コンビニで肉まんを二つ買って、家の離れにある橋の下で2人で座り込み話をすることにした。里穂は熱い肉まんを食べようとして、私に語りかけた。
「前言ってた曲、はどうなの?」
首を振り、意見がまだまとまらないという風に少し残念がってみた。里穂は私が新しい場所でのことを心配してくれているようだ。
「私もしてたんだ、結構前に。作曲。」
思わず食べていた肉まんを吐き出しそうになる。知らなかった、里穂が作曲をしていたなんて。
「ちょ、大丈夫?はいティッシュ。」
咳き込みながらティッシュを受け取る。その話聞かせてと言わんばかりにキラキラした目で里穂を見つめる。
「あぁ作曲って、そんな大したものじゃないの。溜まった気持ちをぶつけるところが欲しくて、辿り着いた...みたいな?」
溜まった気持ちをぶつける...気持ちをぶつけるって言葉、なんかかっこいい。
「純恋のことがあってから私も思い出したの。純恋に話してなんて言ったけど、私だって純恋に言えないことあった。」
里穂は肉まんの袋を閉じて話すことに集中した。
「うちのお父さん、今まで純恋には単身赴任だって言ってたけど本当は離婚したの。中一の時に。」
耳を疑った、そんなこと思ってもなかったし里穂にそんな重大なことが起きていることを気づいていなかった。単身赴任だと言われたことも忘れかけていた。
「親友でも、言えないことあるよね。分かってあげられなくてごめん。」
精一杯に"そんなことない"と横に首を振る。
「でも、だからこそ1人で我慢することが辛いからこそ純恋には1人で我慢しないで欲しいの。溜め込まないで欲しい、全部打ち明けて欲しい。」
ぱてまややむに出会って、声を失って初めて気づいた。私は周りに支えられて生きている。たくさんの人が私のことを見守ってくれている。当たり前であって、当たり前じゃないこの幸せが改めて私はわかった。私も、里穂にはたくさん私に感情をぶつけて欲しい。もっとたくさん話して欲しい、私とずっと親友でいて欲しい。
「...ゎ...も」
「純恋?」
「ゎた...し...も」
「里穂に...我慢...して欲しくない...」
だからこれは、私のリスタートだ。新しい私になるための、出発地点。