「早くどうにかしないとダメだよね」
 遠藤くんがそう言うと、北沢は照れたように「ダメだよね」ってそう言った。

「女の子から告白させちゃいけないって、こんな僕でも思う」

「そうだそうだ」
 北沢は小さく同意しながら頬を赤くしていた。

「後から言うから」
 僕が口ごもると遠藤くんは「絶対だよ」って言って、急に姿を消してしまった。

「遠藤くん?」
「遠藤くんどこ?」
 僕と北沢は何度も名前を呼び、あちこち教室中を見るけれど、遠藤くんは現れずただ白いカーテンがまた揺れ始めただけだった。

僕たちは自分の席に座り直し、隣の遠藤くんの机をじっと見つめていた。

今度こそ
遠藤くんとは本当のさよならだ。

「内田くんのアルトサックス聴いてみたいな」
 北沢がポツリとそう言ったので、僕は「来年、楽器が空いたら挑戦してみようかな」と答える。

急に教室の温度が上がった気がする。

「僕と付き合って下さい」

 僕がそう言うと
 北沢は「はい」と返事をする。



 僕たちの夏が始まる。