見直したということは、出会って間もないのにもう評価が低くなっていたらしい。
「物持ちがすごく良いね。それは昨日一目でわかった。捨てられないタイプね。だからわたしが粉々にしてやったんだけど。恋人との品はなかなかできない。素直にすごいと思う」
　思いのほか褒めらえて、少し舞い上がってしまう。
「これでこの部屋も処分できるね」えみが我が物顔で言う。
　それからほどなくして業者がやってきた。漏れなく二トントラックを携えて。
　我が家のものは二名の作業員により一気に持ち出されていく。えみの指示が「全部不用品です」の一言だったため、作業員はどれこれ構わず雑に持ち出していく。テーブルとかラックとか家電とか、メルカリで売れそうなものも多いが、手早く持ち運び、半ば放り投げるように荷台に積んでいく。
　その間、僕は最小限の着替えもリュックに詰めて、なんとか必要なものを確保した。
　作業は三十分程度で終わってしまった。費用は約十万円。繰り返し言うが、メルカリで売れば数万円くらいになりそうな家電などを含め、僕が十万円支払った。
　もぬけの殻となった部屋で僕はつぶやいた。
「意外と広いですね、この部屋」


　空っぽになった部屋で僕は感傷に浸ることなく、簡単に掃除を行った。掃除機もないので、簡単に雑巾で水拭きするくらいだ。ほとんど掃除もせず過ごしてきた埃部屋だけあって、家具を除いたら埃が山積していた。それらを水拭きするだけで、リフォームしたような新しさが感じられた。
　その間、えみは部屋の中央に鎮座して、ひたすら食べて飲んで、飲んで食べてしていた。およそ人間とは思えない所業である。
　夕方までに何とか掃除を終わらせ、僕らは物件の引き渡しに臨んだ。今日電話して、今日対応してくれるのだから、都会の不動産屋も案外親切だ。解約のサインをして、仕方なく一か月分の賃料を支払うことで即時解約した。部屋の確認もされたが、特段問題なかった。便座に一部亀裂が入ってたまにお尻を挟んでいたが、経年劣化として特に請求されずに済んだ。