今週は選択授業の教室に行く時に使う屋根付きの渡り廊下の掃除が当てられている。

わたしが一人で掃除をしていたとしても、見ている人はいない。

サボるにはうってつけの掃除場所。

だからといってわたしがサボらずに掃除をしているのはきっと、自分はあんな人たちとは違うと思いたいから。

真面目にしていればきっと……なんて、そんな夢物語やフィクションのようなことがあるわけないのはわかっている。

現実は甘くない。

真面目に生きていても、悪いことは起こる。


神様は平等だ。

真面目に真っ当に生きていたって、良いことは起きない。

不真面目に悪さをしながら生きていたって、良いことは起きない。

だからやりたいことをしたもん勝ちだ。

結局は他人なんて気にせずに、自分のしたいようにした人が楽しく生きていける世界。

すごく単純でわかりやすい世界だ。


「時田」


息が多く含まれた声で呼ばれて振り返る。

みんなに無視されて、存在をなき者として扱われるはずのわたしを呼ぶ人は、現在この学校に一人しかいない。

顎のラインを伝った汗をシャツの丸首部分で拭いながら呼吸を整えているのは、一年生のときに同じクラスだった大野くん。

サッカー部なのに肌はそこまで焼けておらず、清潔感のある黒の短髪で爽やかなスポーツ男子の雰囲気が全面に出ている。

そんな彼はもちろんモテる。
親衛隊がつくられているほどには。