その一ヶ月後、私たちは度々会う機会があった。共通の話題は音楽のことくらいだったから、その話題が多かったが次第にそれ以外の他愛ないことも話すようになった。二人の時もあれば、彩と三人の時も、色々。
 いつしか、私は彼を下の名前の涼と呼ぶようになり、彼は私を鈴と呼ぶような関係にまで発展した。私の彼への想いは変わっていない。
「鈴、好きです。俺と付き合ってくれませんか。」
人生初の告白をされてしまった。放課後、「話がある」と人通りが少ない廊下に呼び出されたことから、脳裏に告白の文字が浮かんだが、そんなことはないと思った。まさか、本当に告白されるなんて自分でも驚きが隠せなかった。
「お、お願いします。」
「本当に…?」
「うん」
その瞬間、校舎の角から彩が飛び出してきた。涙目で「お、おめでとおう」と言ってくれたのは本当に嬉しかった。彩は、私を探していたところ、ちょうどこの場に居合わせてしまったらしい。
「よっしゃあ!!」
 涼は飛び上がって喜んで、三人の間は幸せと喜びで溢れていた。
「鈴と涼、名前までお似合いだね」
 彩に茶化されて、顔が赤くなったがそれでも嬉しかった。

 その翌日。登校し、教室に入るとクラス中の男女が私の方へ視線を向けてきた。そして、何が起こったかを悟ってしまった。涼は人気者だ。そんな男子に彼女ができたなんて、クラス中の大事件なのだろう。今日も涼は優しく「おはよう」と手を振ってくれた。その瞬間、クラス中から悲鳴のような声が上げられた。
「ごめん。友達に言ったら広まっちゃってさ」
「もしかして、クラスだけじゃなくて…?」
「うん、多分もう学校中ほとんど知ってると思う」
 私の学校生活じゃないみたいで、恥ずかしかったけどやはりそれ以上の嬉しさがあり、私は嬉しさをとった。
「大丈夫だよ」
「ありがとう。」
 席に着くと、三人の女子が私のところへ来た。交流がない一軍系の女子だった。
「ね、涼君と全然お似合いじゃないねー。ま、せいぜいお幸せに!」
 わざわざそれを言いに来たのか。胸がじんと温かく、湿っていく感触を覚えた。
しょうがないよね。涼は人気者なんだもん。今日の出来事を忘れてしまうほど、大切な友達と彼氏が私にはいるから。