「……今日、帰ってきたらお母さんに話してみる」
「あぁ。それがいいよ」
安心して俺も表情を緩めると、奈々美は急に眉を下げて。
「話した後、夜に電話してもいい……?」
そんなこと、わざわざ確認する必要もないのに。
「もちろん。待ってる」
返事をした後のホッとしたような笑顔が、俺の胸に残る。
可愛い。俺がその笑顔を守ってやりたい。
それは、美優に対するものとは同じようで全く違う感情。
その感情に身を任せるように、立ち上がってから掴んでいた奈々美の腕を引く。
「え……?」
ぽす、と俺の胸におさまった華奢な身体。
少し力を入れたら折れてしまいそうなくらいに細い奈々美を優しく抱きしめると、腕の中で奈々美が固まっているのがわかって思わず笑ってしまった。
「なっ……龍之介くん……!?」
「安心しろ。俺はいつだって奈々美の味方だし、奈々美の力になりたいって思ってる」
「……」
「だから、奈々美ももっと俺を頼っていいから。つーかもっと俺を信用して頼れ。甘えろ」
「龍之介くん……」
もう少しだけ力を込めて抱きしめる。髪の毛からふわりと香るシャンプーの甘い匂い。
恐る恐る背中に回った小さな手が、俺の服をギュッと掴んだ時。
それが癖になりそうなほどに、このまま離したくないとさえ思うほどに、愛おしさが俺の頭の中を占めた。