「俺は美希に説明したよな、二人で食事に行ったんじゃないと」

「わかっています、でもなんか嫌だったんです」

涙が溢れて止まらない、彼はそんな私を抱きしめてくれた。

「東條、俺は今日は社には戻らない、明日から定時で帰る、休みも取る、了解してくれ」

「かしこまりました」

「それから、東條、俺の言いつけ守らなかっただろ、美希に手を出すなと言ったはずだ、覚悟はいいか」

「はい、辞表書きます」

「辞める必要はない、俺が困る、仕事でミスしたわけでは無いからな」

「では何を覚悟すればよろしいのでしょうか」

「一発殴らせろ」

え?っちょっと待って、私が悪いのに東條さんが殴られるなんて……
そう心の中で思ったが、二人の間に入れる雰囲気ではなかった。

「歯を食いしばれ、いくぞ」

私は咄嗟に自分の顔を手で隠した。
ドンと鈍い音がして、「痛?え」と彼の声が響いた。
彼は壁を殴ったのだ。

「社長、大丈夫ですか」

「大丈夫じゃねえよ、まっ俺が頼んだのが悪いからな」