中村の車の中
東京の街は巨大地震によって荒れ果てていた。
中村「それにしても酷いなぁ。
まさかあの大地震であんな風になるとはな。」
遥「はい、私も知りませんでした!」
中村「くそっ!車が渋滞してやがる!ここで曲がらなきゃ!」
中村の車は渋滞している道を通り抜け、空いている道を走った。
中村「そう言えば遥ちゃんは大阪万博へ行く予定だったよな?」
遥「はい!明日から行く予定でした!
地蔵通り商店街で買い物から帰る途中に
物凄く大きな地震が発生しました!
それで、チケットの払い戻しとかは?」
中村「いや、それは後回しだ!
状況が落ち着いたら払い戻しできるみたいだ!
とにかく行き着くところまで行こう!」
その後、遥はあるとこにたどり着くと
中村「よし、ここだ!」
遥が案内された場所は4年前の東京オリンピックで使われていた
国立競技場だった。
遥「ここは、国立競技場?」
中村「ああ、そうだ!4年前に東京オリンピックの
メイン会場として使われていたんだ!
俺の友人がアスリートのマネジメントをしていたんだ!
耐震化工事もしてるから今は避難所としても使われているんだ!
幸いにも大した被害は出なかったから、今なら出入りできるみたいだ!」
遥は国立競技場が避難所として使われていることを知った。
遥「確かにここなら広くて密になりにくいから大丈夫!」
そして遥は、その競技場の中に入った。
国立競技場内部
競技場のグラウンドの中に入った遥は
偶然友達とゲームをしている遼真を偶然見かけた。
遼真「あれ?お姉ちゃん?」
そして遥は嬉しそうに
遥「遼真ー‼」
遼真と再会して嬉し泣きして遼真を抱いた。
遥「良かった・・・無事だったんだね!」
遼真「あぁお姉ちゃん。僕、その時広い公園で友達と
ホームサーキットをしてたんだよ。そして、大きな地震が起きた後に
ゆうとくんのパパに、車でこの競技場に連れてってもらったんだよ。」
実は遼真は遥よりも先に国立競技場に
友達と一緒に入って避難していたのだった。
ゆうと「ハルお姉ちゃん、遼真くんの事を探してたんだね!」
まさる「良かったな!遼真‼」
遼真の友達は遼真の姉の再会に励んだ。
遥は嬉しそうに涙ながらにこう言った。
遥「あと・・・二人とも無事だったんだね。
お姉ちゃん嬉しくて涙出ちゃったかも・・・。」
遼真「じゃあ、僕はお姉ちゃんと一緒にテントに入ってるからね!」
そして遥と遼真は避難所のテントに入っていった。
競技場グラウンドのテントの中
配給でもらったのはおにぎりとカップ麺とペットボトル緑茶だけだった。
遼真「お茶とおにぎりとカップ麺だけか・・・
これだけで足りるかな?」
遥「うーんここに来た時、それだけしかもらってないし・・・」
そして、食糧の事で困っていた2人の前に
スカジャンとジーンズ姿の女子高生が突然、テントの中に押し掛けてきた。
シャッ!
女子高生「よっ!こんばんは!」
遥と遼真はそれに驚いて腰を抜かした。
遥・遼真「うわっ‼」
女子高生「親がいなくて寂しいだろ?ハハハ!心配いらないよ!
なんならアタシも仲間に入れてやるよ!
じゃ!お邪魔するぞ!」
彼女は鞄を開き、食料を差し出した。
女子高生「ほ~ら、この食糧、大量に持ってきたんだ!
一緒に食べようぜ!」
彼女の食糧は物凄く大量に備蓄していた。
遥・遼真「はい、いただきます・・・。」
そして3人は食事をしながら会話を始めた。
未夢「じゃあ、さっそく自己紹介するぞ。
アタシの名は武沢未夢。
目黒南高校に通う高校2年生だ!
ところであんたらは名前なんて言うんだ?」
遥「あっ私、巣鴨から来た巣鴨中学校に通う
平井 遥っていいます!中学2年生です!
そっちは弟の遼真です。小学3年生です。」
未夢「へぇ~、あんたらは巣鴨から来たのか結構大変だっただろうな。」
遥「そうだ未夢さん!ちょっと私から見てもらいたいものがあります!」
遥は持参していた大阪万博のガイドブックを未夢に見せてもらう。
未夢「あっ、これって今年やってる大阪万博か?」
遥「はいそうなんです!明日家族みんなで行く予定でした。
でも今日発生した巨大地震で行けなくなってしまって・・・」
未夢「あ~それは残念だったな。
ウチじゃそんな無駄遣いできないからな。」
未夢は大阪万博のガイドブックの表紙の中央の女の子に指をさした。
未夢「じゃあこいつは誰だ?」
遥「あっ、この人は関西府の“縞野雷花さん”と言う
大阪府のおかん娘アイドルです!」
未夢「なるほど!遥は大阪のアイドルにも詳しいんだな!」
未夢「あっ、そうだ!アタシ、ポータブルテレビ持ってきてたんだ!」
未夢はポータブルテレビを鞄から出した。
未夢「ほら!このポータブルテレビ、充電したてで長持ちするんだ!」
そしてポータブルテレビの電源を付けると、
巨大地震に関する臨時ニュースが流れていた。
キャスター「今日午後4時46分頃、関東地方で最大震度7を観測する
非常に強い地震が発生しました。
気象庁によりますと、この地震で
震源の深さは10㎞。震源地は飯田橋断層。
地震の規模を示すマグニチュードは8.8と推定されています。」
遥「マグニチュード8.8⁉」
ポイント④ 首都直下地震の基本想定はM7クラスであるが、
震源や深さ、震源地、地震の規模、周期によっては
M8クラスを上回る場合もある。
マグニチュードが大きければ、広域になるケースも出ている。
キャスター「東京23区、東京多摩東部で震度7。
東京多摩西部、千葉県北西部、山梨県全域、
埼玉県南部、埼玉県秩父地方、静岡県北東部、
神奈川県東部、千葉県南西部で震度6強。
埼玉県北部、千葉県南東部、千葉県北東部、
千葉県南部、神奈川県西部、長野県南部、
静岡県南西部、栃木県南部、 茨城県南部、群馬県東部
愛知県東部、岐阜県東部、伊豆地方、三宅島、
神津島、伊豆大島で震度6弱。
群馬県西部、栃木県北部、茨城県北部、福島県南部、
長野県北部、新潟県西部、静岡県西部、岐阜県南部、
三重県東部で震度5強。」
遼真「凄い事になってる・・・。」
未夢「ああ、それは当たり前だ。
これからはもっと酷くなるかもしれないな。」
遥「そ、そんな・・・。」
遼真「こんな事って・・・?」
するとテントの中で揺れを感じた。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥「えっ?今の地震は?」
未夢「あれは余震だ。今の地震は小さいけど、
大きいのも来るみたいだな。」
遼真「えぇ・・・。大阪万博はどうなってるかな?」
未夢「さあな。」
そして3人が話してるうちに、国立競技場は夜更けを迎える。
朝の国立競技場。
早く起きた遥はテントを出ると
一人の係員を偶然見かける。
遥「おはようございます。係員さん。」
係員「ああ、おはよ。もうすぐ食料が届くからね。」
そして、グラウンドの様子を確認すると避難者達が
ランニングや筋力トレーニングをして体を動かしていた。
遥「みんな頑張って運動してるみたい!」
それに感激した遥は気になることを思い出した。
遥「あっ、そうだ!遼真と未夢さんを起こさないと!」
そして遥は先程の自分達のテントに戻り、遼真と未夢を起こした。
遥「未夢さん、起きてください‼ほら遼真も‼」
遼真と未夢は遥に起こされて、目が覚めた。
遼真「おはよう・・・お姉ちゃん。」
未夢「もうなんなんだよ朝っぱから・・・。」
遥は2人に運動するように促した。
遥「朝からみんなグラウンドで運動してるよ!
ねぇランニングとか筋トレとか体操とかしないの?」
未夢「は・・・運動?こんな時にランニングとかふざけんなよ・・・!
アタシらはまだ眠ぃしよ・・・!こんな大変な時によ・・・!」
遼真「僕達は避難生活してるんだからゆっくり寝てたいよぉ。
ここへ来たのに何考えてるの・・・?」
眠そうで運動する気にはなれなかった2人に遥は呆れてしまった。
遥「全く2人とも本当にだらしないんだから~‼」
すると、配給から争う声が聞こえた。
避難者「コラ!勝手に列を割り込むな!」
その声を聞いた遥は・・・
遥「配給の方から何かあるみたい!私、ちょっと様子を見てくるね!」
配給の様子を見に、遥はテントから出て行った。
配給の方では避難者が食料の事で言い争っていた。
不良若者「オレは昨日晩飯すら食ってなかったんだぞ!
オレに食わせろや!」
避難者「なんで早くここに来なかったんだ!
もっと早く避難しないお前が悪いんだ!」
不良若者「オレァもう腹ペコなんだオンドリャー!」
避難者「いや、お前の分のちゃんとあるんだから!」
遥はその喧嘩を止めにやってきた。
遥「二人ともやめてください!!」
遥は避難者を説得した。
遥「皆の物は皆で食べる物!独り占めなんかしたら皆が悲しむだけだよ!」
そして未夢も説得に加わり
未夢「遥の言う通り!食料の独り占めは窃盗と同じさ!
まだ警察も到着してないからその言い争いはやめろよ!」
説得中に突然、雨が降り始めた。
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
未夢「ん?」
遥「雨?」
雨はいつにも増して強くなり、消防士が現れた。
消防士「危険です!皆さんここから出てってください!」
避難者は消防士の話を聞いた。
消防士「この雨は酸性雨と言って、昨日の地震で倒壊した
建物や火災旋風の煤によってできた雨で
最悪の場合、健康被害を受ける場合があります!
速やかに行動をお願いします!」
国立競技場の入り口手前には
複数の車が駐車していた。
避難を促された人々は次々車に乗り込み分散移動し、
遥達も、国立競技場を後にし、
駐車しているオフロード車に乗り込んだ。
未夢「私と平井姉弟の3人です!」
男性「分かった!」
その雨は更に強くなる中、遥達は
オフロード車で行き着く場所まで向かった。
車の中
未夢「あの、私達をどこへ連れて行けばいいですか?」
男性「日本武道館だ!ここなら頑丈で安全だから。」
東京の街はどこもかしこも荒れ果てていた。
遼真「どの場所も酷いことになってる・・・。」
遥「今までと全然違う・・・。」
男性「たしかにそうだな。
東京は巨大地震で壊滅的な被害を受けてるからな。」
そう話してるうちに、日本武道館に到着した。
日本武道館
遥「ありがとうございました。」
3人は車を降りて、日本武道館に入った。
未夢「この避難所に入所する武沢未夢と平井姉弟です!」
名簿係「はい、こちらに名簿を記入してください。」
未夢は武道館の中へ誘導した
未夢「よし、こっちだ!」
遥達は武道館内部に入った。
遥「え、ここって、武道館内部⁉」
未夢「ああそうだ。本来ならプロレスや
ライブ会場等に使われているけど、
今は避難所として使われているからな。」
しかし、遼真は感激していた。
遼真「僕、武道館に一度泊まってみたかったんだ!」
遥・未夢「りょ・・・遼真・・・?」
未夢は係員に空きのスペースを尋ねた。
未夢「あの、空きスペースありますか?」
係員「ああ、空きスペースならたくさんあるよ。」
未夢「ありがとうございます!」
遥達が空きスペースを探していると未夢の後輩を偶然見かけた。
未夢「清子‼ここにいたんだ!」
清子「あっ!未夢先輩!」
遥「え?じゃあもしかして、未夢さんの後輩?」
未夢「ああ、そうだ!私の1つ下の後輩の
南川清子って言ってな。
親友である礼奈がアメリカに旅行に行っていて、
昨日の大地震で日本に帰れなくなったんだ。」
ポイント⑤ 海外旅行中に母国で巨大地震が発生すると
帰国できなくなる場合がある。
未夢「無事だったか?アタシがいたからにはもう大丈夫だ!
ほら、これでも食え!」
未夢は清子に食料を渡した。
清子「ありがとうございます!未夢先輩!」
その夜・・・遥と遼真が未夢のポータブルテレビを観ていると
東京駅前には帰宅困難者が大勢いた。
キャスター「東京駅前の様子です。多くの帰宅困難者に埋め尽くされ、
車が渋滞しているようです。」
遼真「交差点が帰宅困難者で人の海になってる。」
遥「これじゃ車も通れないよ!」
未夢「あんた達、そんなの観て、つまんないだろ?」
遥・遼真「え?」
未夢はビデオプレーヤーとアニメ映画のDVDを自分の鞄から取り出した。
未夢「じゃあ、アタシと一緒に映画でも観ながらゆっくり楽しもうぜ!」
そして、遥達はアニメ映画のDVDを観ることにした。
DVDの映像
崖を登る花梨だが、滑り落ちるのが怖くて泣きわめている
花梨「ふぇぇぇぇぇんやっぱり怖いよぉ~!」
すると崖の頂上にいる桃衣が花梨に手を伸ばす
桃衣「花梨、私の手に捕まれ!」
そのDVDを鑑賞する遥達
遥「未夢さん、この映画は?」
未夢「“西の飛脚”って言ってな。これの劇場版で、
壮大な冒険をしながら荷物を届けるって言う物語だ。
アタシ、このアニメめっちゃ大好きで、
全シリーズ全話録画してるし
原作単行本も全巻集めてるからな。
ちなみにこの映画のDVD、この前通販で購入したんだ!」
未夢は遥と遼真にオレンジジュースを差し出した。
未夢「ほら、2人とも、ジュースだぞ!一緒に飲んで映画を楽しもうぜ!」
遥・遼真「ありがとうございます!」
そして遥達は、日本武道館で楽しい夜を過ごしたのであった。
あの巨大地震から数日が経過した。
関東地方で発生した令和史上最悪の大震災で、
死者6万4000人、避難者数2700万人、帰宅困難者1000万人を超えてしまい、
経済損失も以前よりも大幅に増していた。
住宅街の火災旋風により、首都圏は日傘効果状態となり、
雨が降れば、酸性雨になることもある。
関東は未だ、復興の見通しは立っていない。
日本武道館
ある日、遥は部活で作った手芸作品を未夢に見せてもらった。
遥「未夢さん、これ全部私の部活で作ったんです。」
未夢「うっはー!すげーな!遥ってこんな物も作れるんだ!」
偶然通りかかった女性も感激していた。
女性「あら、あなたお上手ね。」
遥「あ、実は私、中学で手芸部をやっているんです!
これらの物は全部、巣鴨のお祭りや即売会で販売しています!」
女性「まぁ~あなたって本当に天才よね!」
すると突然、武道館内部で揺れを感じた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
女性「あら?」
すると、内部で強い余震が発生した。
ゴオオオオオオオオオオオオ
武道館内部では避難者の悲鳴が響いた。
避難者「ウワアアアアアアアア‼」
避難者「キャアアアアアアアア‼」
未夢「皆‼体を伏せろ‼」
すると未夢のポータブルテレビから速報が流れてきた。
キャスター「今、新しい情報です!
東京タワーが強い揺れによって倒れていきます!」
遼真「見て!東京タワーが!」
3人が東京タワーの状況を見ると
未夢「あっ!」
すると東京タワーが崩れ倒れて、その周りにいた人達の悲鳴が響き、
テレビの映像
周囲の人々「ワアアアアアアア‼」
ガチャーン!
ハトがたくさん飛んでいった。
そして、揺れが収まった後————
その映像観た未夢は騒然した。
未夢「これは・・・大変な事になってる‼」
そんな未夢は、遥と遼真を連れて東京タワーの様子を見に行くことにした。
未夢「アンタ達そろそろ行くぞ!東京タワーがまずいことになってる!」
遥・遼真「うん!」
3人は日本武道館を飛び出して行ってしまった。
係員「あっ‼君達!待ちなさい!」
ポイント⑥ 東京タワー等が倒壊しても様子を見に行かないように!
そして、遼真は同じく武道館に避難していた
小学校のクラスの担任である木村壮一先生に
東京タワーの様子を見てもらうように頼んだ。
遼真「木村先生!東京タワーが大変なことになってるから、
僕達、その様子を見に行きたいんだ!」
木村「遼真!お前もここに避難してたのか!
それで、お父さんとお母さんは?」
遼真「地震起きた時広い公園にいて
友達と一緒に競技場に避難したから
どこにいるかはわからない!でも僕には
お姉ちゃんと未夢姉ちゃんがいるから!」
木村「わかった!東京タワーの方か!
ちょっとだけ様子を見るだけならいいぞ!」
そして3人は武道館を離れ、木村のバンに乗り、
倒壊した東京タワーに向かった。
皇居の前の通りもボロボロになっていた。
未夢「あの、東京タワーまでどれくらいかかりますか?」
木村「まぁ行ってみないとわからない!とにかく東京タワーに向かおう!」
そして遥達は、バンで倒壊していた街を通り、
倒壊した東京タワーに向かった。