「ありがとう」と大きな文字で最後は終わっていた

きっと力を振り絞ったものなんだろうと感じ取ることが出来る

そしてそのノートを男は閉じた

そして男の子は思った

きっと主人公にするためには

願いを叶えるためには

自分だけじゃ無理だと。

そう思った時には行動していた

男の子は匿名で出版社にこのノートと(どうか主人公にしてやってください)とメモ書きを残して送った

それが本当に主人公になんてなるか分からない

けれどいつかなる気がしていた

俺だけじゃなくて色んな人が主人公にしてくれるだろう

()から君のいる世界()


_______それから1年がたった

本屋の前に男女の高校生のカップルが現れる

見つめる視線の奥には「主人公になれなかった私」と書かれた本があった

「ねぇこれって」と女の子が一言

「うん、これは…」と男の子は本を手に取った

そして2人で涙をながした

(るな)亡くなった日(消えた日)、主人公になったんだな」

と一言、言いながら2人で笑い合った

女の子の手にはお墓に添えるであろう花が持たれていた

男の子の手にはその本を持っていて

2人は手を繋いで誰かの一周忌に向かった




「月が消えた日、主人公になった君」 Fin.