『keyさん、ごめんなのだよ。やむは気難しい性格な面があるのだよ...』
『きっと、話せばわかるのだよ。』
話せばわかる、本当にそうなのだろうか。やむさんが言った事は全て間違いではなかった。むしろ当たり、と思える。
『そっちで活動ができなくなったからこっちで上手いことやって人気を得ようとしてんの?』
結局私は、居場所が欲しいだけなんだ。満たされていたいだけ、弱いだけ。弱さを隠すために、埋もれて満たされるためにただ探しているんだ。
「(なんてずるいんだろう...)」
こうして落ち込んで、悩んで。本当アホらしい。馬鹿みたい、私なんて、私なんて...
気づくと私はスマホを片手に家を飛び出し土砂降りの雨の中、昔よく遊んだ広場へと秘密の抜け道を抜けて来ていた。人は誰もいなくて、こじんまりとしている。草木は生いしげ、手入れもされず忘れ去られた今となっては私くらいしか来る人のいない広場。
『────────!!!!!!」
精一杯に声を出そうと息を吐く。何度も何度も、息が切れても吐き出す。30分くらいしたら、手足が痺れてその場に倒れ込んだ。
「はぁ...はぁ...」
強くなりたい、誰にも負けない私だけの歌を歌いたい。はやく、私になりたい。泥を握りしめて打ち付ける。涙を零した私を、雨は力強く痛めつけるように打ち付ける。
雨の誤タップで再生してしまった動画が流れる。それは、Miraのオリジナル曲だった。
『辛さを強さに 痛みを噛み締めよう そうすればきっと私 もっと輝ける─────』
叫ぶように力強いMiraの歌声が響く。Miraが私に直接訴えているみたい、『起き上がれ』『立ち上がれ』そう言われているみたいで、自然と体が起き上がる。やれることをしよう、後悔のないように。