こっぱずかしいことに、俺を主役にした映画ばかりなのだ。もちろん演じているのは、よその町からやってきた劇団の役者なのだけれど、さすがにそれを堂々と見る勇気はない。

「また、今度、な!」

「つれないですわ、お兄様! 『ロード・オブ・ジ・アルケミスト』は脚本、演出とも非常に素晴らしく、わたくし、四回目を観終えたところですの! 主役の方はお兄様と比べてしまっては仕方のないことですけれど、他のエイガに比べるとお兄様度が高いのです! 特に終盤のダンスシーンは雄々しくも野性味あふれるお兄様の……」

 フウカは鼻息荒く、映画について語り始める。

「そ、そうか……」

「いっつもソラは一緒に映画観てくれないー」

 サレンがそんなことを言いながら、ポップコーンをひと粒差し出して来たので、ぱくんと食べた。すると、サレンが急に真っ赤になった。

「てわた、手渡すと、思ってて……」

 消え入りそうな声で、サレンが言った。

「あ、すまん! 悪かった!」

 なんとなく妹に接するみたいな感じで、サレンの手から直接食べてしまった。両手がふさがっているし――しかし距離感には気をつけないと。最近仲間たちとの距離が妙に詰まってきている気がしていて、俺もそれに飲まれているところがある。いかんいかん。

「ごめんな、これからはそんなことしないから」

「別に、いい……」

「サレン! ずるいですわ! お兄様、わたくしの手からもポップコーンを! あれ? なんということでしょう! わたくしは自分のポップコーンを食べてしまっていましたわ! 不覚!」

「フウカ、もうすぐ『錬金術師VSサメ』が始まる……」

「ああ、もうそんな時間でしたの! 『錬金術師VSサメ』は多少ストーリーに難がありますけれど、お兄様じきじきに協力なさった特殊効果が白眉ですわね! これはわたくしまだ二回目ですわ! それではお兄様、ごきげんよう!」

 ふたりはそのまま、また百貨店へと戻っていった。年齢は桁レベルでわからないけれど、背丈の似たふたりだから、気が合うのかもしれない。


 そのとき、街の人たちからおおっと声が上がった。

 振り向くと、警備服に身を包んだリュカとフェリスだ。リュカはスキップしながらこちらに来た。

「ソラ! 見てみて、今日は大漁よ!」

 ふたりの後ろには、巨大な魔物――トロールがいた。俺がサレンから継承したスキル【百鬼夜行】によって、使役しているものだ。