薬は病気を治すものではない

 薬は、病気を治すものではない。
 それぞれの薬に、目的があってそれを認識して使わなくてはいけない。
 病気の原因を取り除く場合もあるが、症状に対して効き目を発揮する場合も多い。
 この「原因を取り除く」ことと「症状を和らげる」ことはまったく違う。
 風邪薬を例に挙げると「風邪の特効薬はない」といわれている。
 風邪の原因になる微生物はさまざまである。
 それらに直接作用する薬は抗生物質と呼ばれている。
 細胞壁を破壊したり、DNA合成を阻害したりするが、作用機序に合わないウイルスに対してはまったく効果がない。
 一般に言う風邪薬は、炎症を抑えたり、たんや鼻水を抑えたり、利尿作用で尿にして排出するだけである。
 これを魔法の薬だと勘違いすると、思わぬ思い込みを生む。
 せきや、たん、鼻水がでなくなったら良く効いたと思う人がいる。
 これは、原因になるウイルスを体内に留める結果になりかねない。
 市販の薬は、症状を和らげるものが多い。
 薬も商品だから、消費者のニーズに答えなくてはならない。
 咳を止めたいと思っている人にとっては、咳が止まればニーズに合っている。
 だが場合によっては完治までの日数が伸びる。
 だから、消費者は薬の作用をきちんと認識するべきだ。
 母が大病してから病院で医療関係者と話す機会が多くなり、このような思いが強くなった。
 同じ症状でも医者によって対処の仕方たちがうし、どの治療法が最適かは患者側が選ばなくてはならない。