「コイントス」コンピュータは人間を超えた人間になろうとしている

 2019年秋、グーグル社を中心とする研究グループが、当時の世界最速のスーパーコンピュータが1万年を要する計算を、量子コンピュータが3分20秒で実行したことを発表した。
 量子コンピュータは、よくコイントスに例えられる。
 コインを投げ上げて。まだ表でも裏でもない状態を保つことが驚異的な計算速度を実現するとされている。
 普通のパソコンに計算させると、人間からすれば信じられないほど速く正確に答えを出す。
 だが天文学的な計算や、複雑な現象を再現する計算の場合には、スーパーコンピュータの出番になる。
 そんなレベルでの話だ。
 興味深いのは、正確な答えがでないことである。
 何パーセントの確率でという前置きがついて答えがでる。
 まるで人間が計算したような答えである。
 人間はヒューマンエラーを前提にして計算する。
「人間様が計算したのだから絶対に間違いはない」
 という人はいないだろう。
 だが、
「コンピュータで計算したのだから間違いはない」
 とはいえる。
 だが、量子コンピュータは前者と同じなのである。
「コンピュータは人間を超えた人間になろうとしている」
 と何かに書いたことがある。
 とてもロマンチックなフレーズに聞こえる。