言いかけたその瞬間、凛花がまるで糸を切られたマリオネットのように、ぐらりと身体がズレて座席から落ちそうになった。慌てて抱き止めるも、凛花は固く目を閉じて眠っている。
「凛花? おい、凛花!」
突然何が起こったのか。疲れて寝てしまったとも言い切れないが、不自然に意識が途切れた気がした。何度名前を呼び、身体を揺すり頬を軽く叩いても、一向に目が覚める気配がない。
体勢を変えようと顔をあげると、先程まで凛花が座っていた席に、いつかの仲介人が座っていた。
「やぁ。久しぶりだね」
「……なん、で……お前」
「お前って言い方は良くないな。仲介人と呼んでくれと言わなかったかな?」
仲介人はあの日と同じ全身真っ白な服を纏い、キャスケットを深く被っている。表情からは相変わらず何を考えているのか読み取れない。
こんな狭い空間にどうやって現れたのだろうか。
眠っている凛花を引き寄せて覆うように抱きしめると、キッと仲介人を睨んだ。
「いつからいた? お前、人間じゃないって言ってたな」
「確かにボクは人間じゃない。けど難しい話をして君は理解できるのかい? 彼女のことはおろか、自分のことも知らない君が。……でもまぁ、そうだな。ここに来た理由を述べるなら、『ルール違反』をしたから、かな」
「ルール?」
「そう。古賀凛花とボクは、記憶を失う前にとあるルールを取り決めたんだ。それに違反すると気を失い、自分が何を言おうとしていたのかを忘れてしまうのさ。だから君も、彼女が言いかけた言葉は聞かなかったことにしてほしい」
仲介人が茶目っ気にそう言うと、凛花に手を伸ばそうとする。思わず振り払った。
「……ふざけるな、なんでそんなことお前に決められないといけないんだ!」
「考えればわかることでしょ? それはボクが彼女の代償を受け取ったからさ」
「凛花? おい、凛花!」
突然何が起こったのか。疲れて寝てしまったとも言い切れないが、不自然に意識が途切れた気がした。何度名前を呼び、身体を揺すり頬を軽く叩いても、一向に目が覚める気配がない。
体勢を変えようと顔をあげると、先程まで凛花が座っていた席に、いつかの仲介人が座っていた。
「やぁ。久しぶりだね」
「……なん、で……お前」
「お前って言い方は良くないな。仲介人と呼んでくれと言わなかったかな?」
仲介人はあの日と同じ全身真っ白な服を纏い、キャスケットを深く被っている。表情からは相変わらず何を考えているのか読み取れない。
こんな狭い空間にどうやって現れたのだろうか。
眠っている凛花を引き寄せて覆うように抱きしめると、キッと仲介人を睨んだ。
「いつからいた? お前、人間じゃないって言ってたな」
「確かにボクは人間じゃない。けど難しい話をして君は理解できるのかい? 彼女のことはおろか、自分のことも知らない君が。……でもまぁ、そうだな。ここに来た理由を述べるなら、『ルール違反』をしたから、かな」
「ルール?」
「そう。古賀凛花とボクは、記憶を失う前にとあるルールを取り決めたんだ。それに違反すると気を失い、自分が何を言おうとしていたのかを忘れてしまうのさ。だから君も、彼女が言いかけた言葉は聞かなかったことにしてほしい」
仲介人が茶目っ気にそう言うと、凛花に手を伸ばそうとする。思わず振り払った。
「……ふざけるな、なんでそんなことお前に決められないといけないんだ!」
「考えればわかることでしょ? それはボクが彼女の代償を受け取ったからさ」