「どーしろってゆーんだろう。」
キャラのイメージでガチガチの小6、剱 有価。
親は私にこんな名前を付けておきながら「クズ」と呼んでくるような母親と何考えてんのか分からん胡散臭くて人を丸め込むのが半端じゃなく得意な父親。
両親は私が5歳の時にいつの間にか離婚してた。
何も相談とかなかった。
どっちに引き取られるかとかも。
でもどっちに引き取られるかって私の人生左右するんじゃないの?とか思う。
そんな事を思っていたはずなのに、その権利を与えられた途端どうしたらいいのか分からず恐怖する。
そーゆーとこがダサいんだろうな。ははっ。
乾いた笑いが漏れる。
私は小6の夏休み明けごろから父親の所にいる。
何故かは分からない。
母に突然、父の所に行けと言われて気付けば父の家。
ちょっとして父の家にも慣れてきた頃、母から連絡が来た。
“中学に上がるまでにうちに帰って来ないなら縁切るから”
だってさ。
今まで与えられなかった自分の人生を自分で決める権利が突然与えられると何故か恐怖心に駆られた。
怖くてしょうがなかった。
今だってそうだ。
中学入学までなんてあとちょっと。
そのあとちょっとで決めた事が自分の人生良くしたり狂わせたりする訳じゃん?
それってちょー怖い。
今までは親のゆうこと聞いて親の引いたレール走ってればよかった。
失敗したら親のせいに出来た。
自分の人生に責任が持てないなんて人間として終わってるよね。
でもそれが私なんだ。
そう割り切れれば良いけど、出来ない。
死のうなんて考えた事もあった。
でもそれってその後の周りの迷惑考えてないよね。
悲しんでくれる人はいないかも知れないけど、私が死んで迷惑が降りかかる人はいる。
その事実に責任が持てない。
なさけなっ。
自分の意思で動く事は多少なりできるのに、その責任は背負えません。なんてナッシングでしょ。
無責任さが課題だって分かってる。
責任持てない。なんてゆう私はさっきまで貶してた両親の方がよっぽどマシに思えるくらいダメダメ。
そんな私にできることってあるのかな。
まあ。そんな事考えてる暇ありゃどっち選ぶか決めろってな〜。
自分でも分かってんだよ。
でも逃げてしまう。
いま、色んなものから逃げてる。
逃げてきた分いつか帰ってくるけど、今を凌ぎたい。
それで精一杯。
そんな自分に嫌になる。
でも仕方ない。
最近諦めが付きつつある。
ぼーっと壁を眺めていると、ある物が目に入った。
―――命名…?
その紙は、父の再婚相手、由美さんの妹の娘。要するに由美さんの姪っ子のものだった。
“命名中埜 空”
と力強く書かれた紙を見て全身から力が抜けた。
その人と思わしき人と毎晩テレビ電話をしているのは知っていたがその親しげな様子からは目を背けていた。
父には自分がいなければ他に大切にしたい物がたくさんあるのだと知った。
今日その空ちゃんと、父が電話している時にあだ名とは分かるけど。
「パパ、パパ。」って呼んでるのが耳に入って自分の中で、何かが崩れていく音が響いた。
私を必要としている存在ってやっぱ居なさげだな。
母には「お前のせいで私は可笑しくなった。全部お前のせい。出ていけ。死ね。失せろ。社会のゴミが。」って
別れ際に言われた。
あの瞬間の絶望だけは忘れられない。
信じてきた物が全て蔑ろにされた気分だった。
あれ以来かな。
信じるのが怖くなったのは。
「でも結局は決めなきゃいけないんだよね。」
「やっぱり死にたい。」
「消えて無くなりたい。」
『きゃははは。なにそれえ。』
私を蔑むような笑い声が父と由美さんのいる部屋から響いた。
「どっちも選ばないって選択肢は無いのかな。」
「だって担任にまで『早くどっちにいくのか決めてもらわないと附中に受かっても入学関係の書類が書けないから早めに決めてね。』なんて言われたんだよ。」
惨め過ぎない?
なんか私の人生まるっと馬鹿らしくなってきた。
あっそうそう。附中ってのは国立の附属中って事。小学校は当然附小。附属小学校の略称。
当然、附小に入ったのも親がいい履歴書の子どもを持ちたいから。
ただそれだけ。
公立とほぼ変わらない金額の校納費なのに『良い学校に行った』というマウントが取れるから。
母からすりゃその方がありがたいんだろうね。