余所者だった俺に、初めて話しかけてくれた風変わりな爺さんの最期は、賑やかな宴会の音頭で締めくくられた。部落中の人間が集まったのではないかと思うほど、辺りには人が溢れ、エイサーやカチャーシー、爺さんが好きだった三線の音が何夜も続いた。

 爺さんの葬式が終わった後、――確か、四十九日の辺りだったと思う――季節が変わる前の、風の嵐が吹き荒れた夕刻、爺さんの孫だとかいう中年の男が俺の家を訪ねて来た。

 爺さんの孫は、どれもすっかり大きくなっていた。しかし、七番目の孫らしい彼と俺には、生憎全くといっていいほど面識がなかった。

 どうやら七番目の孫は、爺さんから渡してくれと、直に頼まれた事があったらしい。

 正直、呼び鈴が鳴った時から、俺は嫌な予感がしていた。既視感とかいうやつだ。空には風の嵐に運ばれた雨雲が立ち込めていたし、黒いスーツを着たその男が持つバスケットからは、小動物の鳴き声が、ひっきりなしに漏れていたのだ。

 激しい雨の到来を予感させる荒風の中、その中年男が持って来たバスケットには、小さな仔猫が入っていた。そこには、仔猫の世話に必要な道具一式も丁寧に収まっていた。

 乳離れしたばかりの仔猫は、体毛が黒かった。

 仔猫が「ミーミー」鳴くたび、言葉をなくして立ち尽くす俺の足元を、ポタロウが馬鹿みたいに走り回った。

 口に咥えていた煙草を落とす俺の気も知らず、その薄らハゲの小男野郎――爺さんの七番目の孫――は、勝手に爺さんとの麗しい思い出を、ぽつりぽつりと語り出したかと思うと、自分の爺さんと全く同じように勝手に満足し、その仔猫を俺に押し付けて去っていったのだ。