適当に開いた片面のページには、一つの詩が書かれていた。それは恋愛をテーマにしたありがちなものではあったが、赤色について淡々と綴られるその表現力は、自分より数個年上の高校生が書いたとは思えないほど素晴らしいものだった。
今まで私の世界を侵食し、ずっと疎ましく思っていた赤色。それが初めて、宝石のような輝きを放ったような気がした。
その詩を読んだ瞬間から、私の視界に映る赤色が、一際美しく、尊いもののように思えて。私はこの詩のような世界が見えている、そんな優越感さえ抱いた。
なんて素敵な詩を書く人なんだろう。この人の目は、きっと他の人達とは異なる特別なものに違いない。本気でそう思った。
鳥肌が立った腕を擦りながら、詩のタイトル下に書かれた名前を見る。
言祝一矢。
それが本名ではなく、ペンネームだということはすぐにわかった。初めて見たはずのその名前はすんなりと脳に刻まれ、そして猛烈に「この人に会ってみたい」という衝動に駆られた。
この人の目には、一体どんな素晴らしい景色が見えているのだろうか。
もしこの人が私と同じ目を持っていたら、この赤色の世界を見て何を感じるのだろう。
この人と同じ景色を、私もこの目で見ることができるのだろうか。
この人の世界を記した詩の行く末を、一番側で見届けたい。
そう思った私は急遽進路を変更し、志望していた高校よりも偏差値が九つ高い稲河原高校への受験を決意した。全ては〝言祝一矢〟という、あの詩の作者に会うために。
そして去年の春。この文芸部に入部した私は、すぐにその人物を見つけた。
倉吉一矢先輩。
漢字で表記された名前と、主に詩を創作しているという自己紹介で確信した。それは想像通りの澄んだ瞳の持ち主で、いつも柔らかく微笑んでいる穏やかな先輩だった。
両手で口を覆ってその場で硬直した私は、上村先輩に指摘されてようやく自分が涙を流していることに気がついた。
そのことが原因となり、私は入部早々「倉吉先輩の熱烈なファン」というレッテルが貼られることになったのだ。
今まで私の世界を侵食し、ずっと疎ましく思っていた赤色。それが初めて、宝石のような輝きを放ったような気がした。
その詩を読んだ瞬間から、私の視界に映る赤色が、一際美しく、尊いもののように思えて。私はこの詩のような世界が見えている、そんな優越感さえ抱いた。
なんて素敵な詩を書く人なんだろう。この人の目は、きっと他の人達とは異なる特別なものに違いない。本気でそう思った。
鳥肌が立った腕を擦りながら、詩のタイトル下に書かれた名前を見る。
言祝一矢。
それが本名ではなく、ペンネームだということはすぐにわかった。初めて見たはずのその名前はすんなりと脳に刻まれ、そして猛烈に「この人に会ってみたい」という衝動に駆られた。
この人の目には、一体どんな素晴らしい景色が見えているのだろうか。
もしこの人が私と同じ目を持っていたら、この赤色の世界を見て何を感じるのだろう。
この人と同じ景色を、私もこの目で見ることができるのだろうか。
この人の世界を記した詩の行く末を、一番側で見届けたい。
そう思った私は急遽進路を変更し、志望していた高校よりも偏差値が九つ高い稲河原高校への受験を決意した。全ては〝言祝一矢〟という、あの詩の作者に会うために。
そして去年の春。この文芸部に入部した私は、すぐにその人物を見つけた。
倉吉一矢先輩。
漢字で表記された名前と、主に詩を創作しているという自己紹介で確信した。それは想像通りの澄んだ瞳の持ち主で、いつも柔らかく微笑んでいる穏やかな先輩だった。
両手で口を覆ってその場で硬直した私は、上村先輩に指摘されてようやく自分が涙を流していることに気がついた。
そのことが原因となり、私は入部早々「倉吉先輩の熱烈なファン」というレッテルが貼られることになったのだ。