人を誘った後……
「ちょっと確認してくるわ!」
「ちょっと待っててください!」
妙に興奮しながら廊下をかけって行った二人を見送った後
「また新しい友達ができそうだよ!」
「よかったなティナ。でもお二人は忙しいはずだから来れないかもね」
「そっか~じゃあもしこれなさそうだったら明日教室で話そう!」
「というかそんなに簡単に外に出れないと思うわ」
「王女様だからね……来れたとしても護衛がついてくると思うよ」
「大変だね~」
「でもシャミア様とサリーネ様と関わるチャンスだぜ!グラン」
「浮気するの……?」
「い、いやいや浮気なんてしないよ!」
「そう?それならいいんだけど……」
グランが地味に危機に陥って空気がおかしくなってきたところにシャミアとサリーネが戻ってきた。
「許可が取れました!」
「行きましょう!」
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「王女様」
「王女様じゃどちらだかわからないじゃない」
「私たちのことは名前で呼んでください」
「それと敬語もいらないわよ。さすがに公式の場ではだめだけど」
「わかりまし……わかったよ。シャミア様サリーネ様」
「「様も!!!」」
「あ、ああ」
「ほかの皆さんのいきなりは無理だと思いますができるだけお願いします」
「そっちのほうが仲良くなれた気がするのよ」
「わかったよ。改めてよろしくねシャミア、サリーネ」
「よろしくお願いするわ」
「よろしくお願いな!」
「王都をぶらつくんですよね。楽しみです!」
「二人は王都を歩いたことないの?」
「私たちは何処へ行くにしても護衛が付くしそもそも滅多に出られないのよ」
「じゃあ私と同じだ!」
「ティナも?」
「私もグランと婚約して学園を受けることが決まるかで自分が生まれた村を出たことが無かったから……」
「そういえばグランと婚約してるんですよね」
「どんな出会いだったの?」
「それは俺も気になるな」
「じゃあ教えよう♪あれはね~」
((もしかして二人もグラン狙い!?))
「じゃあさっそく行こ~♪」
結局グラン、ティナ、ナミア、エリザベート、フレッドリック、シャミア、サリーネの七人で王都を回ることになった。
シャミアとサリーネは王族のため普段は護衛なしに外に出られないのだが今回はなぜか許しが出たらしい。
「今日はどこに行くのですか?」
「適当にぶらつこうかなと思ってたけどどっか行きたいとこある?」
「私たちは服が見たい!」
「俺はグランに剣を見繕ってもらいたいぜ!」
「私たちは買い食いなるものを体験してみたいですわ」
「じゃあまずなにか食べながら服を見てそのあと一旦別れて俺らは武器屋、ティナたちは服屋に行くって感じで」
「異議な~し」
行くところが決まり食べ歩きできるようなものを探しつつウィンドウショッピングを始めた。
「甘いものが食べたいよ~」
「クレープとかがいいんじゃない?」
「ドーナツもありだよ!」
「俺はホットサンドとかかな」
「「「いいね!」」」
「フレッドリックさんは武器屋で何を見るんですか?」
「今使ってる剣がかなり安物でな。だからこれを機に高いいいやつを買おうかと思ったんだが何がいいのかわからないんだ」
「じゃあよさげなやつを探しに行こう」
「ありがとな!」
「俺も買おうかな……」
「そういえばグランが使ってる剣って誰が作ったやつなんだ?」
「それは私も気になるかも!」
「これのこと?」
「そうそう」
「これは自分で創ったんだよ。入試前に受けた依頼で手に入った素材からね」
「「「「「「自分で!?」」」」」」
「ち、ちなみに何の素材?」
「確か……炎竜の牙と魔法銀を使っ
てたはず」
「「「「「「炎竜!?」」」」」」
「いつ倒したの?」
「ティナと婚約して少したったあとかな?」
「無事でよかったけどグランがいなくなったらみんな悲しむんだから今度からそういう依頼が来たら私に一回相談すること!」
「ティナ……。ごめんな。わかったよこれからはそうする」
「また二人の空間を作ってるよ」
「これは……」
「ちなみにそんな依頼が来るってグラン今何ランクなの?」
「そういえば私を助けてくれたときにAランクになったよね」
「そこからさらにあがって今はSSランクだよ」
「「「「「「SS!?」」」」」」
「グランといると驚いてばかりだぜ……」
「すごいですね!まさかSSランクとは」
「もう少しでSSSランクになれそうで怖いわ」
「「確かに」」
「ちなみにティナは?」
「私は今Cランクだよ」
「グランに比べると低く見えるけどそれでもCは高いわ」
「「それな」」
そうこう言いながら歩いていると広場にクレープやホットサンドの屋台が出ていた。
串焼きなどもあり結構賑わっていた。
「じゃあ買いに行こうか」
それぞれが食べたいものを買ったところでウインドウショッピングを再開した。
ある程度見回ったところで男子と女子に別れて行動することになった。
「じゃあ後でこの広場に集合で」
「時間に目処が立ったら連絡するね!」
「了解」
「じゃあ行くか」
「おう!ところでさっき連絡するって行ってたけどどうやって連絡するんだ?」
「あー……それについてはまた後で説明するよ。連絡するときに」
「わかったぜ!いい武器あるといいな」
「そうだね。まあなかったら持ち合わせの素材で創ろうか?」
「いいのか!?」
「そんなに業物は創れないけどね」
「いやいやグランの業物の基準って何だよ……」
武器屋にやってきた二人は店内を見回っていた。
「なかなかねーな」
「ほんとだね。これなら僕が作った方が……」
「じゃあお願いしようかな」
グランが剣を創ることが決定した二人は工房に向かって歩いていた。
一方その頃女性陣は……
「私たちも行きましょうか」
「どんな服見に行く?」
「下着とかも見たいな~」
「アクセサリーも見に行きたいわ」
「せっかくだし宝石店とかも行きたいわね」
グラン達がいたら間違いなくうんざりするような買い物をすることが決まりまずは下着からとなった。
「ティナさんはグランさんとどこまで?」
「ふぇっ?」
「ほら婚約してると色々あるじゃない……ね」
「ど、どこまでってまだなにも……」
((((じゃあまだ行けるわね))))
「???」
獲物を前にした獣のような眼をした4人とティナは店に着いた。
「結構沢山買っちゃったね」
「色々あって目移りしてるうちに……」
「これでも押さえた方なんだけどね」
「まだまだ買いたいものがあります!」
「そうよまだまだこれからよ!さあ次に行きましょう!」
「でもそろそろ寮に戻らないと……」
「っともうそんな時間ですか」
「グランと連絡とったし集合場所の広場に行こう!」
その後ティナたちは広場に着き、また屋台でなにか食べようと話していた。
その時
「お嬢ちゃんたちこれから遊びに行かない?」
(うひょー上玉じゃねーか)
「お金は俺らで出すからさ」
(みんなかわいいな!ボスも悪い人だぜ)
五人に絡んできたのは典型的なナンパであった。
(うわっ…典型的なナンパ野郎ね)
(とりあえず無視でいいかな)
(早くグラン来ないかな……)
ティナとナミアとエリザベートはそんな決断を下したが世間に疎い王女様は違った。
「あんたたち誰?私たち今人を待っているんだけど」
「あなたたちはお呼びじゃないのでとっとと消え失せていただけますか?」
シャミアとサリーネはこれでもかと言うぐらい不機嫌な態度で男たちを拒絶した。
そしてそれはいままで穏やか?だった男たちをキレさせてしまった。
「何だテメーらこっちが下手に出てやりゃあ偉そうに言いやがって!」
「お前らは黙って俺らに着いてくればいいんだよ!」
「何か風向きが怪しくなってきたわね」
「やっちゃう?」
「いいね!やっちゃおう!」
「お前らみたいなか弱い女子が俺らを倒せると思ってるのか?」
「生意気な口聞きやがって!やっちまえ!」
男がそう言うといつの間にかティナたちを囲んでいた男たちが襲いかかってきた。
「きゃっ!!」
まず手始めにと思われたのだろうかサリーネに手が延びティナとナミアが守ろうとしたところで不可思議な結界が五人を包み込んだ。
それはまるで愛しい人を慈しみ守るかのように優しく展開された。
「!!?こ、これは?」
「何だこれ!?全然ビクともしないぞ!」
「誰かが結界を張ったんだろうな。お前らさっさと割れ!」
「さっきからやってるんだが全然割れないぞ!」
「本当に何だろうこれ?」
「もしかしたら……」
「なにかわかったの?」
「グランの魔法だと思う」
「「えっ!?」」
「でもここにはいないじゃない」
「さっき学園で集まったときに護衛用の魔法をかけとくねって」
「なるほどね」
「グランが術者なら安心ね」
「早く二人とも来てくれるといいんですけど……」
「……転移!」
「今グランの声が聞こえたような……」
「お前転移も使えたのか……まあいい。とりあえず助けんのが先だな」
「「「「「グラン!フレッドリック!」」」」」
~グランside~
「そろそろ集合場所に行こうか」
無事剣が出来上がったところで集合の時間となったため二人は広場に向かうことにした。
「今日はありがとうな!まさかグランに剣を作ってもらえるとは思ってなかったぜ!」
「こっちこそありがとう。僕も新しく短剣を作っておこうと思ってたからちょうどよかったよ。携帯も出来上がったら渡すよ。今のところ僕とティナとナミアとエリザベートにしか繋がらないけど」
「そっちもよろしくな。十分だぜ!」
その後二人で歩いていると突然警戒信号が鳴り響いた。
「……ちょっとやばいかも」
「?どうかしたのかグラン」
「ティナたちが襲われてるかもしれない」
「なに!?なんでそんなことがわかるんだ?」
「そういうスキルを持っているんだ。身近な人に危機が迫ってるときに教えてくれるんだよ」
「なるほどな……じゃあ急いでいこう!」
「あーっとその事もなんだけど……」
「どうしたんだ?早く行くぞ!」
「ちょっとごめんね」
「グ、グラン?」
「転移!」
「お前転移も使えたのか……まあいい。とりあえず助けんのが先だな」
「フレッドリックはそっちを頼む。僕はこっちを」
「おう!」
「お前らマジで俺らとやる気か?」
「言っとくがなお前らごときじゃ無理だ」
「この前さらった女を取り返しにきたやつ」
「あーあれも弱かったな」
「ずっと俺はAランク冒険者なのに……って嘆いてたな!」
「ありゃぁ傑作だったぜ」
「あいつ今頃あっちで何してんだろうな?」
「あの女と二人仲良く過ごしてるんじゃないか?」
「ちげえねー」
この事を聞いたシャミアとサリーネは顔を青ざめさせ後悔した。
((あの時私たちがこいつらに突っかかったりしなければみんなを危険に晒すこともなかったのにっ!))
「まあそれでも向かってくるってんならよぉ。俺たちは別に構わないぜ?ただ死んでも文句は言うなよ?」
「その言葉を聞けてよかったよ。ティナ達を襲おうとしたこともそうだがこんな卑劣な行いを以前にもしたことがあったなんてな……。ついやりすぎてもこちらに不利なことはないか……」
「何をごちゃごちゃ言ってるかしらねぇがもうお前に未来がないことは確定してんだ。諦めるか腹括って無様に足掻いてみせるかしてみろよ!」
「その言葉そっくりそのまま返させてもらうぜ?」
グランのその言葉を合図に両者駆け出した!
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「フレッドリック!援護頼む!」
「お、おお」
グランは駆け出すと関係のない人とグランやフレッドリック、男たちを隔離した。
「!?何だこの壁は?」
「万が一にもお前らが逃げ出さないように閉じ込めさせてもらった。あと被害も最小限に納めたいしな」
「この結界……あの女どもと同じか。お前ら!こいつらを倒したらこの結界は解除される。むしろ逃げられないのはどっちか教えてやるぞ!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
「みんな威勢だけはいいね!じゃあこれも無事だよね……?」
そういったグランは準備していた魔法を解き放った。
「千波万波!」
「「「「「「「えっ!?」」」」」」」
「ちょっ!グラン!」
「大丈夫だよ。水同化」
徐々に結界内に水が溜まり魔法で攻撃を受けた男たちが何人か浮いていた。
「息ができ……あれ?」
「僕らには水同化がかかってるから息も出来るしステータスも上昇するよ」
「まじか!」
「グラン!後ろ!」
「大丈夫だよティナ。全部わかってるから」
その後不意打ちをしようとした男のリーダー格を撃破しグランとフレッドリックは水中からでた。
「「「「「グランっ!」」」」」
「大丈夫だった?視たところ結界はしっかりと発動してたみたいだけど」
「うん!また守ってくれてありがとう!」
「どういたしまして」
「本当にありがとうねグラン。さすがに怖かったよ……」
「ありがとう。さすがグランね」
「「あ、あの……」」
「どうかした?シャミア、サリーネ」
「「ごめんなさい!」」
「私たちがあいつらの挑発に乗らなければ……」
「私たちはなにもできないのにナンパに反応してしまって……」
「でもそれはみんなを守ろうとしてのことだろう?そのことを責めるつもりはないよ。」
「「グラン……」」
「じゃあこいつらを衛兵に任せて帰ろうか」
「あの~俺は?」
若干フレッドリックの存在感が消えかけていた。
「じゃあ帰ろうか」
グランたちは窒息で気絶した男たちを縛り上げ、衛兵たちに引き渡すと寮に戻ることにした。
「衛兵たちの取り調べを受けていたら結構時間経っちゃったね」
「門限までは確実に間に合わないからゆっくり行こう!」
「五人とももう大丈夫?」
「ええ。私は大丈夫よ。」
「私も元々そんなに気にしてないから」
「私に至っては2回目だからね……。今回もグランが助けてくれたし♪」
「みんな本当にごめんなさい……」
「みなさんを巻き込んでしまって……グランさんが助けに来てくれなかったらどうなっていたか……」
「もうすんだことだし平気だわ!だからそんなに気落ちしないで」
「私は元々気にしてなかったから」
「私はまたグランのかっこいい姿を見れたから結果オーライだよ♪」
「「本当それっ!」」
「まあ俺はほぼ何もしてないしな……」
「僕もみんなが無事だったならそれでいいんだよ。それにそんな苦労を含めて今日は楽しかったでしょう?」
「「はいっ!それはとても……」」
「だったらそれでいいんじゃないかな?最後にちょっとしたアクシデントはあったけど……でもこれを乗り越えたからこそもっともっと仲良くなれたと思うんだ。だからそんなに気にしなくていいんだよ!」
「困った時はお互い様だからね〜♪」
「……ありがと」
「じゃあ気にしないことにします。ありがとうございます!」
寮に着くと学園側にもう既に伝わってたらしく何のお咎めもなしだった。
「じゃあまた明日ね~」
「おやすみなさい」
「明日の朝もよろしく頼むわ」
「おう!じゃあまた」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~サリーネ&シャミアside~
「みんな優しくてよかったですね!お姉様」
「そうね。みんないい人たちね。私の技能も反応なかったし」
「珍しいですね。なかなかそんな人いないですから」
「しかも全員全く反応しなかったのよ!?むしろ気落ちしそうなくらい……」
「「…………………………………………」」
「それにしてもグランはすごかったわね」
「今日が初日だというのに一年分驚いたぐらいです」
「「かっこよかったなぁ……」」
「「えっ!?」」
「シャミア。あなたもしかして……」
「はい……。グランさんを見てるうちに胸がドキドキして……その……す、好き……なのかもしれません。あ!ま、まだわからないですよ!?」
「やっぱりそうなのね。」
「と言うかそういうお姉様も!」
「ふぇっ?わ、わたし?私はまあ……」
「好きなんですよね!?」
「そ、そうね……」
「じゃあ今から私たちはライバルです!」
「え、ええっ!望むところよ」
「でももうすでにティナさんが婚約してますよね……」
「……そういえばそうだったわね」
「これってかなり私たちやばいのでは?」
「でも幸いこの国は一夫多妻制だからその点は平気そうね」
「でもそれは上級貴族以上の話ですよ。中級も少しいるかぐらいですから……みなさんあまりそのような認識がないのでは?」
「それもそうね……」
「「後はお父様が何と言うか……」」
「それに多分ナミアさんもグランさんのことを好きですよね」
「エリーはちょっとわからないわね。でもきっとなにも感じてないってことはないと思うわ」
「では明日二人に共同戦線を組まないか聞きに行きませんか?」
「それはいい考えね!二人がグランをどう思ってるかも知れるし」
「じゃあまた明日二人の部屋に行きましょう!」