宗教と言えば、教会・チャペルや神社仏閣など、建物・施設を思い出す人もいれば、クリスマスや仏事・法事・神事・祭りなどの行事を思い出す人もいるだろう。

 多くの宗教団体は自らの教えを広め、信者になってもらうべく活発に布教活動をしている。しかし、中には表立って教団名を言わないため、すぐには判別がつかないこともある。いや、むしろあえて姿を隠して会員を募り、その会員を必死に教団へ勧誘するサークルもある程である。

 これはひっそり姿を隠し、しかし激しく勧誘活動に取り組む宗教系サークル・イベントへの潜入体験記録である。


目次
◎神とエイズとゴミ拾い(統一協会)
◎健康と幸せを祈られてみたら…(神慈秀明会)
◎手をかざせば農薬も平気???(崇教真光)
◎素晴らしい公開講座!?(浄土真宗親鸞会)
◎基督の御許で仏(!?)を語る(幸福の科学)


◎神とエイズとゴミ拾い (統一協会)

○序章

 ある日学校内をぶらついていると、「エイズ問題や性問題、生き方について考える」という目的を持ったサークルに遭遇した。丁度薬害HIV感染訴訟支援運動等に参加していたこともあり、このサークルに非常に興味を持ち、取り敢えず説明会に参加することにした。

 説明会は外部から講師を招いての「エイズ教育プログラム」みたいなもので、内容は難しく分かりにくいものだったのだが、全体的に真面目な雰囲気のサークルだったので加入することにした。幸いにも(?)、部費は不要だった。しかしこの入部が悪夢の始まりであった…。

○「部長」の不可解極まる言動

 「部長」は自然科学系の大学院生であった。そして何度か雑談する機会があったのだが、妙に言動が不可解なことに気付く。

「この世界は絶対的創造主が創られたという『学説』が最近発見されてねぇ~…。既に論文として出版されてるんだよ、ホラ。」

 オカルトめいた表紙の新書の本を差し出されながら、そんなことを言われた。自然科学を学ぶ者としてはかなりトンデモな発言だ。ここで、筆者は彼が何らかの宗教の信者なのでは、と思うようになる。しかし「この説を『科学』呼ばわりするのはついていけんが、『思想・信教の自由』は尊重しなくては。」と余り気にしなかった。

○運動に誘ってはみたものの

 表向き学習サークルのはずだったが、実際は「奉仕活動」(ゴミ拾い等)が中心だった。う~む、これはこれで意義のある活動とは思うが、当初の目的とはちと違うなぁ…。一応「エイズ問題を考える」サークルなのだからと思い、「部長」を「HIV訴訟を支える会」地方支部に思い切って誘ってみた。何度かは顔を出してくれたのだが、数回で来てくれなくなってしまった。誘っても「一体君たちは何を目的にしてるんだ!?」と攻撃的な態度をとってくるようになった。学外スタッフも多く、特にとある若い男性スタッフ(以下「某氏」)は常にイヤホンを耳に着け何かを聞きながら活動に参加しており、ひときわ異様な雰囲気を醸し出していた。

○資料で分かったその実態

 どうもサークルの方針に疑問を抱き始めた自分は、彼らが最初の学習会で配った「資料」をもう一度読み返すことにした。そこで「光言社」という出版社の書物が参考文献に使われていることを見つける。どこかで聞いたことあるこの出版社について、「雑誌新聞総かたろぐ」(メディア・リサーチ・センター)をはじめとする出版社紹介の本などで徹底的に調べた。すると、何とこの会社は統一協会(世界基督教統一神霊協会、統一教会)の機関紙「中和新聞」の発行元ではないか!更に、最初の学習会の講師の身元を洗ってみることにした。「WFWP支部会長」という肩書きだったが、「WFWP」とは「世界平和女性連合」の略称であることを知る。そして「世界平和女性連合」は統一協会のダミー団体との事であった。ヤバい!コイツら間違い無く統一協会だ!

 統一協会は教祖文鮮明を「キリストの生まれ変わり」と主張し、経典は聖書ではなく「原理講論」という独自の書物であり、キリスト教とは全く関係無い。更に合同結婚式や悪徳商法、募金詐欺など、数々の犯罪行為に手を染めているカルト集団である。そんな連中の片棒を担がされてはたまった物ではない。

 一応「部長」の直接の後輩である部員に確認を取ってみると、彼は

「ああ、学外スタッフの某さんは統一協会の信者らしいですよ。オレは『部長』と他のサークル(運動部)で知り合いだから、付き合いで入ってるんですけど。」

と発言。あ~、決定的だ!これはすぐにでも離れねば!いや、それだけじゃなくてこのサークルを亡きものにせねば!!!取り敢えず連絡先を知っている部員に片っ端から連絡し、このサークルの関係者に一切近づかないように訴えた。他の部員はサークルが統一協会関係だということを全く知らず、一様に驚いていた。

「連中と一緒に飯も食っちまったこともあるよ。どうしよう…。」

と困惑する部員もいたが、とにかく毅然とした対応をするよう呼びかけた。そして、自分も次の集まりのときに脱会をアピールしようと決意した。

○脱会の日

 脱会宣言をしようと決めた日、その日も「奉仕活動」として駅周辺のゴミ拾いをやった。学外スタッフの某氏は、いつも通り耳にイヤホンを着け何かを聞きつつ活動していた。そして何故かその日は自分に頻りに声を掛けてきた。

「いや~、僕は韓国に非常に興味があってねぇ。」

「性退廃の問題って矢張り深刻だよねぇ。」

(統一協会は教主の許可無く性交する事を禁止する「純潔主義」を貫き、性教育に反対している。反エイズなのも「エイズ=性病=反純潔・退廃」という発想のため。時々街頭で「純潔キャンディー」なる飴玉を配り、性の抑制を訴えている。)

あああ、統一協会信者の典型的発言だ。今まで気付かなかったオイラって相当鈍かったかもしれん。

 ゴミ拾いが終わり、近くのファーストフードショップで食事しながら雑談することに。自分は脱会宣言をするタイミングを伺う。何しろ他の部員は自分の脱会勧告によって活動には参加していない。周りはほぼ全員が統一協会の息のかかった連中、何をされるか分かったもんじゃない。慎重に慎重に…。

 話題が丁度オウム真理教(チベット仏教系のカルト教団)の起こした事件に飛ぶ。これはチャンスだ!連中の化けの皮を剥がすのは今しかない!!

(以下会話再現)

統一協会員某氏(以下「某」)「オウム事件ってホントにひどいよね~。矢張り思想的に間違った狂信者集団だから。」
筆者(以下「水」)「あ、でも狂信的なカルト教団と言えば、統一協会は外せませんよ。」

某「(怪訝そうな顔をしながら)…何?その統一協会って。」

水「キリスト教をトンデモに解釈した韓国生まれのカルト教団ですよ。『純潔主義』を言いながら『血分け』という性交を介した儀式をして教組が逮捕されたり。」

「部長」(以下「部」)「…つまり『淫教』って事?」

水「ですね。他にも一般市民をマインドコントロールして『合同結婚式』や『霊感商法』で壺や印鑑などを売りつけて法外な金を取ったり、珍味や高麗人参茶、あと「メッコール」っていう怪しい飲み物を売り歩かせたりして社会問題になってる集団ですよ。元歌手(桜田淳子)が信者だったり、元スポーツ選手(山崎浩子)が脱会の記者会見やったり、苦情も多くてTVのワイドショーなんかで結構取り上げられてますから、メチャクチャ有名ですよ。本当に知らないんですか?」

 周囲の表情がみるみる変わっていく。怪訝そうな顔をする者あり、悲しげな顔をする者あり。世界平和女性連合支部会長の女性は明らかに敵愾心を剥き出しにこちらを睨みつけている。しかしここで怯んだら全てが終わる。恐怖感を必死に押し殺して、構わず自分は以前このサークルで配布された文書をテーブルに叩きつけ、畳み掛けるように話を続ける。

水「学習会で頂いたこの資料の参考文献にやたら出てくる『光言社』って出版社、統一協会系の会社じゃないですか。あなた方統一協会なんですか?もしそうなら僕は二度とこのサークルには関わる気はありませんし、そうでないというなら、こんな団体との関係は即刻絶って下さい。」

部「でも思想の自由があるから…。」

水「何言ってんすか!悪徳商法とか行動が明らかに反社会的でしょうが!それが問題になっとるのに思想云々なんぞ関係無え!」

 思わずテーブルを叩き叫んだ。全員黙り込む。決定的だ。もはやこれ以上の会話は不要、いや、むしろ危険である。何かされる前にとっとと退散する事にした。店を出る際振り向きざまに、某氏を指差してとどめを刺すように、

「某さん、あんた統一協会の会員なんでしょ。」

の捨て台詞を残して。

○その後

 その後も性懲りもなく、一度だけ学習会を開いていた。取り敢えず自分も潜入し、隣になった下級生と思しき人に、

「彼らは統一協会だから、もう近づかない方が良いよ。」

と注意を促す。しかし彼はヘラヘラ笑いながら、

「何それ~?」

と能天気な声で一言。糠に釘だった。どうやら自分を除いては「動員」された連中だったようだ。それ以降も部員募集ポスターは貼ってあったものの、幸いにも学校内では一切表だった活動は無くなった。但し、今も地下に潜って蠢いてるかもしれない。

 学生に知的好奇心は必要不可欠だと思う筆者だが、注意深く事実を見極める目という物も養わねばならない。何とか命が助かった今回に限っては、「立派な目的を掲げてる団体だからといって、立派な団体とは限らない」という事を知ったので、「良い教訓」だったと勝手に思っている。

○補記

 余談ではあるが、統一協会は右翼団体「国際勝共連合」「スパイ防止法制定促進会議」「全国大学原理研究会」「世界平和教授アカデミー」「世界平和統一家庭連合」「日韓トンネル研究会」などを組織し、機関紙「思想新聞」、機関誌「世界思想」(出版社・世界思想社とは全く無関係)、準機関紙「世界日報」「宗教新聞」「東大新報」(東京大学新聞とは全く無関係)、準機関誌「知識」(宮塚利雄山梨学院大学教授らも寄稿)等を発行している。初代名誉会長は「右翼の大物」として名高い笹川良一(日本財団元会長、元国粋大衆党代表)。又、豊富な資金力や組織力を使い、保守政党の右派系議員を「勝共推進議員」として推薦・支援している。

支援対象の議員(順不同)としては、

麻生太郎(首相、元麻生セメント社長、元日本青年会議所(JC)会頭、信子親王妃の兄、明仁天皇の従弟、カトリック信徒)
町村信孝(自民党町村派会長、元官房長官)
中川昭一(元財相)
中川秀直(元自民党幹事長、元日経新聞記者、中川俊思の養子、中川俊直の父)
安倍晋三(元首相、岸信夫の兄、平沢勝栄は元家庭教師)
佐藤静雄(元国土交通副大臣)
津島雄二(自民党津島派会長、元厚相、弁護士、太宰治(津島修治)の娘婿、津島恭一の親戚)
額賀福志郎(元財相)
丹羽雄哉(元厚労相、元読売新聞記者)
船田元(自民党総務会長代理、元経企庁長官、作新学院理事長、畑恵の夫)
村井嘉浩(宮城県知事、元宮城県議・自民党県連幹事長、元松下政経塾生、元自衛官)
村井仁(長野県知事、元国家公安委員長)
河村建夫(官房長官、田中文夫の兄)
与謝野馨(財相兼経済財政・金融担当大臣、与謝野鉄幹・晶子の孫)
細田博之(自民党幹事長、元官房長官)
古賀誠(自民党選挙対策委員長、靖国神社総代、日本遺族会会長、崇教真光と関係あり)
高村正彦(元外相、弁護士、高村正大の父)
鳩山邦夫(元総務相、鳩山太郎の父)
山崎拓(山崎派会長、元自民党副総裁)
玉澤徳一郎(元防衛庁長官、元農水相、玉澤正徳の父)
鈴木俊一(元環境相)
武部勤(元自民党幹事長)
菅原喜重郎(元自民党代議士、統一協会・世界平和超宗教超国家連合共同議長)
愛知和男(元防衛庁長官、元環境庁長官)
坂本剛二(自民党組織本部長、元経産副大臣)
額賀福志郎(元財相)
丹羽雄哉(元自民党総務会長、元厚相)
小坂憲次(衆院議運委員長、元文科相)
保岡興治(元法相、弁護士)
原田義昭(自民党筆頭副幹事長)
伊藤公介(元国土庁長官、元新自由クラブ政策委員長)
萩山教嚴(自民党人事委員長)
木村義雄(自民党財務委員長)
長勢甚遠(元法相)
古屋圭司(元経産副大臣)
伊吹文明(元財相、元自民党幹事長)
大野功統(元防衛庁長官、関谷勝嗣の義兄、関谷水の伯父)
関谷勝嗣(元建設相、大野功統の義弟、関谷水の父)
柳本卓治(衆院拉致問題特別委員長)
藤井孝男(参院懲罰委員長、崇教真光と関係あり)
中山太郎(衆院憲法調査特別委員長、元外相、中山正暉の兄、中山泰秀の伯父)
中山正暉(元建設相、元拉致議連会長、中山太郎の弟、中山泰秀の父)
左藤恵(元法相、浄土真宗大谷派僧侶、弁護士、大谷学園理事長、左藤章の舅)
牧野隆守(元労相、牧野治郎の舅)
村田敬次郎(元自治相兼国家公安委員長、後継は山本明彦、鈴木政二・杉田元司は門下生)
鈴木恒夫(元文科相、元新自由クラブ所属、後継は鈴木馨祐)
石川要三(元防衛庁長官、元青梅市長、後継は井上信治)
小泉純一郎(元首相、小泉孝太郎・進次郎の父)
森喜朗(元首相、元産経新聞社員、森祐喜の父、岡田直樹の親戚)
武藤嘉文(元外相、武藤容治の父)
亀井善之(元運輸相、元農水相、亀井善太郎の父)
中曽根康弘(元首相、中曽根弘文の父)
小渕恵三(元首相、小渕優子の父)
佐藤孝行(元総務庁長官、佐藤健治の父、収賄罪で逮捕・有罪)
伊藤宗一郎(元衆院議長、伊藤信太郎の父)
高橋一郎(元衆院逓信委員長、高橋一実の父)
尾身幸次(元財相、尾身朝子の父)
中山利生(元防衛庁長官、中山一生の父)
小林興起(元財務副大臣、元新党日本・国民新党役員、倉田麗華は門下生)
小沢潔(元国土庁長官、清水清一朗の舅)
稲垣実男(元北海道・沖縄開発庁長官、詐欺罪で逮捕・有罪)
島村宜伸(元文相、元農水相、日本会議・神道政治連盟に関わる)
久間章生(元防衛相)
粕谷茂(自民党都連最高顧問、元北海道・沖縄開発庁長官)
相澤英之(元経企庁長官、弁護士、司葉子の夫、相田翔子の舅)
谷川和穂(元法相、元防衛庁長官)
桜井新(元環境庁長官)
石橋一弥(元文相)
松永光(元蔵相、元検察官)
石渡照久(元代議士、保守党所属)
山谷えり子(元首相補佐官、元サンケイリビング新聞編集長、カトリック信徒、佛所護念会教団・神道政治連盟と関係あり)
杉山憲夫(元衆院運輸委員長、沼津学園理事長)
坂井隆憲(元総理府総括政務次官、元経済企画総括政務次官、政治資金規制法違反・詐欺罪で逮捕・有罪)
原健三郎(元衆院議長、元「月刊現代」編集長)
奥野誠亮(元法相、奈良大学理事、奥野信亮・奥野正寛の父)
竹下登(元首相、竹下亘の兄、DAIGO(内藤大湖)の祖父)
橋本龍太郎(元首相、橋本大二郎の兄、橋本宙二・橋本乾三の甥、橋本明・橋本宏の従兄弟)
池田行彦(元外相、池田勇人の養子、寺田稔の叔父)
柿澤弘治(元外相、元自由党党首、柿澤未途の父)
三塚博(元蔵相、「幸福の科学」からも支援を受ける)
越智通雄(元経企庁長官、越智隆雄の父)
御法川英文(元自民党国対副委員長、御法川信英の父、みのもんたの親戚)
中西啓介(元防衛庁長官、保守党所属)
越智伊平(元農水相)
佐藤敬夫(元保守新党国対委員長、元日本青年会議所会頭)
前田正(元郵政政務次官、元改革クラブ国対委員長)
井上喜一(元防災・有事法制担当相、元保守新党政調会長)
加藤六月(元農水相、元保守党総務会長、加藤勝信の義父、加藤武徳の弟、加藤紀文の叔父)
粟屋敏信(元衆院地方行政委員長、無所属の会所属)
古賀正浩(元通産政務次官、元新生党・新進党)
虎島和夫(元防衛庁長官、違法献金疑惑で政界引退)
松岡利勝(元農水相、右翼団体「大日本愛国党」と関係あり)
渡辺美智雄(元副総理、元読売新聞記者、税理士、渡辺喜美の父、阿部令子は秘書)

鳩山由紀夫(民主党代表、元内閣官房副長官)
鹿野道彦(民主党元副代表、元農水相)
羽田孜(民主党最高顧問、元首相)
渡部恒三(民主党最高顧問、元衆院副議長)
藤井裕久(民主党最高顧問、元蔵相)
石井一(元労相、石井一二の兄、石井健一郎の伯父、石井登志郎の義父、崇教真光と関係あり)
古賀一成(民主党両院議員総会長、檀一雄・檀ふみ・檀太郎・檀晴子の親戚)
簗瀬進(民主党参院国対委員長、弁護士)
上田清司(埼玉県知事、元新自由クラブ・新生党・新進党・民主党所属、後継は神風英男)
中野寛成(元民主党幹事長、元新党友愛代表、元民社党書記長)
神田厚(元防衛庁長官、元民社党国対委員長)
綿貫民輔(国民新党代表、元衆院議長、神主)
亀井靜香(国民新党代表代行、元建設相)
自見庄三郎(国民新党副代表、元郵政相、医師)
鈴木宗男(新党大地代表、元北海道・沖縄開発庁長官)
平沼赳夫(元経産相、日本会議国会議員懇談会長、生長の家・霊友会と関係あり)

等が挙がっている。

 著名な信者としては桜田淳子(歌手)等がおり、藤岡弘、(俳優)等、愛國的発言をするタレントや評論家等も信者と噂されている。山崎浩子(元体操選手)や飯星景子(タレント)等は脱会。山崎は、脱会時の記者会見で「マインドコントロール(洗脳)されてしまった」と語っている。


◎健康と幸せを祈られてみたら… (神慈秀明会)

 1980年代後半から1990年代後半頃迄、駅前や繁華街等で「あなたの健康と幸せを御祈りさせて下さい」と手当たり次第に通行人に声をかけている人達を見かけた事は無いだろうか?

 筆者も彼等に何度か声を掛けられた。最初は気持ち悪く感じ、声を掛けられても「急いでるので…。」と振り切るだけだった。しかし、オウム真理教事件以来カルト関係に強い興味を持つ様になり、彼等についても非常に気になる様になっていた。彼等は一体何者なのだろう?好奇心がてら、思い切って祈られてみる事にした。

 その日も20代後半から30代前半位の女性が2人1組で駅前で布教活動をしていた。時間は夕方頃。わざと声を掛けられ易そうに、彼女等の近くをゆっくり歩いてみる。案の定声を掛けられた。

「あなたの健康と幸せを御祈りさせて下さい。」

「えっと、どんな風にすれば良いんですか?」

丁寧に御祈りのやり方を教えてくれた。御祈りは「浄霊」というとの事。祈られる側は頭を少し垂れ手を下に組み、祈る側は相手の垂れた頭に右手を翳す。そして互いに目を閉じ、祈る側が「明主(めいしゅ)様有難う御座います」と3回唱え、1分程度無言でその姿勢を維持する。そして時間が来たら再び祈る側が「明主様有難う御座います」と3回唱え、御祈りは終了する。御祈りが終わると教団の説明に入る。

「私達は神慈秀明会(しんじしゅうめいかい)。観音様を信仰し、浄霊を世界に広める団体です。」

聞いた事無ぇ団体だなぁ。観音(観世音菩薩)ってことは仏教か?しかし教団名には「神」が付いてるし、神仏習合なのかしら?彼女等の話が続く。

「では直ちに修行に入ります。今から一緒に道場へ来て下さい。」

「い、今からですか!?いや、今はちと用事もありますし、急に修行なんて言われても良く分かりませんし…。」

「では連絡先を教えて下さい。後日連絡します。」

いきなりの修行の誘いでかなりビビった。そしてうっかり自宅の住所を教えてしまった。独居だから同居人に迷惑を掛けるなんて事は無いが、当時カルト絡みの事件が頻発していたにもかかわらず随分軽率な行動であった。反省…。

 自宅を教えてしまった為、彼女等は自宅を頻繁に訪れるようになった。家に上げて居座られては困るので、「家の中は散らかってるので…。」と言い訳し、玄関で応対する。最初は彼女等が勝手に祈って自分は祈られるポーズを取ってボーッとするだけだったが、次第に「あなたも明主様のために祈って下さい。明主様に感謝の言葉を述べて下さい。」と、自分も「明主様有難う御座います」と唱えさせられる様になった。

 信じてもいない、それどころか存在そのものすらよく分からない「明主様」に対して「有難う御座います」と感謝の言葉を何度も唱える様強制される事を、段々鬱陶しく思う様になってきた。自分で蒔いた種とはいえ、いい加減何とかならんか…。そうだ、取り敢えず彼女等の個人情報を掴もう。名前と連絡先を押さえれば、注意喚起は勿論、場合によっては法的措置もスムーズに行なえる。これだ!

 てな訳で、当時関わっていた薬害患者支援の請願署名用紙に住所氏名を書いてもらおうと試みる。書いてもらえば個人情報を掴めて署名者数も増えて、まさに一石二鳥。

「そ~だ。ついでと言っちゃ何ですが、健康と幸せを祈るという繋がりで医療関係の署名を御願いしたいのですが…。」

すると急に彼女等の表情は強張り、態度は豹変。

「何ですかこれは!一体何をさせる気ですか!」

「いや、議会に提出する請願署名ですよ。住所と名前を書いて下さい。宗教者なら弱者を見捨てるなんて事はなさらないでしょう?ましてや健康と幸せを祈る宗教であれば医療や福祉の関係には熱心に取り組まれるのでは…。」

「危ないです!あなた、危ない集団の一員ですか!」

「いやいや、人助けが危ない訳無いですよ。あなたも宗教者なら少しでも人を助けたい、人の役に立ちたいと思いますよねぇ?」

「こういう目に会う人間は心が穢れている証拠です。私達は世界を根本から治しているのです。こんな紙切れは全く役に立ちません。浄霊以外では何も解決しないのです。」

「いやいや、ちょっと待って下さいよ。支援の対象になってる人には何ら落ち度が無いんですよ。穢れてるとか言って患者等を責めるだけで助ける気が全く無いんですか!?それでも本当に健康と幸せを説く宗教者ですか!?」

彼女等の「病気は患者の穢れによる自己責任だから、むしろ助けるのは間違っている」と言わんばかりの発言に怒りを感じ、こちらの語気も荒くなった。それに恐れをなしたのか彼女等は一目散に逃げた。腹が立っていたので後は追わなかった。次の日から自宅訪問はピタリと止んだ。

 その後も何度か街頭で信者を見かけた。議論を試みるも、家に来られたときと同じようなやり取りが繰り返されるばかりであった。中には「何だ!」と怒鳴りつけてくる信者もいた。又、最初に会った信者2人を見る事は2度と無かった。

 神慈秀明会とは、世界救世教(略称「MOA」)や崇教真光等と並ぶ「手かざし」系宗教団体の一派である。随分後で知った事だが、「明主様」とは世界救世教教祖であり、神慈秀明会の信仰対象ともなっている岡田茂吉の事だという。観音信仰というのは嘘だったのだろうか?はたまた岡田茂吉を観音と同一視しているのだろうか?

 筆者が中学生の頃には、通っている中学校周辺にも出没し、登下校中の生徒にも布教活動を行なうので、教師が「怪しい連中だから絶対相手にするな!すぐ逃げろ!」と注意を呼びかけていたものである。出没場所は学校や駅周辺だけではなく、夕暮れ時に公営図書館周辺で帰宅途中の中高生を捕まえて布教活動をする年配の女性信者を筆者は目撃した事がある。強引な勧誘で信者や勧誘対象者が日常生活に支障をきたした事や、多額の強制献金、美術館建設を始めとする放漫財政などが問題となった事、オウム事件以降街頭での直接的な布教活動が好意的に見られなくなった事等もあってか、現在では街頭での布教活動もめっきり見られなくなった。彼等は今、何処で誰の「健康と幸せを御祈り」しているのだろうか…。

○補記

 秀明会は自民党議員の支援もしており、岩永峯一(元農水相、元秀明文化財団理事)には計6520万円もの政治献金を行なっていた。岩永はその内6000万円分を収支報告せず、政治資金規制法違反の疑いで問題となり、政界引退表明を余儀なくされた。更に、滋賀県信楽町(現甲賀市)では秀明会本部近くの町有林売却を巡り贈収賄事件が発覚、当時の助役が逮捕されている。

 峯一の三男、岩永裕貴(会の関連団体「秀明文化財団」元職員)は世襲の後継候補として出馬が決まっていたが、事件発覚により出馬辞退を余儀なくされている。又、長男の岩永聡明(糸川正晃国民新党国対委員長への脅迫現場に、政策秘書・奴賀裕行(勝共推進議員でもある大野功統の政策担当秘書)と同席)も同財団職員だったが、勤務実態が殆ど無いにもかかわらず、月給30万円を10年に渡り受け取っていた。更に、財団が経営する美術館「MIHO・MUSEUM」(MIHOは教祖小山美秀子の事)で中国の盗品の仏像を展示していた等の問題が発覚している。

 尚、岩永の出馬予定だった滋賀4区の自民党候補は、滋賀県議会与党会派(自民系)「対話の会・びわこねっと」元政策スタッフで、民主党から出馬の意向も示していたと言われる武藤貴也に決定している。

○補記2

 ある日、地元の公営施設に「こころの相談室・カウンセリングルーム」という案内チラシが置いてあった。しかし住所も担当者名も書いておらず、連絡先は携帯電話の番号のみ。「何か怪しい…。」と思いつつも、興味があったので電話をかけてみることにした。

 電話の向こうからは若い女性の声。

「もしもし?」

「あ、カウンセリングルームの方ですか?公民館に置いてあったチラシを見て電話をかけてみたんですけど…。」

「あ、少々御待ち下さい…。」

少し待たされる。

「カウンセリングは連絡先が変わりました。かけ直しますので電話番号を御願い致します。」

非通知にはしてないし、携帯電話にかけてんだから、番号は向こうにも分かりそうなものなのだが…。まあとにかく、自分の電話番号を相手に伝える。

「分かりました。暫く御待ち下さい。」

電話が切れた。そして10分ほど経って、先程かけた所とは別の番号から電話が入る。これまた携帯電話から。

「もしもし。」

「あ、あなたがさっき電話くれた人?」

先程とは打って変わって、しゃがれた年配の女性の声。

「カウンセリング希望なのよね。言っとくけど、心の問題はカウンセリングなんかでは解決出来んからね!」

何!?カウンセリングじゃないとすると、一体何をする気なんだ!?!?

「私達は神慈秀明会と言ってね、これで全て解決するから!どんなカウンセリングもどんな宗教も全部ダメ!でもね、秀明会に入ったらこの世の全てを私は知ってしまったの!じゃ、今からすぐこっちに来て!」

ゲェ~ッ!!!こんなところで秀明会に再会するとは…。しかし相変わらず強引だな…。

すかさず電話を切り、チラシの電話番号と、かかってきた別の番号の、2つの電話番号を直ちに着信拒否に設定した。その日は1日中その2つの番号から電話がかかり、着信履歴は2つの番号だけで全て埋まった。

 連絡先を携帯電話の番号しか載せてなかったのも、宗教の勧誘を直接訴える内容なら公営施設に置こうにも断られる恐れが高かったと判断してのことだろう。連絡先や所在のはっきりしないチラシには矢張りウラがある。


◎手をかざせば農薬も平気??? (崇教真光)

 近所の学校の学園祭に、突如見慣れぬサークルが現れた。その名も「L.H.陽光研究会」。「自然と農業を考える」というテーマで展示をするらしい。「L.H.」が一体何を意味するのか妙に気になり、覗いてみる事にした。

 会場の教室に入ると、机の上に飲み物や御菓子が置かれ、学生たちが歓談している。部屋の両脇には説明文付きの畑を耕している人のイラスト。そして2組程何やら儀式めいた事をしている人達がいる。互いに目を閉じ、1人は合掌しながら頭を垂れ、もう1人は垂れた頭に手をかざし…、何かしら???

 主催者の男性が話を始める。20代後半位かしら?

「2つのコップにコーラが注がれてますよね。飲み比べてみて下さい。違いが分かりますか?」

両方飲んでみる。特に違いは感じられない。他の見学者が

「一方はもう一方に比べて炭酸が抜けてる様な気がする。」

と回答すると、

「そうです。炭酸の抜けてる方は、先程私達が手をかざした方なのです。」

と主催者。手をかざすだけで炭酸が抜ける~?んな事あるんか??抜けてるとしても、単に注いで暫く置いたからではないんか?

「今もやってみますね。こちらの方に手をかざして…、(暫くしてから)さあ、飲んでみて下さい。」

飲んでみる。矢張り違いが分からない。しかし別の見学者が

「あ、こっち(手をかざした方)は何となく気(炭酸)が抜けた様な…。」

と答えると、

「そうでしょう。」

と自身満々に主催者。う~む、どうも解せんなぁ…。

 主催者が話を続ける。

「この世界には様々な有害物質が溢れています。しかし人間にはそれを浄化する力があるのです。手をかざして祈れば、人や物の中にある有害物質を綺麗に浄化出来ます。農薬が使われた土でも、手かざしによって浄化すれば無農薬と同じ野菜を作る事が出来るのです。」

 手をかざすだけで有害物質を取り除く~!?余りに突飛な話に耳を疑った。手をかざすだけで有害物質の除去が可能なら、化学、物理学、工学、農学、医学、薬学、保健学など、大半の自然科学は無駄もしくは嘘という事になってしまう。それにちょっと待てよ?この論理だと「有害物質を控えたり避けたりする様心掛ける」という発想には至らず、「農薬等の有害物質を使いまくっても『手かざし』で全部消せるから万事解決」という事になりはせんか?つーか、さっき炭酸を「手かざし」で抜いたって言うが、炭酸飲料程度の二酸化炭素ってそれほど有害なもんなんかしら…。

「皆さんの健康も御祈りして差し上げます。こちらへどうぞ。」

と、御祈りの時間に入る。成る程、さっき端で儀式みたいな事をしてたのはこの「手かざし」をやってたのか。

 非常に胡散臭いと思いつつも、入ったからには全てを体験してみねばと思い、「手かざし」を受ける事にする。取り敢えず肩凝りが酷かったので、肩に手をかざしてもらう事にする。自分は主催者の人にしてもらう事になった。

 自分は主催者の人に背中を向けて座る。そして彼は肩の辺りに手をかざし始めた。

「あぁ、随分パワーを感じますね。そちらはどうですか?」

「いや、特に何も…。」

「そうですか?こちらはかなりパワーを感じるんですけどねぇ。」

いや、感じられてもこっちにゃ全然変化無しなんですけど…。手かざしを受けながら会話が続く。

「私達は崇教真光(すうきょう・まひかり)というんですよ。こうやって自然についてや人の健康や幸せを御祈りする活動を実践しています。」

 これが崇教真光か~。団体名は聞いた事があるが、実際の信者と話をするのは初めてである。そして真光が「手かざし」系宗教団体の1つである事もその日初めて知った。

「パワーを感じませんか?では少しポーズを変えてみましょう。合掌して目を閉じ、頭を垂れてみて下さい。」

 これって最初入った時にいた人達がやっていたのと同じポーズじゃねぇか…。モノホンの宗教団体の信者に、信じてもいない宗教の儀式ポーズを指導されるのは非常に抵抗感があった。しかしもう少しの辛抱。ここは我慢してやってみるしかない。言われるままにポーズを取る。

「どうでしょう。今度はパワーを感じるはずですが。」

「いや、これでも何も感じないのですが…。」

「おかしいなぁ、こちらは非常に強いパワーを感じているのですが…。本当に何も感じないのですか?」

「いやぁ、本当に何も感じないんですけどねぇ…。」

「そうですか…。まあ初めてなので、分からない事もあるかもしれません。」

何故か勝手に「初めてだからパワーに気付かない」という結論にされてしまった。
「手かざしのパワーは継続する事によってドンドン強まります。続けて受けて下さい。」

効果も無いし信仰心も沸かんし、余り継続したくねぇなぁ…。

 崇教真光は、世界救世教(MOA)から分かれた世界真光文明教団のその又分派の団体であり、神慈秀明会等と並ぶ「手かざし」系団体の1つである。崇教真光も他の「手かざし」系団体と同じく、相手に手を翳す事により病気等が治癒されると主張している。情報発信は活発であり、特に文書による布教活動が盛んで、機関紙「陽光ライフ」は時々無料で各家庭やアパート等にポスティングされるので、読んだ事がある人もいるかもしれない。「手かざし」系団体の中ではメジャーな部類と言えよう。「L.H.」は、陽光だから「LIGHT&HEAL」(光と癒し)の略か?などと思っていたが、実は「LUCKY&HEALTH」(幸運と健康)の略だと知ったのは随分後の話である。

 政治的には保守・右派的であり、信者の石原伸晃(自民党幹事長代理)や鳩山由紀夫(民主党代表)、八代英太(元郵政相、元タレント、福祉党から自民党へ移籍)ら、自民党・民主党候補の支持・支援を行なっている。民社党(現民主党)や横山ノック(元芸人、元大阪府知事、強制猥褻罪で逮捕・有罪・引退)、森田健作(元タレント、現千葉県知事、幸福の科学系)等と参議院で統一会派を組んでいたスポーツ平和党の元党首、アントニオ猪木(プロレスラー)らも信者である。

 食の安全や環境保全等が重視される現在、崇教真光は今日も何処かで食物や田畑に手をかざして有害物質除去に励んだり、支援候補に手をかざして当選祈願に励んでいるのかもしれない。


◎素晴らしい公開講座!? (浄土真宗親鸞会)

(注:本項で取り上げる親鸞会は、一般に浄土真宗として知られる浄土真宗本願寺派や真宗大谷派などとは一切関係無い。)

 ある年の6月頃、近所の学校の中で「公開講座」の参加者募集を積極的に行なっている若者がいた。学校内で学生がやるイヴェントとしては少々時期外れという気もしたものの、自主的な講座や勉強会等に参加するのが結構好きな自分は「何の公開講座だろ?」と聞いてみる事にした。

「あの、何の公開講座ですか?興味ある分野の物なら参加してみたいんですが…。」

「そうですか!では今からこちらに来て下さい!」

小柄で小太り、そして四角い黒淵の分厚い眼鏡を掛けた20歳前後の男性に物凄く近い距離に顔と体を近づけられながら(引いても間を詰めてくる)、半ば強引に会場となる小さな空き教室に案内される。参加者は勧誘を行なっていた男性と自分の2人だけ、まさにマンツーマン。どう見ても「公開」されてる様には見えないんですけど…。おまけに何の講座かっていう質問にも答えてもらってないし。いや、主催団体すら聞いてねぇぞ…。ま、いいや。取り敢えず相手の話を聞くだけ聞いてみよう。

 バインダーに入った、イラスト入りの説明パネルをパラパラ捲りながら話してくれた。内容は要約するとこんな感じである。

「人はこの世で生きているが、この世の幸せを追求する事等に一体何の意味があろうか?どんなに御金を稼いでも、どんなに立派な行ないをしても、所詮死んでしまえば結局全ては無に帰し、全くの無駄、無意味である。本当の幸せとは、御金等とは別の物なのではないだろうか?御金や名声といったこの世の幸せ等という目先の利益への欲望を一切捨て去り、本当の幸せを追求する為に真実を学ぶべきだ。」

 現世で生きる意義を徹底的に否定した、何とも絶望感に満ち満ちた内容である。余りにあんまりな内容だったので、

「あの、自分に限らず人はいつか死にますが、人が築き上げた財産も、行ないの結果も後世の人々に引き継がれますよね。今生きてる自分達も先人達の築き上げたもののおかげで生かされてるんだと思いますし、社会に生きている限りどんな人の人生も無駄なんて事はあり得ないと思うんですが…。」

と感想を述べたが、それを遮って、

「どうでしょう?もっと学んでみませんか?」

と更に誘いが続く。学校近くで集まりを開いているというので、「こうなりゃ毒を喰らわば皿まで」と思い、ついて行く事にした。校内から歩いて数分、1階が1間のダイニングキッチン、2階にも部屋がある広めのアパートに到着。入口に表札は無く、昼間にも拘らず窓は分厚い濃紺のカーテンが閉めてある。中に入ると、会員と思しき若者や誘われたと思しき学生達が数名歓談していた。壁にはホワイトボードのカレンダーが掛けてあり、「講座」「合宿」等とスケジュールがびっしり書かれている。本棚に目をやると、親鸞聖人の生涯を描いたアニメのヴィデオテープ(出演:中尾彬、日色ともゑ他)が置いてある。成る程、浄土真宗系、少なくとも仏教系の新興宗教か…。

 指導者と思しき男性に声を掛けられる。年の頃は20代半ば位かしら?

「僕達はねぇ、素晴らしい事について学習してるんだよ~。君も合宿に参加しようじゃないか。空いてるスケジュールを教えてね。」

「あの、素晴らしいって具体的にはどんな感じなんでしょ?」

「素晴らしい事だよ~。いつ合宿に参加するの?」

「いや、どう素晴らしいのか…。」

「素晴らしい事だよ~。いつなら参加出来る?」

 全然答えになってねぇっつーの。幾ら具体的内容を聞こうとしても、とにかく「素晴らしい事」の一点張り。そして強引に空き時間を聞き出して合宿に組み入れようとするばかり。

 こりゃもう耐えらんねぇやと思い、「他の予定が確定してから伺います。」と言い残し、出された茶を飲み干して逃げる様にその場を立ち去った。彼等に関わると時間の浪費でそれこそ「全く無意味で無駄な人生」を送らされると感じ、2度と関わるまいと思った。

 校舎に戻ると、別の信者が定例校内演説会を終えた極左系団体の活動家達と論争していた。ガッチガチのマルキスト達に偏狭な仏教思想めいたものを説いたって時間の無駄だってば…。案の定、極左活動家達は呆れる様な、そして若干哀れむ様な表情で信者を見ていた。

 彼等の正体は浄土真宗親鸞会。浄土真宗本願寺派(西本願寺)から分裂し、富山県射水市に本部を置く。西本願寺や東本願寺(真宗大谷派)などとは激しい対立関係にある。系列出版社に「1万年堂出版」を持ち、教祖の高森顕徹による、「歎異抄」等の浄土真宗に関する解説書や、親鸞会系列の病院で働く信者の明橋大二(医師、スクールカウンセラー、真生会富山病院心療内科部長、NPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」理事長)による子育て支援やスクールカウンセリングに関する本を多数出版している。

 上記の溜り場のアパートに置いてあったアニメヴィデオは、「世界の光 親鸞聖人」というタイトルで、親鸞会の系列会社である「チューリップ企画」が制作・販売している。出演は屋良有作、松本保典、山口勝平、高橋幸治、麦人、柴田秀勝、石丸博也、緑川光、有本欽隆、石田彰、飯塚昭三、中尾彬、中尾隆聖、横尾まり、島本須美、日色ともゑ、藤田淑子、岩男潤子、金月真美など、「幸福の科学」制作アニメにも負けない極めて豪華なキャスティングとなっている。

 学生サークルとして活動している所では、「歎異抄研究会」等の名前を使っているとの事。信者の学生が布教活動に専念させられ殆ど学校に出席出来なくなったり、家族と連絡が取れなくなるなどの問題が相次ぎ、それらの問題を告発するサイトも開設されている。今考えると、「御金を稼ぐのは無駄」と強調していたのも、「金など全く無駄なものなのだから持ってはならない。だから全財産を教団に寄付せよ」と命令する為の方便だったのかもしれない。他にもオウム真理教や幸福会ヤマギシ会(ヤマギシズム、世界急進Z革命集団山岸会)など、全財産寄付を強要して問題となった集団が幾つかあったが、それと同じ様な気が…。

 彼等は今も何処かであの閉鎖的な「公開」講座を開いているのだろうか…。

◎基督の御許で仏(!?)を語る (幸福の科学)

 近所のミッション系学校の学園祭を廻っていると、1つ気になるサークル展示を発見した。「人生を考える」というテーマでの展示。しかし学校公認の基督教系サークルとは違う模様。覗いてみる事にした。

 会場の教室に入ると、明るい感じの若い学生風の女性が出迎えてくれた。

「今日はー。入場料500円です。」

 何!?サークル展示なのに入場だけで金取んのか!?!?しかしここで引き下がってしまっては、彼女等の実態を掴むチャンスを逸してしまう。ここは我慢して、泣く泣くなけなしの500円を払う。

 先ずアンケートを手渡され、回答する様指示される。生きる価値や生き方等、如何にも哲学的・宗教的な質問が20問程並ぶ。適当に回答し、係りの人に手渡す。後で設問に関して解説があるとの事で、出された茶を啜ったり菓子を摘んだりしつつ解説の人が来るのを待つ。

 解説役の人がこちらに来る。受付で案内をしてくれた女性だ。最後の設問「自分に危害を加えた事のある人が改心した時、自分はその人を許す事が出来るか?」という質問に「出来る」と答えた事に随分興味を示され、

「ホントに出来ますかー?」

としつこく聞かれた。適当に答える。

「いや、確かに腹は立ちますけど、相手を許すという姿勢でないと、いざ自分が失敗してしまった時に自分も相手から非難だけされて許されない様な気がして…。許し許されるというのが信じられないと、立ち直りたいと考えていても実際に立ち直るのが難しくなると思います。ま、願望を多分に含んでますが。」

「そうなんですかー。実はですね、こんな話があるんですよ。」

と、彼女は語り始めた。要約するとこんな内容である。

「盗みや強盗、傷害等、悪の限りを尽くした男がいた。ある日、いつもと同じく強盗を働こうとしたが、ヘマをして瀕死の重傷を負い行き倒れてしまった。彼の普段の行ないを知ってる人々は『これまでの行ないが悪いから罰が当たったのだ』と、男が助けを求めても無視したり罵ったりして通り過ぎていった。『俺はこのまま死ぬしか無いのか…。』と絶望していたその時、1人の人に助けられた。『自分の様な人間でも助けてくれる人がいた』と男は感激し、これ迄の自分の行ないを反省した。そして改心し、修行を積み僧侶になった。」

 う~む、基督教にも通ずる「無償の愛」や「赦しと回心」のような話だな。「良きサマリア人の話」もこんな感じの話だったかしら?しかし「僧侶」という事は矢張り基督教系ではなさそうだ。そして、

「私達は幸福の科学と言いましてね、…」

と切り出され、話は教団の説明に移っていった。な~んと、幸福の科学だったのね。名の知れた教団だが、実際の信徒を見るのは初めてだった。勧誘の話は適当に聞き流した。

 帰る際、教祖大川隆法の著書を1冊と、トレーディングカード等と同サイズのラミネート加工されたメッセージカードを貰った。カードには大川の著書から引用された言葉が書かれていた。本は後日ざっくり流し読みした後、即行で新古書店に売り飛ばした。ほぼ新品だったが、100円で買い取られた。その棚を見てみると、同じ本が何冊も並んでいた。古本屋も扱いに困るやろな…。

 幸福の科学は東大法学部を卒業した大川隆法(中川隆)が始めた宗教。教義は仏教を中心としながらも、有りと有らゆる宗教の教義を混ぜ合わせた混合宗教である。大川は「万物の創造主、エル・カンターレ」「釈迦如来の生まれ変わり」「イエス・キリストの恩師」「国師」(天皇の恩師)などを自称し、妻で同じく東大卒の大川きょう子(中川恭子)は「愛と美の女神・アプロディーテー(ウェヌス)の生まれ変わり」「文殊菩薩の生まれ変わり」「クリミアの天使、フローレンス・ナイチンゲールの生まれ変わり」などと主張している(後に離婚)。文書による布教が盛んで、系列の出版社「幸福の科学出版」より多数の書籍を出し、新聞や「正論」(産経新聞社)等保守・右派系の雑誌に大きく広告を載せている。又、無料の広報誌がポスティングされる事も多い。近年はアニメ映画制作・上映にも進出している。アニメの主演は子安武人が務めるのが定番となっており、他の出演陣も極めて豪華なキャスティングとなっている。

 政治的には保守派・右派であり、政治問題を扱う機関誌「The Liberty」で度々自民党支持・野党批判の記事を発表したり、単行本で「清和会」(自民党の派閥。森・小泉・町村・安倍派)代表だった三塚弘を持ち上げる「三塚弘総理大臣待望論」を発刊したり、丸川珠代(参院議員、大塚拓の妻、元TV朝日アナウンサー)や森田健作(鈴木栄治、千葉県知事、元タレント)等を公然と支援し、当選に貢献している。大川の著書の中には「日本は妾国家中国朝鮮を再び強姦する」等、愛國的・反中嫌韓的言動も有る。かつては創価学会批判も熱心に行なっていたが、自公連立政権成立後は自民党擁護の為か鎮静化している。

 さとうふみや(佐藤文子、漫画家)、河口純之助(河口宏之、ベーシスト、音楽プロデューサー)、大門一也(歌手、作曲家、「Project DMM」元メンバー)、小川友子(俳優)、景山民夫(作家)等が著名な信者である。さとうは布教のための漫画も描いている。所ジョージ(タレント)は景山から大川隆法の著書を大量に貰い、扱いに困ったという。又、小川と景山を中心とした講談社の写真週刊誌「FRIDAY」への抗議活動・不買運動、ヘアヌード反対など猥褻・ポルノ表現規制強化・推進運動などは有名。

 2009年には政教一致を公然と打ち立てる「幸福実現党」を結党。饗庭直道(初代)、大川きょう子(2代)、大川隆法(3代)を党首(隆法は「総裁」)とし、さとう(党文化部長)や河口、中岡陽子(竹内まりやの妹)、ドクター中松(党特別代表)らが衆院選候補者として上がっていた。全選挙区・全比例区ブロックに立てられるという候補者は殆どが幸福の科学職員だが、現職の地方議員や元国会議員秘書などもおり、東京都青梅市では既に幸福実現党の会派が出来ていた(後に衆院選出馬のため辞任)。主な政策は憲法9条撤廃による戦争準備強化・先制攻撃の合法化、憲法20条改定による信教の自由と政教分離の撤廃、人権条項を「法律の範囲内」に制限する、海外からの移民を積極的に受け入れて人口を3億人にする、大統領制導入により立法・行政権力を一極集中化させる、自由放任主義経済により格差社会を推進する等。「衆院で単独過半数を取り、政権を握る」と豪語し、各地で街宣活動を展開。小池百合子ら、自民党や維新政党・新風などの関係者の一部、保守派・右派の論客などの支持を取り付けていたが、全員落選し供託金没収の憂き目に会った。

 きょう子は宗教法人幸福の科学の役員を全て解任されており、一時は夫婦間の不仲説も相次いだ。当初はきょう子が実現党の党首に就任したことにより、表向き政教一致批判をかわすためとの見方も出ていた。しかし、後にきょう子と隆法は離婚。現在きょう子はカトリック教会に接近しつつヴォランティア活動に従事しており、教団はきょう子への批判を強めている。

 それにしても、身元を隠しているとは言え基督教系の学校で他宗教が大々的に布教活動を行なうとは…。凄まじい度胸である。


 上記以外でも、例えば創価学会や摂理(統一協会の分派)、ヨハン早稲田教会(韓国由来の聖霊派キリスト教会、極左団体「革命的労働者協会・社会主義青年同盟解放派」と対立)、「国策研究会」「雄弁会」「部落解放研究会」など極右・極左等の政治系、自己啓発セミナー関係などのサークルが、正式な団体名とは異なるサークル名で活動している例が散見される。また、ミッションスクールなど宗教系の学校では、YMCA(キリスト教青年会)や聖書研究会(YMCA・YWCA(キリスト教女子青年会)系やKGK(キリスト者学生会)系、CCC(キャンパス・クルセード)系など様々)、聖歌隊、ゴスペルサークル、仏教会、神道会、国学研究会などの宗教・思想系サークルが公認サークルとして活動していることが多い。また日蓮宗の分派で創価学会と対立している顕正会なども、身分を隠さず激しい勧誘活動を行なうことで知られる。一方、街頭での公然とした勧誘活動は、天理教、エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)、モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会、分派に「復元イエス・キリスト教会」)等が行なっているが、オウム真理教(現「Aleph」)、法の華三法行(ゼロの力学、よろこび家族の和、現「天華の救済」)等による事件後、街頭での活動を行なう団体は少なくなってきている。

 正体の分からない宗教系サークルやイベントへのコンタクトは、得体が知れない相手と話すということもあって様々な困難を伴う一面もあるが、慣れてくれば「○○は××系」と見破ることがパズルのように面白くなる…かも?