避難場所の檜町公園

遥達は孤独な青年が避難しているテントの中に入り、彼の話を聞くことにした。

青年「お前達がいるだけで、本当に嬉しかった。
   ずっと一人だったから寂しかったよ。」
遥「本当に1人だったんですか?」
青年「ああ・・・十数年以上も前からな。」

遥達はざわついた。

遼真「じゅ、十数年以上も⁉」
青年「ああ、俺が小学生の頃に、両親が交通事故で亡くなってしまって、
   家を転々としながら暮らしていたから、
   誰も信じられないまま成長しちまったんだ。」

未夢は涙ながらに問答した。

未夢「は?なんで⁉どうして親戚に引き取らなかったんだよ‼」

青年はそれに答えた。

青年「いや・・・ジジイもババアも病気を患ってて、
   他の親戚も自分の子のこともあったんだよ。」
木村「そうか、それは大変だったな。でも安心しろ!
   俺達は決して怪しいもんじゃないから
   これからの人生を俺達で歩んでいこう!そういえば君、名前は?」
掛「道野掛(みちのかける)。」

掛は身分証明書を木村に見せる。

木村「お前、長野から来たのか!」
遼真「年はいくつ?」
掛「29(歳)だ。」
未夢「ふーん、あんたももうすぐ三十路なんだな。」
遥「あっ、そう言えば、自己紹介まだでしたね!
  私、姉弟で巣鴨から避難してきました
  平井 遥って言います。中学2年生です。」
  遥はその仲間を紹介した。

遥「こっちは弟の遼真です。小学3年生で大のゲーム好きで
  よく友人とよく遊んでいます!
  
  そっちはこの前から避難先の国立競技場で知り合った目黒南高校2年の
  武沢 未夢さん。とても遊び盛りで見た目はちょいワルですけど、
  助け合いや人づかいには気が優しいんです!
  
  そしてこの人は遼真のクラスの担任をしている木村 壮一 先生です。
  特に全クラスの体育の授業やっているので」
掛「そうか・・・お前らがいるだけで本当に幸せだよ。」
木村「君は長野生まれだから、いつから東京にいるんだ?」
掛「ああ、俺は何年もここにいるよ。
  両親が亡くなって以降、俺は地元に帰ることなく
  居場所を探しながらあてもなく彷徨い
  長野から山梨、埼玉、千葉、東京へと流れていったんだ。
  小学生から高校生まで友達すらも出来なかったんだ。
  誰も俺を頼ってくれる人なんかいなかったんだ。
  高校を卒業してフリーターになった俺は上京し、ここに来てからは
  アルバイトを転々としながら生計を立てていた。
  しかし最近なってからはバイトをやめて、仕事も見つからなくなり、
  ゴミ箱に捨てられていた古新聞や雑誌を売っての
  生活をするようになったんだ。
  けど、今になって俺の運命を大きく変えることになったんだ!」
遥「え?その運命ですか?」
未夢「それって何の事だ?」
掛「ああ、それはこの大地震が起きた後、俺は小さな命を救ったんだ。」
遼真「小さな命って?なんの事?」
掛「ああ、それはな・・・。」