「ねぇ、シンガーのkeyって知ってる?」
突如ネットに現れた謎多き歌姫「key」。
現実離れした黄金色のシルクのように透き通る髪と白い肌。白銀の瞳を持つ誰もが目を奪われる美貌を持つ。様々なジャンルの楽曲をカバーする彼女は動画サイトの総再生回数100万を2週間であっという間に越え、今では日本中の誰もが注目するトップシンガーである。
「でも情報とか年齢とか一切公開してなくて本当に謎なんだよね。配信とか一度もしたことないし。」
そんな謎に包まれた歌姫の正体は...
「ミステリアスな女性って惹かれるとか言うじゃん?」
田舎の平凡な女子高生、中世古純恋である。
勿論、自分の正体が日本全体を虜にする噂の歌姫だということは秘密。家族にもこれからできるかもしれない恋人にも言わないつもりである。
友人の藤岡里穂が「はぁー?」と呆れ目で笑う。
「えーなにそれどこ情報だしー笑笑」
「まぁkeyみたいに魅力的な女になれば、里穂も彼氏の一人や二人...」
「二人はいらないから!!怒」
平凡、それ以外何もないただの高校生。きっとはなから見たらそうとしか見えない。

『でも情報とか一切公開してなくて本当に謎なんだよね。配信とか一度もしたことないし...』
「本当、鍵なんて自分に名前つけて。期待して。自分を隠して何が楽しいんだろう。」
独り言を他人事のように自分に向かって呟く純恋。
その瞳からは、向かい合うパソコンの光に照らされたキラリと光る情が流れていた。