俺の愛を受け入れろ〜俺様御曹司の溺愛

偶然にも美希もこの商店街がお気に入りだったなんて、ちょっとビックリした。

俺も普段は商店街は利用しないが、美希に連れて来られて、なんか温かみを感じた。

店通しで歪み合う事などなく、かえって協力し合って、助け合って全ての店を同じように盛り上げていこうとしていると感じた。

確かにこの場所のビル建築は弊社に取って、利益を生むことは揺るぎない事実だ。

しかし、このままビルの建築と商店街とこの場所でやっていくには無理がある。

商店街の立退をしないでビル建築も進めるためには、ビル建築の場所を変えるか、ビルの規模を縮小するか、俺は悩んでいた。

ビルは一階に店舗を入れ、地下に駐車場を作り、二階から上は住居スペースと考えている。

店舗を入れることで、商店街は大ダメージを受けるだろう。

ビルの全ての住人が美希のように商店街を利用するとは限らない。

下手をすれば、商店街を利用していた客もビルの店舗に流れる可能性も歪めない。

やはり、ビル建築の場所を別の場所に移すか。

そしてここには住居のみのマンション建築に変更するか。

俺は大きく変更する事を考えていた。

俺はある日一人で商店街を訪れていた。

「鏑木建設の社長さんじゃないか、今日は美希ちゃんは一緒じゃないのかい」

商店街の八百屋のご主人が声をかけてくれた。

「今日は仕事で寄らせていただきました、親父はこの商店街が好きだったようですが、
親父から何か聞いていませんか」

八百屋のご主人は腕組みをして考えていた。

「そう言えば、親父さんの奥さん、つまり社長さんのお袋さんもよく顔を出してくれていたな」

「お袋が?」

「ああ、親父さんとお袋さんは年が離れていて、幸子さんと言ったかな、毎日のように献立に悩んでいた、親父さんに何を作ってあげたら喜ぶかと相談されてな、アドバイスをあげたんだよ、そうしたら、幸子さんは満面の笑みで、「ありがとうございました、主人がすごく美味しいって言ってくれたんです」と報告に来てくれた」

「そうでしたか」

「幸子さんのお気に入りの商店街を残そうと親父さんは一生懸命奮闘してくれた」

俺は八百屋のご主人の話に耳を傾けていた。

「幸子さんは可愛らしい人だった、美希ちゃんは似ているところがあるな」

「そう言われてみると確かに」

「親父さんは美希ちゃんを可愛がってくれるだろう」

「はい、必要以上に」

八百屋のご主人は声高らかに笑った。

「そうか、きっと幸子さんと重ね合わせてるのかもしれないね」

親父はお袋のためにこの商店街を残そうとしていたのか。

「美希ちゃんも献立を聞きにきたことがあってね、幸子さんに教えた献立をそのまま教えた事がある」

「だから、お袋の味に近くてびっくりした事があります」

今度は俺が美希のためにこの商店街を守ろうとしている。

「お忙しいところありがとうございました」

俺は商店街を後にした。



私のスマホが鳴った、彼のお父様からの電話だった。

「美希ちゃんかい、最近ご無沙汰だけど何かあったのかい」

「すみません、実は以前お付き合いをしていた男性から、やり直さないかと言い寄られ、お断りすると、待ち伏せされたので、蓮さんが心配して一人では出歩くなと言われちゃいました」

「そんなことがあったのかい、蓮に美希ちゃんを連れて来てもらうように連絡しておくよ」

「はい、蓮さんと一緒に伺います」

彼が帰宅後、お父様からの電話の件を私に言ってきた。

「美希、親父の病院へ毎日行ってくれていたんだな」

「はい、お父様喜んでくれて、私も楽しかったですから」

「今度美希を連れてくるようにって言われた」

「はい、一緒に行きましょう」

そして休みの日、彼のお父様の病院へ二人で向かった。

「美希ちゃん、よく来てくれたね」

彼のお父様はそう言って、私にハグをした。
その瞬間、私は手を引っ張られ、お父様から引き離された。

「親父でも美希とは血の繋がりは無いんだから、美希に触れるな」

「わかったよ、すまなかった」

私は何も言えず、彼の言う通りにお父様から引き離された状態のままになった。

「早く孫の顔を見せてくれ」

「こればっかりはご期待に添えるか分からねえ」

「何言ってる、相手が美希ちゃんなら毎日抱きたいって思うだろ?」

私はその場にいることが恥ずかしくなり、「売店に行ってきます」と席を外した。

「お前ら、夫婦仲うまくいってないのか」

「いろいろあるんだよ」

「そうか、でも美希ちゃんはお前のこと、大好きだって言っておったぞ」

「じゃ、なんでだよ」

「よく話し合わないと、夫婦は所詮他人だ、相手の気持ちなどわからないよ、俺も母さんのことはわからなかった、年が離れていれば余計だ、お前たちはいくつ離れているんだ」

「十二歳美希が上だよ」

「そんなに美希ちゃん上か、可愛らしいから三十八には見えんな」

「あ?っ そうだな」

「よく話し合え」

彼のお父様は彼にアドバイスをしてくれたおかげで、この日の夜、彼とお互いの気持ちを確認することが出来た。


病院から戻ると、彼は私に問いかけた。

「俺の言うことに、これから嘘偽りなく答えろ、いいな」

「はい」

「俺を好きか?」

「はい、好きです」

「あいつにまだ惚れてるか」

「あの人とのことは十年前に終わっています」

「あいつを好きか聞いている」

「好きじゃありません」

「なんであいつはよくて、俺は拒否された」

「それは……」

「理由があるなら言ってみろ」

私は大きく深呼吸をして話し始めた。

「あの人と別れた理由は、あの人に私と身体の相性が悪い、満足出来ないって言われたからです、だから恋愛に臆病になって、十年間一人でいました。
蓮さんに好きって言ってもらって、キスしてくれたり、抱きしめてくれたりと行為が進むに連れてまた同じこと言われたらどうしようって心配になりました。
蓮さんに嫌われたくなかったんです」

そこまで言うと、涙が溢れて言葉にならなかった
彼は「もういいから」と、そう言って抱きしめてくれた。
私の頬を伝う涙にキスをして、唇にもキスをしてくれた。

彼の舌と私の舌が絡み合い、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
自分でも驚く位に、彼のキスを受け止め、激しく彼を求めた。

このまま最後までいっちゃう、と心配が脳裏を掠めた。
ところが、彼は一旦私を強く抱きしめて、深呼吸をした。

「また、途中で拒絶されたら、さすがの俺も心が折れる、だから今日はこのまま朝までくっついて寝るぞ、いいな」

嬉しかった、私の心配を察してか私の気持ちを汲んでくれた。

「美希、まだ起きてるか」

「はい」

「身体の相性って確かにある、相性よくないと満足出来ない、でも愛してるだけで、気持ちが繋がってれば、いいと俺は思うぞ」

「蓮さん」

「俺は美希と一緒にいたい、それだけで十分だ、俺だけ見ろ、俺だけ信じろ、いいな」

「はい」

「今日親父から孫の話あったが、気にするな」

「でも、私、妻として嫁として役目を果たせていないですよね」

「妻としては俺がいいって言ってるから問題ない、嫁としても親父が気に入ってるんだから問題ない」

彼は私の気持ちを理解してくれる優しい人である、この優しさに甘えて、彼とずっと一緒に居たいと思った。


俺は美希に気持ちを確かめたかった。

まだあいつに未練があるのか、好きなのか。

なぜ俺は拒絶されたのか。

美希は「十年前に終わっています」と答えた。

そうじゃない、あいつを今でも好きかどうか聞きたいんだ。

俺は苛立っていた。

あいつが良くて俺はダメなんだ。

美希は理由をゆっくり話し始めた。

俺は黙って美希の話を聞いていた。

身体の相性が悪い、満足出来ないと言われたなんて、そのために臆病になっていたとは、予想を遥かに超えた言葉だった。

俺は美希を抱きしめた、悩んでいたのに、詰め寄り聞き出そうとして、俺はなんてバカなんだ。

そんな事も知らず、嫉妬して、美希の気持ちを疑って、ごめん、美希。
俺は美希を抱きしめ、キスをした。

きっと美希は俺とこうなる為に生まれてきたに違いない。

キスだけで止められない、俺は舌を入れて美希の舌と絡ませた。

心臓の鼓動が速くなる、興奮が最高潮に達した。

ダメだ、美希の気持ちはイエスでも身体がノーなら、また拒絶される。

俺は自分の気持ちに急ブレーキをかけた。

あと一歩間違えば谷底に落ちる寸前で止まった。

「朝までくっついて寝るぞ」

俺は興奮する気持ちをグッと堪えて、美希を抱きしめ眠った。

いや、朝まで興奮は収まらなかった。


そんな幸せは永くは続かなかった。暗い影が忍び寄ってきていることに気づかなかった。




元彼の事件から二ヶ月が過ぎようとしていた。
買い物は相変わらず、彼が休みに一緒に行ってくれる。
でも、彼のお父様の病院は昼間、私が以前のように顔を出すことにした。

病院の帰り道、急に手を引き寄せられて、抱きしめられた。
えっと思った瞬間、私の唇が塞がれ、身体に触れてきた男性は、元彼だった。

「イヤ」

抵抗するも押さえつけられ、元彼の荒い息が首筋にかかる。

「あんな若い男捕まえて、毎日お楽しみか」

「離して、今更何?」