今日も天使と話していた。
会話の途中で天使が
「そういえばあと6ヶ月だね」
と呟いた。
今までだいたい1ヶ月たったら教えてくれていたのに。
「え、もうそんなに?1ヶ月たったら教えてよー」
「あ、僕も忘れちゃうんだよね。時間経つの早いから」
ふふっと天使が噴き出した。
その後もいつものように話していつものように天使と2人で暮らした。
ただ、病気が悪化していた。
病院に行く回数がどんどん増えて学校も休んで勉強についていけない。
家で勉強について行こうと頑張ってもなかなかついていけない。
「天使ー」
「どーした?」
「勉強ついていけないの」
すると天使が優しい声で
「僕もさ勉強苦手だから教えるとかできないかもー」
と笑った。
「えー?まぁ自分で勉強してみる」
「頑張って!」
その後勉強は何となくついていけるようになった。
でも学校で勉強していたからどんどんスクールカーストが下がって行く。
体育も病気のせいで見学だから私には取り柄がない。
天使に出会う前の5月よりずっとずっとスクールカーストが下がった。
一軍になりたいとかは思わないけど三軍くらいにはなりたかった。
今の私は軍も何も無いただのぼっちだ。
匠くんとの距離もどんどん離れていく。
匠くんはいつも友達に囲まれてずっと笑っている。
匠くんと話せない日が続いていく。
今日も匠くんと話せなかった、と落ちこんで学校から帰っていると急に心臓が痛くなった。
急いで「天使」と声を上げた。
「どーした?」
答えようとしたけど苦しくてしゃがみこんでしまった。
「え、大丈夫!?」
気がつくと過呼吸になっていた。このまま死にそうで怖かった。
「えっと、まず深呼吸しよ。大丈夫だから落ち着こ」
天使はすぐに状況を理解して対応してくれた。
天使が私の隣に腰を下ろして背中をさすってくれた。
苦しくて息が止まりそうだったけど天使の声に合わせて深呼吸をしていくうちにだんだん楽になってきた。
「落ち着いた?」
「うん。ありがと。天使がいなかったら私多分死んでた、ほんとありがとう。」
天使は命の恩人だ。
天使がいてくれてほんとによかった。
前を向くと天使が不安そうな顔でこちらを覗いていた。
「とりあえず家帰ろっか、」
「うん」
家に帰ると天使が
「急に苦しくなったの?」
と質問してきた。
「心臓が痛くなってきて焦って苦しくなった。」
すると天使は頷いて
「そっか、怖かったよね。苦しかったよね。病院行く??」
病院と言う言葉にドキッとする。
子供みたいで情けないけど病院が怖い。
どんな検査をされてまた病気が見つかるかもしれない。
だから行きたくない。
「今日は大丈夫。明日病院行くことになってるからその時言う」
「そっか、明日病院の先生にちゃんと言うんだよ、」
うん、と返事をすることは出来なかった。
また入院することになるかもしれない。
それだけは避けたかった。
「そういえば心乃ちゃん悩み事あるでしょ」
寝ようとしてベットに横になった時、天使に話しかけられた。
特に悩み事なんかない、と言おうとした時スクールカーストのことが頭に浮かんできた。
大した悩みじゃないし言わないでおこうと思って天使の方を見ると優しい瞳でこちらを見つめていた。
その瞳に嘘はつけない。
「悩みって言うか、スクールカーストが気になるかな」
すると天使は頷いて
「そっかー。僕はスクールカーストとか関係ないと思うけどな。心乃ちゃんは何がやなの?」
「みんな私の扱いが酷いし、軍に属してないやつが話しかけんな、みたいな感じで対応されるの」
みんな私が話しかけても素っ気ない対応をするか無視するか、それが辛かった。
「それは辛いね。心乃ちゃんのことをそんなふうに扱う人は心乃ちゃんが話しかけるべき人じゃないと思う。」
話しかけるべき人じゃない、なんて言われてもクラスメイトだし話しかけなければ誰とも話せなくなる。
すると天使が続けてこう言った。
「心乃ちゃんにとっては学校の人全員に嫌われたら人生終わり、みたいな感じかもしれないけどね、学校はほんとに狭いんだよ。
世界はほんとに広い。
僕は天使の国に住んでるから他の人よりたくさんの世界を見てる。
学校の人に嫌われたとしても世界にはたくさん心乃ちゃんの味方がいる。
少なくとも僕はその1人だよ。」
そうか。私が思っているより世界は広いんだ。
でも世界にたくさんの私の味方なんているはずない。
そう考えているとそれにきずいた天使が
「味方って言ったけど言い方変えたら
心乃ちゃんと友達でいたいって思ってくれる人かな。
多分心乃ちゃんのクラスメイトの中には別に嫌いじゃないけどみんな心乃ちゃんと話さないから自分も離れよって思ってる人もいると思うよ。
でも周りに流されて心乃ちゃんから離れていく人は味方とは言えないね。
周りが心乃ちゃんのこと嫌いになっても心乃ちゃんと一緒にいたいって思ってくれる人が味方だよ。」
全身に刺激が走って動けなかった。
口を開こうとしても動かない。
体が重かった。
しばらくしてから少しづつ体が動くようになった。
「そんな考え方、私したこと無かった。
ほんとにありがと。元気出た。」
気づいたら口を開いてお礼を言っていた。
天使はなんて素敵なことを言うのだろう。
色んな世界を見てきた天使は私とは全く違う世界の見方をしているのだ。
「だから、スクールカーストなんかに悩まないで」
「うん。」
その後から学校に行って1人になっても気にならなくなった。
それは天使のおかげだ。
世界には味方がいると教えてくれた天使のおかげだ。
やっぱり時間が過ぎるのは早い。
もうあと3ヶ月しかない。
匠くんと付き合えない。
そんなことを考えながら授業を受けていると
「心乃ちゃん!ねえ、僕だよ!天使!」
と、小さい声で天使が話しかけてきた。
「何?授業中だよ」
私も小声で返事をした。
「なんか暗そうな顔してたからさ、何かあったのかなって」
心配そうな顔の天使がやっぱり愛おしい。
でも授業中に悩み相談はいくらなんでもおかしい。
「うん、後で話すから今はちょっと待って」
すると天使が残念そうな顔をして「はーい」
と返事をした。
授業が終わって昼休み。
私はいつも誰も来ない空き教室で朝自分が作ったお弁当を食べている。
みんな友達と机を合わせて喋りながら食べているけど私にそんな友達はいない。
「天使〜」
「はい!うわ〜!今日作ってたお弁当だ!美味しそー」
天使が目を輝かせている。
「そんなすごいもんじゃないから」
そう答えたが本当は少し嬉しかった。
誰かに自分で作った料理を『美味しそう』
なんて言われたのは初めてだ。
「ひと口だけちょーだい!」
あまりにも愛おしい笑顔で言うのでひと口だけあげることにした。
「え、美味しすぎる!今まで食べてきたものの中で1番かも!」
嬉しい。
素直に嬉しかった。
褒められたことなんか1度もなかった。
天使がお世辞で言ってたとしてもほんとに嬉しかった。
「ほんと!?嬉しー!」
思わずそういうと天使から予想外の答えが返ってきた。
「お、意外と素直じゃん」
自分でもこんなに喜んだのは初めてだとわかったけどそんなに素直に見えていないのか。
「あっ、そうでもないか、心乃ちゃん結構素直だ。よく考えると。」
天使は何を言っているんだろう。
自分も分からなくなった。私は素直なのか素直じゃないのか。
でも自分的には素直じゃない方だと思う。
小さい頃お母さんとお父さんに怒られても素直に謝れなかった。
「素直だと思う。心乃ちゃん。」
天使が少し考えながらそう言った。
「え、なんで?」
「だってさちゃんとありがとうって言えるじゃん。素直じゃない子はありがとうって言うのが恥ずかしいっていうか」
「私、ありがとうなんて天使に言ったっけ?」
全く覚えていない。天使に助けられた時後で話聞くからと言われその場でありがとうを言えなかったりしたと思う。
「心乃ちゃんが苦しくなった時とかスクールカーストの話した時とかありがとうって言ってたよ」
自分では覚えていないけど多分心が動いていたから流れるように口にしたのだろう。
「だから、心乃ちゃんは素直だと思う。素直って素敵な事だよ!
あっ、もう一口ちょーだい!」
頭の整理が追いつかなかったけどとりあえずもう一口天使にお弁当をあげた。
すると廊下から声がしてきた。
「てかさ病気だからって体育休んだりすんのうざくね?」
「それな、しかもブスだし勉強できないし」
「ほんとそれー」
これは私の悪口だ。
会話を聞いただけでわかる。
匠くんのグループの声。
どんどんこちらに近ずいてくる。
私と天使がいる教室の前を通った時
「え、心乃だ」
「おっ、噂をすれば」
と笑いながら話していた。
どんどん声が遠くなってった。
匠くんが私の悪口を言って笑っていた。
嫌われたんだ。
私にはあと3ヶ月しかないのに、と心が叫んでいた。
「天使、」
かすれた声で天使をよんだ。
「辛いね。でもタイムリミットは3ヶ月もあるよ」
「3ヶ月しか、だよ。私、どうすればいいの」
「前にも言ったけど大体は周りに流されてるだけだから匠くんもきっとそうだよ」
その言葉に少し安心した。
その夜、天使と一緒にどうやったら匠くんと付き合えるか作戦会議をした。
作戦会議の時、天使が真剣に考えてくれてほんとに嬉しかった。
私は今入院している。
2ヶ月前にした天使との作戦会議で出た案を先月まで試して見たけれど逆効果でどんどん病気が悪化していくだけだった。
「心乃ちゃん、タイムリミットあと1ヶ月だけど入院しちゃったらね」
天使が困った顔でそう言った。
もし漫画やアニメだったら隣の病室に匠くんが来て同じ病気で一緒に死んで天国で2人で暮らしているだろう。
でもそんなこと現実ではありえない。
隣の病室にはヨボヨボなおじいちゃんしかいない。
しばらく天使と話をしてから病院の先生に呼ばれた。
「心乃ちゃん、単刀直入に言うと余命があと1ヶ月です」
つい知っています、と言いそうになるのを我慢した。
そこから医者が励ますような言葉をかけてきたけどもう何も考えられなかった。
匠くんとつきあえなかった。
天使と初めて話した時、『匠くんは高嶺の花』と言った。
実はその時少しだけチャンスがあるかも、と馬鹿なことを考えていた。
病室に戻ってまた天使と喋った。
天使はいつものように優しい声で話してくれた。
「今日はもう寝る?」
「うん。おやすみ。」
「おやすみ」
「あ、隣に居てほしい。幽霊出そうだから」
「うん。僕は隣にいるよ」
あの時を思い出す。
親が死んでから初めての入院で怖かったとき、天使が隣にいてくれた。
ベットに横になった時天使が
『匠くんと付き合えなかったけど落ち込んでばっかじゃなくて死んでから悔いがないように今できることをしよ』
と教えてくれた。
天使の言っていることは正しい。
匠くんと付き合えなかったからってこんなに落ち込んでいたら死んだ後絶対後悔する。
「うん。そうだね、ありがと!」
そう言ってから今できることを考えた。
考えてるうちにだんだん眠くなってきて眠りについてしまった。
朝起きていつものように天使と喋ってご飯を食べてから今できることを考えるようになった。
もう死ぬと決まっているから検査はないけど珍しい病気だからと言って入院させられているため暇で仕方ない。
天使と一緒に考えてぬいぐるみを買ったり甘いものを食べたりして幸せに過ごした。
タイムリミットはあと1週間しかない。
正直に言うと死ぬのが怖かった。
夜は天使に背中をさすってもらって寝れるか寝れないか。
日が経てば経つほど怖さが増していく。
今も天使に背中をさすってもらってる。
「大丈夫大丈夫、大丈夫だから」
天使が何度も何度も大丈夫と声をかけてくれた。
天使の優しい声で少し心が落ち着く。
「怖、い・・・」
つい声がもれてしまった。
もし今日眠れて明日起きれたとしても毎日こんなに怖い思いをするのかと思うと苦しい。
「絶対大丈夫。ほら深呼吸して」
天使に何度も声をかけてもらってやっと落ち着き、眠りにつく。
今日も寝る時間が来てしまった。
すごくすごく眠いはずなのに寝れない。
昨日と同じように天使と一緒に時間をかけて眠ることができた。
「おはよー」
「おはよ、いつも寝る時ほんとにありがとう」
「いいよいいよ!僕は天使だもん」
よく分からない説明につい笑ってしまう。
「天使の国、行きたいな」
そう独り言を言ったが外出は許されていない。
「いいんじゃない?」
天使の意外な返事に驚いた。
そんな私のことを気にすることも無く
「だって外に出るなってことでしょ?心乃ちゃんが天使の国に行ってる時は周りから見たら寝てることになってるから」
心の中で喜びの声がもれる。
「じゃあ、行きたい!」
「うん、じゃあ行こ!」
そして懐かしい感覚が蘇る。
天使の国に着いた時の安心感。
色、匂い、音、雰囲気
天使の国の全部が安心する。
その時ふと思った。
死んだらここには来れないのか、死んだら天使には会えないのか、気になって天使に聞くと「ここには来れないね、僕に会うことも多分ないと思う」
もう天使に会えないのかと思うとすごく悲しい。
悲しさでいっぱいになって動けないでいると
「帰るよー」
と天使が私の腕を掴んだ。
気づくと病室にいて天使の国にはいなかった。
その後もいつもどうりに天使と話したけど
どこかモヤモヤが残っている。
『僕と会うことは多分ない』という天使の言葉だ。
会えなくなると考えて悲しくなっていたけどもしかしたら会えるかもしれない、と少し期待している。
今日の午後6時に私は死ぬ。
いつも寝る時に怖がっていたけどその時よりも怖い。
天使は大丈夫、と何度も声をかけてくれた。
そのおかげで少し怖さが引いてきた。
タイムリミットが迫ってくる。残り2時間になった時、読み終わってない小説が目に入った。
あと3ページ程だったので読むことにした。
主人公は今が辛くて全部がどうでも良くなって自殺しようとしていた。
そこに担任が来て
「お前が決めたことなら先生は止めない。
ただ、最後に大切な人のことを考えてほしい。好きな人でも友達でも誰でもいいから死ぬ前にその人のことは考えてほしい」
と言って立ち去った。
その言葉を聞いて主人公は泣き崩れて好きな人のところに走っていき、想いを伝えて自殺をやめた。
この小説を読んで今の私に当てはめてみた。
私が死ぬ前に考えるべき人。友達ではない。
好きな人、匠くん。
でも匠くんは私の悪口を言って笑っていた。
私の1番大切な人は天使だ。
世界は広いということ、スクールカーストなんか関係ないということ、世界には味方がいるということ、たくさんのことを教えてくれた。
親のような安心感で私を包んでくれた。
下校中に苦しくなった時、助けてくれた。
寝れない時背中をさすってくれた。
自分の素直さに気づかせてくれた。
匠くんとどうすればいいのか作戦会議を開いてくれた。
死にそうで怖い時何度も大丈夫、と声をかけてくれた。
天使に何度も救われた。
天使が好きだ。
匠くんに向けた感情とは全く違う。
天使を見てみると私の手を握ってくれていた。
私もその手を握り返した。
すると驚いたような顔をして私を見つめてくる。
「ねえ、私さ天使のこと好き。私にとって1番大切な人は天使。」
天使はボロボロと涙を流していた。
「僕も心乃ちゃんのこと大好き。ずっと前から好きだった。
僕の一番大切な人は心乃ちゃんだよ」
予想外の答えに固まってしまった。
ずっと、というのはいつからなんだろう。
「僕さ、心乃ちゃんといると安心して落ち着くんだ。
心乃ちゃんには本気で幸せになってほしいって思ったから。
心乃ちゃんが匠くんのこと本気で好きなんだってわかって辛かった。
心乃ちゃんが夜泣いてると僕も辛かった。」
私は天使に辛い思いをさせていたのだ。
なんて最低なんだ。
自分ばっかり恋愛相談して。
「ほんとごめん、匠くんに夢中になってたけど今気づいた。天使のことが大好き。匠くんは人の悪口言う最低。」
すると天使が微笑んでこう言った。
「心乃ちゃんが死んだら僕も役目が終わって天使じゃない職業にはつけるんだけど、
いろんなのがあってね、僕は死んだ人の情報を確認してその人を支える仕事につきたいんだ」
私は天使に1年間担当してもらって幸せだった。
「なんで天使の仕事がやなの?
私は天使がいろんなこと教えてくれてほんとに幸せに1年間過ごせた。今までにないくらい幸せだったよ」
そう言うと天使は深呼吸をしてから
「天使が嫌なんじゃないよ。
その仕事につけば、」
天使の言葉がそこで止まった。
思わず「つけば?」と聞き返すと
「その仕事につければまた心乃ちゃんに会える。一生心乃ちゃんのこと担当できる。」
あまりの嬉しさに天使のことを抱きしめてしまった。
「私が特に感動したのがね、世界は広いって教えてくれた時。寝れない時に背中さすってくれたりして嬉しかったけど世界の広さを教えてくれた時が一番嬉しかった。」
言い切ったと思ったけどやっぱりまだ言いたいことがあったので続けた。
「でね、その時もし来世があったら
広い世界で生きるって言う意味で広世っていう苗字がいいなって思ったの。」
今度こそ言い切った。
残り時間わずかだ。
すると天使が「もし天国で会えたらよろしくね。大好きだよ」
と言って私の手を強く握った。
「私も大好き」
と返した直後、視界が真っ白に染まった。
何もない。
どんどん下に落ちていく。
下を向くとたくさんの雲が見えてたくさんの人がいた。
『天国だ』と確信した。
天使に辛い思いをさせていたからもしかしたら地獄に行くかもしれない、と少し不安だったけど天国でよかった。
雲の上に着地して辺りを見わたした。
真っ白な服を着た人が沢山いて空から落ちてきた人達に声をかけている。
「ねえ、君まだ説明聞いてない?」
とそこらじゅうから声が聞こえてくる。
天使と初めて出会った時同じように声をかけられたのを覚えている。
「ねえ、心乃ちゃん、まだ説明聞いてない?」
もう心臓はないけど心臓が止まりそうな感覚になった。
その声でわかる。
大好きな天使の声。
振り向く前に涙が溢れだしてきた。
振り向くともう天使じゃない天使が満面の笑みを浮かべてたっていた。
「はい、まだ何も聞いてません」
涙が流れるのを止められないまま答えた。
「僕は広世。よろしくね。
心乃ちゃんのこと担当することになった!」
広世。ついさっき私が天使に教えた名前だ。
「新しい名前、似合ってる」
「ほんと!?やったー!
あ、えっと、色々聞かせてね」
「はい」
「あ、全部知ってた!」
思わず笑いがもれる。
大好きな笑み。
「じゃ、広世、よろしく!」
「じゃあ心乃!よろしくね」
改めて名前を呼ばれると変な感じがする。
「ここでは歳とんないから一生2人で暮らせるよ、ここなら悪口言われることもスクールカーストもないから何も心配することないよ」
私はずっと広世と暮らせるんだ。
この平和な世界で。
「心乃はさ、辛いことが沢山あったのによく頑張ったよ、偉かったな。もう頑張る必要ないからな。」
この広世の声が大好きだ。
声だけじゃない。広世の全てが大好きだ。
色んなことを教えてくれた広世。
広世が天使だった頃に教えてくれたことを
きっと私が忘れることはない。
それくらい私の心を動かした。
大好きな広世から絶対に離れたくない。
1番大切な人は広世だから。