────数日後。
この病院で目が覚めた日から、一ヶ月ほどが経過したある日。
私は目に見えて緊張していた。
「はじめまして。乙坂 美優です」
「初めまして。……桐ヶ谷 奈々美です」
思っていたよりもスムーズに自分の名前を言えたことに、私自身が一番驚いた。
乙坂 美優ちゃん。新しく私の隣のベッドに移動してきた女の子。
歳は私よりも二つ下。中学三年生だと言う。
小麦色に焼けた肌とショートカットのこれまた少し焼けて焦げ茶色になった髪の毛。ほどよく付いた筋肉は、とても入院するようには見えないくらい健康的。
長い睫毛が目を引く、とても快活で可愛らしい女の子。
しかし、私と同じように足に添え木をつけて吊るされているところを見るに、事故か何かで骨折してしまったのだろう。
頭にも包帯が巻かれ、手足もガーゼや包帯だらけだ。多分、見えていない部分はもっとひどい怪我をしているのだろう。
「個室寂しくて、無理言って大部屋に移動してもらったんです。よろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
「私の方が年下なんですから、敬語いらないです。美優って呼んでください」
「……それなら私も敬語いらないし、奈々美でいいよ」
「じゃあ、奈々美ちゃんで」
「うん。よろしくね、美優ちゃん」
美優ちゃんは、笑顔がとても可愛らしい明るい子だった。
ぱっちりとした二重から覗く黒目がとても澄んでいて綺麗だ。