「痛っ」
三年間通った高校の正門を出ると同時に、私は小さな声をあげ、左手を無意識に左目に当てた。
つい先ほど、卒業式が終わった。
高校生活最後のホームルームの後、クラスメイトたちが名残惜しそうに歓談を続ける教室から、一人ひっそりと出てきたところだった。
私は大学に進学せず、家業を手伝うことになっている。
これが、人生最後の下校――。
幼い頃から身体が弱く、友達が少ない私にとって、高校生活はそれほど楽しいものではなかった。
それでも、『人生最後』に感傷的な気分になった途端、目の痛みに襲われた。
右手に記念品の入った紙袋を提げ、左手には卒業証書を入れた筒を持っていた。
私の足元に、筒がカランと音を立てて転がる。
「う……」
右目を頼りに視界を確保し、支えを求めて正門の柱に寄りかかる。
左目がズキズキと痛い。
この痛みは、ゴミが入って眼球が傷ついたとか、そういう類のものではない。
もっと奥の方、視神経に繋がるあたりの痛みだろうか?
痛みを堪えながらも、わりと冷静に判断できたのは、これが初めてではないからだ。
最初は三カ月ほど前だと思う。
忘れた頃時々痛むくらいだったのが、ここ最近は頻回だ。
三年間通った高校の正門を出ると同時に、私は小さな声をあげ、左手を無意識に左目に当てた。
つい先ほど、卒業式が終わった。
高校生活最後のホームルームの後、クラスメイトたちが名残惜しそうに歓談を続ける教室から、一人ひっそりと出てきたところだった。
私は大学に進学せず、家業を手伝うことになっている。
これが、人生最後の下校――。
幼い頃から身体が弱く、友達が少ない私にとって、高校生活はそれほど楽しいものではなかった。
それでも、『人生最後』に感傷的な気分になった途端、目の痛みに襲われた。
右手に記念品の入った紙袋を提げ、左手には卒業証書を入れた筒を持っていた。
私の足元に、筒がカランと音を立てて転がる。
「う……」
右目を頼りに視界を確保し、支えを求めて正門の柱に寄りかかる。
左目がズキズキと痛い。
この痛みは、ゴミが入って眼球が傷ついたとか、そういう類のものではない。
もっと奥の方、視神経に繋がるあたりの痛みだろうか?
痛みを堪えながらも、わりと冷静に判断できたのは、これが初めてではないからだ。
最初は三カ月ほど前だと思う。
忘れた頃時々痛むくらいだったのが、ここ最近は頻回だ。