昼食をとってから、まだ乗っていないアトラクションをまわっていく。最初は乗り物酔いでダウンしていた牧野や俺も徐々に慣れてきて、激しいものでなければ挑戦して楽しんでいた。
 さすがに佐山からジェットコースターに再チャレンジを持ち掛けられたときは丁重に断った。同じ轍は二度踏まない。

「最後はやっぱ観覧車っしょ!」

 閉園時間が近付いてきて、最後に一つ乗ろうと佐山が観覧車を指名した。もちろん、全員が賛成し、どうやって分かれるかを話していると、真っ先に凛花が手を挙げた。

「私、溝口くんと乗りたい!」
「……え?」

 突然の提案に思わず聞き返した。事前に「森田と牧野をどこかで二人きりにさせたい」という話はしていたが、一日を通して千佳の介抱をした時だけだった。だから観覧車で二人きりにして、他の四人が後ろで見守ろうと、こそこそ話していた矢先だった。すると、凛花に便乗して牧野も声をあげた。

「せ、せっかくだから二人一組で乗らない?」
「そうだな! あ、じゃあ青山、俺と乗ろっ!」
「わ、私?」
「おう。さっき休憩中に話してたアプリゲーム、一緒にガチャやって、気に入ったのあったら交換しねぇ? あ、もちろんフレンド申請もしよーぜ!」

 咄嗟の佐山の誘いに、青山は驚きつつも平然を装って合わせた。

「そ、そうね。アンタが良いの引いたら交換してもいいよ」
「うっわ。期待しても無駄みたいな顔すんなよ! これでも神引きの佐山って呼ばれてるくらいなんだぞ!」
「ガチャごときで燃えるなよ……となると、牧野。俺と一緒になるけどいいのか?」
「だ、だだだ大歓迎です!」
「大……?」
「な、何でもないよ! うん、よろしくね! ……これでいいかな、溝口くん」

 顔を真っ赤にした牧野がこっちに振る。この機会を使って凛花と向き合えということだろう。とはいえ、すでに二人組ができている。今更反対する気にもなれず、そっと凛花を見て訊く。

「俺でいいの?」
「溝口くんがいい」
「……わかった。いいよ」

 満面の笑みを浮かべる凛花に、小さく溜息をついた。