「キシャアアアアアアアアアアアアア!!」

 キメラの動きは素早かった。触手のようなものを次々と繰り出して、壁や床に穴をあける。

 その一撃一撃に【破壊神】のスキルが働いている。

 つまり、一発喰らえば終わりだ。

「ソラァ……」

 肉の塊から、にゅうっと勇者たちの顔が飛び出す。

「貴様もォ……これまでだなァ……」

「僕たちはァ……最強だァ……」

「お前なんかァ……捻りつぶしてやるわァ……」

 ――ズドドドドドドドド!

 怒濤の触手攻撃。それに加え、魔法の火球も飛んでくる。それをかわせば【聖女】の布が幾重にも絡んで、拘束しようと迫ってくる。

 俺はそれらをかわしつつ、キメラに肉薄した。

【豪力】:一時的に攻撃力を三倍にする。

 スキルを使った一閃で、キメラをまっぷたつに斬り裂いた。しかし――。

「今度はァ……負けを認めないよォ……」

 キメラの切断面が、ニチャアッと結合する。

 その背後にいるのが、サレンを抱えたグルーエルだ。〈魔力核〉からサレンの兜を通して、キメラに魔力が供給されている。

 サレンは、気を失っているようだ。

「いま助けるからな!」

 俺は両手を前に出した。

【獄炎焦熱】:すべてを焼き尽くす、強力な炎を発生させる。

 俺とキメラの間に、炎の壁が発生した。

「へへェ……ヌルイィ……ヌルイぜェ……」

 炎の中から、何本もの触手が突き出される。

 俺は、そのことごとくをかわす。

 触手に切断された壁が、外へと崩落する。

 ハンマーのように変形した肉体がさらに城を破壊し、火球が命中した塔は爆砕して燃え落ちた。

「向こうは片づけたわ!」

 リュカたちが壊れた扉から現れた。

「なるほど……相手に不足はなさそうだ」

 フェリスが剣を構える。

「最初はわたくしですわーっ!」

 フウカの両手から電撃が放たれた、それと同時にリュカとフェリスが斬りかかる。しかし破壊された部位は、〈魔力核〉の力と、ユニークスキル【勇者】によって瞬く間に再生する。