それはとてもとても小さな扱いで、あたしは学校に来るまで、本当に全く知らなかった。

「もも、今日のニュース見た?」

「へ?」

 そんなもん、見てるわけない。

ケーキ屋さんである我が家は朝早くから仕込みに追われていて、大きくなってからのあたしは、ずっと独りで好きなネット動画を見ながら朝ご飯食べてる。

「なにが?」

「そんなことだろうと思ってた」

 いっちーはスマホでニュースサイトを開く。

さーちゃんとキジも来ていた。桃たちもだ。

見せられたそのニュースサイトヘッドラインには『鬼退治優遇政策 条例廃止が決定』の文字が浮かぶ。

「は? なにコレ!」

 あたしはそれを奪いとった。

【政府は時代にそぐわなくなったとして、鬼退治関連法の廃止に関する法律の制定を決定した。これによって、各自治体における当該条例の廃止及び、改定を検討するよう求めており、400年続いた我が国の鬼退治の歴史に終止符が打たれることになる。今後も国として鬼に対する監視と警戒を続け、平和で安全な社会の形成に邁進していくと伝えている。軽減される予算の使い道として、地域安全対策費として使われる予定だと説明した】

「ちょ、待って。どういうこと?」

 血の気が引くというのを、あたしは生まれて初めて体験した。

浦島はため息をつく。

「もう十年以上も前に協会は解散している。この事態は予見出来た」

 金太郎は腰の刀に手を置くと、その柄に手を滑らせる。

「ついにこいつともお別れか。短い間だったけど、俺が最後の持ち主になるとは思わなかったな」

 そうやってすました顔で別れを惜しんでいる。

は? コイツらは何を言ってるんだ? 

「鬼退治用の刀所持登録者に、警察から返納の知らせが届いてるんだ。期限内なら返納手続きが簡素化されるっぽいし……」

 桃までもが、そんなことを言っている。

「返しに行くの?」

 3人は申し合わせたように顔を合わせた。

「うん」

「返さなかったら、どうなるの?」

「別にどうにもならないけどね。普通の日本刀と同じ扱いになって、警察の管轄からは外れる。鬼退治のは色々と制限があって面倒くさかったから、ちょうどいいのかも」

「普段から持ち歩く分、制限が多かったからな」

 浦島は刀を腰から外した。

「今日の放課後には、そろって提出しにいくつもりだ」

「今日? そんなに早く?」

 チャイムが鳴った。

あたしはまだ上手く息も出来ないのに、自分以外の他の人たちは全然平気みたいで普通に動いている。

「もも、もう行かないと。授業が始まっちゃうよ」

 いっちーは校舎を振り返る。

あたしはまだ立ち上がれない。

「え? いっちーは、それでいいの?」

 彼女はその凜々しい顔立ちで、うずくまるあたしを見下ろした。

「……。私が決められることじゃないから」

 いっちーの髪からは、いつもと同じいい匂いがする。

「もも、とりあえず教室に行こう」

 さーちゃんが手をとり、引き上げてくれた。

キジも寄り添ってくれる。

あたしは先を歩くいっちーの、揺れる長い髪に歯をくいしばる。

「いっちー! あの……!」

「もも。それは言っちゃダメ」

 二人はあたしを止めた。

「いっちーも誰も、悪くないよ」

 さーちゃんの肩まで伸ばした髪が、あたしの鼻先をくすぐる。

キジは横顔まで落ち着き払っていた。

いっちーのミルクティー色の髪は、一瞬あたしを振り返っただけで、そのまま行ってしまう。

昼休みには当然のように、細木はあたしを呼び出した。

「鬼退治部の廃部が決まった」

 淡々と話すその頭を、あたしはじっと見下ろしている。

細木は机の上でまとめた廃部のための書類を、あたしに突き出した。

からかい半分で冗談みたいに、バカにして笑いながらうれしそうに上から言ってくるのかと思っていたのに、これじゃこっちの調子が狂う。

「これからどうするのかは、お前が決めろ」

 あたしはただ細木を見下ろす。

ずっと黙っていたら、ようやくこっちを見上げた。

「ん? どうした。ほら、さっさと受け取れ」

 乱暴に差し出されたそれを、ひったくるようにバサリとつかみ取った。

細木はため息をつく。

「俺が口出しするのは、お前は気に入らないんだろう?」

「廃部になってよかったですね」

「お前がそんなことを言うんだ」

「うれしいのはあんたでしょ」

「……。あぁ、そうだったな」

 細木はあたしには知らんぷりで、集められた何かの予定表の細長い紙切れを目の前で整理している。

「なんか言うことないの」

「あるわけねぇだろ。用がないなら、さっさと出て行け」

 そうだ。

間違えちゃいけない。

あたしのいるべきところは、ここじゃない。

細木に背を向け、職員室を出る。

そこまでが限界だった。
「うっ……」

 渡された書類で、誰にも見られないよう顔を隠す。

それでもどうしても声を抑えることが出来なくて、その場にしゃがみ込んだ。

 だって、どうしようもないじゃない。

腰のこん棒を見て、クスクス笑う連中がいる。

この校内でだ。

どうして? 泣いてる場合なんかじゃないのに。

 あたしは立ち上がると、張り出してあった新入部員勧誘のポスターを引き剥がした。

金太郎の作ったポスターはとてもよく出来ていて、一緒に並ぶ他のどのポスターよりもカッコよくて、とてもよく人の目を引いていた。

部活アカウントの更新は、閲覧は出来るけど、もう止められている。

更新が出来ない。

まだまだ撮りだめした画像があったはずなのに、それがこのタイムラインに載せられることも、もうない。

あれだけ苦労して勝ち取った演武場の使用許可は、知らないあいだに取り消され、利用希望部に対する抽選会の開催予定が、ネット掲示板に表示されていた。

「なんでこんなこと……」

 昼休みの廊下は人通りも多くて、あたしに声をかけてくる人は誰もいなくって、ここでどれだけ叫んだり暴れたりしたって、もう何にも変えることは出来ないし、変わらない。

「こんなところでうずくまってちゃ、邪魔よ。どきなさい」

 ため息と共に、そんな声が聞こえてくる。

見上げると堀川が立っていた。

いつも弾け飛びそうなパツパツのシャツを着て、ムチムチのミニスカートで闊歩していた堀川が、パンツスタイルのまともで普通な格好をしている。

「なんで無駄にエロい服やめたの?」

「やっぱあんたたちも、そんな目で見てたんだ」

 堀川はボリボリと頭を掻く。

あたしと同じ目線にしゃがみ込んだ。

「いやー。女子校ってさ、女の子ばっかで、いいところも多いけど、逆におかしいとかヘンだってとか、そういうのも、誰もなんにも言わないじゃない? 私は家にある、着られる服を着てただけだったんだよね。買いに行くのも面倒くさかったから」

 堀川の顔は、ちょっぴり赤くなっていた。

「でもさぁ、さすがに服がキツくなってきて、動きにくいもんだから、思い切って全部買い換えたんだよね。そしたらまぁ、びっくりするほど動きが楽で楽で」

 堀川は泣いているあたしをじっと見た。

「自分の着てた服、ぶっちゃけ高校、大学時代から変わってなかったんだよね。太ってないしまだ着られるし。もったいないとか思ってたけど、やっぱ体型変わってたわ」

 あたしは鼻水をすすり、頬に流れる涙をぬぐった。

その堀川の胸には、この学校で唯一変わらなかった校章の、その教員バッチがついている。

「先生が最後の部長だったって、本当?」

「そうですよ。かわいい後輩ちゃん」

 堀川は立ち上がった。

体型が変わったとか言ってるけど、そのスラリとしたパンツスーツと、ぴったりしたシャツはとてもよく似合う。

「『堀川先生って、ああいう格好が好きでやってるのかと思ってました』って、言われたわ」

「……。誰に?」

「内緒」

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。

「あんたも早く、教室戻りなさい。これからどうするのか、自分でちゃんと考えるのよ」

 そんなこと言われたら、せっかく泣き止んでたのに、また泣きそうになる。

そうやってあたしが一日中グズグズしている間に、すぐ放課後になってしまった。

今日は鬼退治部の今後についてどうするのかっていう、大事な話をしなくちゃいけないってのに、桃たちは刀の返納に行くと言う。
「早いうちに終わらせたいから。さっさと気持ち切り替えたいし」

 桃は笑顔で手を振った。

「すぐにすむと思う。戻ってきたら、ちゃんと手伝うから」

 彼の視線はいっちーを見ていた。

「遅くなるようなら、連絡する」

 すぐに教室を出て行こうとする桃に、あたしは言った。

「別に、他に用事とかあるんだったら、わざわざ帰ってこなくても大丈夫だよ。後は自分でなんとかするし。分かんないことがあったら、はーちゃんとかしーちゃんにも聞けるから」

 桃たちはあたしを見下ろした。

「そう?」

「うん。ゆっくりしておいでよ。どうせ今すぐどうこうってもんでもないし……」

 桃はもう一度いっちーを見る。

彼女はうなずいた。

「じゃ、そうさせてもらおうかな」

「お疲れさま」

 あたしはそんな桃たちに、笑ってみせる。

「また明日ね」

 彼らが教室を出て、開け放されたままの扉の向こうに見えなくなった。

放課後の教室はいつもの賑やかさを保っていて、世界はとてつもなく平和だ。

「さてと」

 そう言って振り返る。

そんなことでも声に出して言わないと、あたしには振り返ることすら出来ない。

さっき桃たちに言ったのと同じセリフを、また言わなくちゃならない。

「あのさぁ、みんなも、何か他に用事とかあるんだったら……」

「なに言ってんの」

 くしゃくしゃに伸びた髪の一部を、頭のてっぺんでちょこんと結んでいる。

さーちゃんだ。

「全く。スタート前から巻き込まれて、後始末までやらされてるこっちの身にもなってよね」

「やっぱ面倒くさいと思ってんじゃん!」

「そりゃそうでしょ」

 涙目のあたしに、さーちゃんは結んだ頭をポリポリと掻く。

「だからこそ、ちゃんと落とし前はつけないとね。一緒にさ。ももは自分だけで勝手に終わらせるつもりだったの? 巻き込んどいて」

 いっちーはあたしの前に座った。

「ねぇ、もも」

 彼女はじっとあたしの顔をのぞき込む。

右手を差し出した。

「握手しよう。私はももに誤解されたままで、このまま嫌われたくない」

「嫌ってない、嫌ってなんかないよ!」

 すぐにそう叫ぶ。

すぐにそう叫ぶことは出来ても、だけど、素直にその手は握れない。

「違うの……。本当は、ちょっとさみしくなっただけ……」

「うん。私もだよ、もも」

 その、まっすぐにあたしに伸ばされる手は、いっちー自身の手であって、あたしの手ではない。

そんな当たり前のことにまで、ヘンな違和感があって困る。

 仲間なんかいらない! 

……なんて、1ミリも思ったことはないと言えば、嘘になる。

だけど結局は、戦うのは自分自身だから、何かに期待なんてしちゃいけないんだ。

自分のことは自分でする。

当たり前にそうしなきゃいけない。

そんな当然の事実に、あたしはただきっと、ちょっぴり寂しくなっただけ。

 なかなかつなごうとはしないあたしに、いっちーの手はだらりと垂れ下がる。

元の位置に戻った。

「で、どうするの」

 机に座るさーちゃんは、そこで片膝を立てた。

盛大なため息を漏らす。

「この書類見せてもらったけど、廃部はさけられないよね」

 キジもため息をつく。

「『鬼退治』という行為自体が、この世から消滅するんだもん」

「やっぱり、廃部しかないってこと?」

 いっちーは何も言わないまま、細木から渡された書類に視線を落とした。

握れなかった彼女の手が、涙でにじむ。

「ねぇ、あたしはやっぱり、ダメな人間なのかな。何をやっても上手く出来ない、何にもならない、くだらなくて、面倒くさいだけの奴なのかな」

 どれだけ頑張ったところで出来ることは何にもなくて、色んな人に迷惑かけて、何にもならないのだったら、そんなの最初から何もしない方がよかった。

「……。そんなこと、肝心のももが言わないでよ」

 さーちゃんがうつむいている。

「だって、本当のことだし」

「じゃあなんで、鬼退治なんて始めようと思ったの」

「それは……。それは、あたしはただ、自分が……」

 自分が、負けていると思いたくなかったから。

もう終わった人間なんだって、自分はお終いなんだって、自分で自分をそう思いたくなかった。

「ももまでそんなこと言い出したら、これから誰が鬼退治するの?」

 さーちゃんは自分の両膝を抱えると、そこに顔を埋めた。

「どうにもならなくて、何にもならなくて。どうにかしたくても、それでも何にも出来なくて、だけどなにかしなくちゃって、自分はこのままじゃいられないって、そうだからじゃないの?」

 さーちゃんの顔が、スカートの膝に埋もれて半分しか見えない。

「そんなふうに思うのは、みんな同じだから……」

「大丈夫よ、もも」

 いっちーの額が、ふいにあたしの額に合わさった。

「最初に約束したじゃない。何もかも全部、鬼退治のためのことだって、お互いに信じるんだって」

 いっちーの髪からは、相変わらずいい匂いがする。

「私はずっと、そうだと思ってたよ」

「そうだよ。そう思ってるのは、ももだけじゃないんだから」

 キジがあたしの隣に座った。

「私はももが、好きだから。大丈夫、まだなんにも終わってないよ」

 あたしは……。

あたしの傷が、鬼につけられたこの腕の傷がうずくから。

その痛みに負けそうで、だけどもうとっくに負けてることに気づいて、だけどずっとそれを認めたくなくて……。

「ご……、ゴメなさい……」

「なんでももが謝るの?」

 泣きだしたあたしに、さーちゃんは笑った。

「まだ負けてないし」

 彼女の笑顔が肩にのる。

「ももは自分で負けたとか思ってるかもしれないけど、私はまだ、ももは負けてるなんて思ってないよ」

「そうなのかな?」

「そうだよ」

 見上げたさーちゃんの顔は笑っていたけど、その笑顔の裏に不安があることを、あたしはなんとなく知っている。

あたしだっていつだって笑ってるけど、本当はずっと不安で自信なんてなくて、ずっとずっと怖かった。

「ねぇ、あのさぁ……」

 突然の悲鳴。

校庭の方からだ。

その鼓膜を切り裂くような叫びに、あたしたちは顔を見合わせた。

飛びついた窓から身を乗り出す。
 視界に入ったその光景に、息を飲んだ。

舞い上がる砂埃と駆け出す悲鳴。

毛むくじゃらの足と太い腕、鱗で覆われたような体に、短い二本の角が生えている。

守られていたはずの校内に、その姿はあった。

3メートルはあるだろうその高さから腕を振るうと、天に向かって雄叫びを上げた。

「……鬼だ」

「行こう」

 教室を飛び出す。

非常ベルは鳴り響き、避難指示のアナウンスが流れる。

あたしは腰のこん棒を抜いた。

 飛び込んだ校庭の空気が震えている。

まとう瘴気で息が苦しい。

こん棒を握る手に、汗が滲んだ。

「どっから来たのよ。今すぐ出て行きなさい!」

 言葉なんて通じるはずもないのに、鬼はあたしを見てニヤリと笑った。

振り下ろされた腕に飛び退く。

鋭く尖った爪は空気を切り裂き、その風圧で倒されまいと、足を踏ん張っているだけでやっとだ。

「どこを狙う? 弱点とかあったっけ」

 そう言ったさーちゃんの方に、鬼の顔は向いた。

「そんなのはない!」

 背を向けた鬼に、いっちーはこん棒を振り下ろした。

それが背に打ち付けられる前に、鬼の手はこん棒をつかむ。

「危ない!」

 キジが踏み込んだ。

鬼の腕にこん棒を叩きつける。

振り返った鬼は、キジに拳を打ち落とした。

あたしはその腹に向かって思いっきりこん棒を打ち込む。

鬼の動きが止まった。

「もも、ナイス!」

 さーちゃんが高く飛び上がった。

鬼の肩に会心の一撃。

鬼の叫びが校庭にとどろく。

「気をつけて!」

 動きが変わった。

雄叫びと共に、瘴気が強く沸き立つ。

振り下ろす腕の動きが格段に速くなった。

うなり声は地面に響く。

その風圧だけで吹き飛ばされる。

握りしめた拳が、あたしの頭上に振り下ろされた。

「もも!」

 真横に構えたこん棒で、それを受け止めたのは堀川だった。

「あんたたち、本当にまともな訓練してた?」

 ギリギリと押しつけられるそれに、今にもこん棒は折れそうにしなる。

「小田先生考案の瑶林高校鬼退治部、必勝フォーメーションがあったでしょ」

 堀川の目は、あたしを見下ろした。

「まさか知らないの?」

 堀川が鬼を蹴飛ばす。

あたしは立ち上がった。

「ラッキーイチゴフォーメーション!」

 その声に、いっちーとさーちゃん、キジが動いた。

「つーか、なんでこんなクソダサい名前なんだよ」

 堀川はその菱形になった体系に、満足したように口の端を持ち上げる。

「あら、分かってるじゃない」

 そのこん棒を一振りする。

「小田っち、かわいいのが好きなんだよ」

 取り囲んだあたしたちを、鬼は見回している。

背を向けた瞬間、堀川は叩きつけた。

「それはあたしの役!」

「あはは、じゃあ私より先に動きなさい!」

 ラッキーイチゴフォーメーションとは、イチゴのヘタ部分に当たる人間をリーダーとして動く。

菱形でヘタでイチゴとか、そんな細かいことは気にしない。

「あたしと先生はチェリーで。3人はあたしに合わせてイチゴ続行!」

 堀川と鬼の動きに合わせて、交互に打ち込む。

チェリーとは二人組のコンビネーションのこと。

イチゴの菱形は鬼を中央にして、近距離からの攻撃と、それをサポートする後衛とに分かれた攻撃パターン。

鬼退治の基本は、仕留めることより自分たちが傷つかず撃退させること。

二人組で巡回するから、ペアでの攻撃が基本だ。

 鬼はキジを振り返った。

振り下ろされた拳は地面にめり込む。

その衝撃に、キジの態勢が崩れた。

「キジ!」

 鬼の足が踏みつける。

飛び込んだのは金太郎だった。

滑り込んだ金太郎は、彼女の持っていたこん棒を掲げる。

それはミシッと嫌な音を立てた。

「離れろ!」

 さーちゃんが鬼の足を下から蹴り上げる。

彼女はこん棒を投げ捨てた。

「ゴメンね。こん棒使い慣れてないから。直接行く」

「それは無謀だ」

 転がったこん棒を拾い上げたのは、浦島だ。

「鬼に直接触れるのは危険だ。お前は平気でも俺が耐えられない」

「刀はやっぱ返してきちゃったの?」

 桃はいっちーの隣で、自分のこん棒を構える。

「うん。まだこっちは持っていてよかった」

「タイミング悪すぎ」
 堀川はそう言ったけど、そんなことをいま嘆いていても仕方ない。

鬼は好き勝手に暴れている。

さーちゃんが跳び上がった。

蹴りを決める直前に、その足を掴まれる。

打ち込んだ浦島のこん棒が折れた。

転げ落ちたさーちゃんの前に、いっちーが立ち塞がる。

キジは両手にバレエ部の扇子を広げた。

「これ以上、あんたの好きにはさせない!」

 キジの扇子が宙を舞う。

目元を狙ったそれは、簡単にたたき落とされた。

桃がこん棒で死角から叩きつける。

鬼はそれを奪いとると、真っ二つにたたき割った。

「お待たせしましたー!」

 その声に振り返る。

細木が何か抱えて走ってきた。

「学長室から学校保管の刀を見つけてきました!」

「もも、後ろ!」

 鬼の振り下ろす拳からの爆風で、吹き飛ばされる。

「伏せろ!」

 細木が刀を抜いた。

「お前らは下がってろ」

 細木は慎重に刀を構える。

それを見た鬼は、初めて後ずさった。

ジリジリと間合いを詰める細木に、空気が張り詰める。

細木の足が動いた。

次の瞬間、刀は鬼の腹にブスリと突き刺さる。

「うおぉぉぉっ!」

 その刀をつかんだまま、細木はその腹を真横に切り裂こうとしてるけど、何一つ動けずにいる。

鱗が硬すぎるんだ。

「危ない!」

 鬼の拳が落ちるよりも早く、桃は細木に飛びついた。

その拳の下からかろうじて救い出す。

鬼は自分の腹に突き刺さった刀を見下ろすと、ニヤリとその口元を歪めた。

毛むくじゃらの手が、それには小さすぎる柄に伸びる。

ゆっくりと抜き取った。

刀を手にした鬼は、ブンブンと振り回す。

「悪いけど、それは返してもらうわよ」

 動いた鬼の腹から体液が噴き出した。

堀川は鬼の手元を狙う。

弾き飛ばされた刀は、空高く舞い上がった。

「もも!」

 あたしは空を見上げた。

キラリと輝くそれに向かって、走り出す。

「あんたの相手はこっちよ!」

 動き出した鬼とあたしの間に、いっちーが間に割り込んだ。

怒涛のように繰り出される鬼からの拳に、いっちーのこん棒は呼応する。

あたしは高く飛び上がった。

空中で回転するその柄を、しっかりとつかみ取る。

「きゃあ!」

 いっちーの悲鳴だ。

あたしは刀を手に、鬼の前に立つ。

「あんたの相手はあたしよ」

 刀を構える。腕の傷がうずいた。

これはあの時と同じ鬼?

「まぁそんなこと、どっちだっていいけどね!」

 動きはずっと見ていたから、だいたい分かる。

あたしは腰をかがめると、低い姿勢から懐に滑り込んだ。

鬼の左手首を切り落とす。

瞬間、咆吼が耳につんざいた。

すかさずその肩に斬りつけようとして、硬い鱗に弾かれる。

鬼の醜い手が、あたしを掴もうと迫った。

「くそっ」

 刀で弾き返す。

剥がれ落ちた鱗が頬を切りつけた。

斬られた手首があたしを殴る。

足元は鬼から漏れ出す体液であふれていた。

吹き飛ばされたあたしの上に、細木が覆い被さる。

「先生!」

 蹴り上げられた細木は、地面に叩きつけられた。

鬼は体液の流れ続ける腹を押さえると、禍々しい目でにらみつける。

あたしは刀を握りしめた。

「さっさと消えろ!」

 鬼の拳が宙を舞う。

細木の突き刺した傷痕の、ボロボロと鱗の剥がれ落ちたその場所を狙い、真横に切りつけた。

激しい怒号とともに、どす黒いしぶきが噴き出す。

鬼の吐き出す瘴気に、衰えがみえ始めた。

そこに立ちすくみ、あたしを見下ろす。

「コ レ デ オ ワ リ ダ ト オ モ ウ ナ ヨ」

 低いうなり声は、直接脳に響いた。

とたんに瘴気の渦が襲いかかる。

「うわぁっ!」

 目を開いた時、もうその姿は見えなくなっていた。

「……。消えたの?」

「どうやらそうみたいね」

 堀川は構えていたこん棒を下ろす。

「細木先生!」

 あたしはその側に駆け寄った。

地面にうずくまる肩に手を触れる。

細木は自分で仰向けにひっくり返った。

「……鬼は?」

「いっちゃった」

「お前がやったのか?」

 細木の手が伸びる。

あたしはそれをしっかりとつかみ取ると、うなずいた。

「そっか。頑張ったな」

「先生が、刀を持ってきてくれたからだよ」

 あたしの手とその刀には、まだ鬼の体液が滴り落ちる。

「これ、先生に返す」

 それを見た細木は、安心したように微笑んだ。

「鬼はいなくなったと世間では言われていても、実際にはいるんだ。たとえ姿が見えなくても、確実にそこに残っている。それは間違いないんだ」

 細木はあたしを見上げた。

「お前には『傷』があるんだろ? 実は俺にもあるんだ」

 あたしの目から、涙が勝手に流れ落ちた。

「お前の傷も、俺の傷も、たとえ鬼はいなくなったとしても、決して消えることはないし、忘れることもない。たとえ薄れてゆくことはあっても、そのうえでどうするのかは、お前次第だ。それでいいんじゃないのか」

 細木の手が、刀を掴むあたしの手を握りしめた。

「この刀はお前が持っておけ。それでいいですよね、堀川先生」

 堀川はうなずいた。

サイレンの音が遠くに響く。

小田先生が警察官と救急隊員を連れて走って来ていた。

堀川はパンパンと手を叩く。

「さ、怪我人を運ぶわよ。細木先生と犬山さんだけで大丈夫かしら?」

 あたしはいっちーを振り返った。

「いっちー!」

 駆け寄って抱きつく。

いっちーはあたしが抱きしめるのと同じくらい強く、あたしを抱きしめた。

「大丈夫?」

 彼女はにっこりと微笑む。

「うん。ももは平気?」

「あたしのことは気にしないで……」

 いっちーは苦しそうに表情を歪め、目を閉じた。息も荒い。

「いっちー、ゴメンなさい。本当にゴメンなさい!」

「なにがよ、もも」

 彼女はゆっくりと微笑む。

その温かい肩と体の重みに、また涙があふれ出す。

「変なもも。ももが無事でよかった」

 伸ばされた手を、今度はしっかりと握りしめる。

夜がゆっくりと辺りを包み始めていた。

泣きじゃくるあたしから引き離されたいっちーは、堀川先生に付き添われ、運ばれていく。

「もも。もう泣かないで」

「そうよ。こっちまで泣きそうになるじゃない」

 さーちゃんとキジはそう言って、だけどやっぱり泣いてたので、あたしたちは一緒に泣いた。

桃たち三人は後片付けをしてくれている。

学校はその後、一週間の休校を決めた。
 共学化と同時に植えられた桜の若木は、すっかり花を落としてしまった。

今は青くみずみずしい若葉を精一杯に広げている。

「おはよー」

 朝の風があたしの前髪を揺らした。

たった一つの唯一の門だったものが、今は正門と名前を変えている。

その重厚な扉と柱だけは、元の姿のまま残されていた。

変わらないその姿は、この学校の新しいシンボルだ。

柔らかなミルクティー色の背中が見えた。

「いっちー!」

 振り返った彼女に、そのまま飛びつく。

「もうよくなったの?」

「うん。そんなたいしたことなかったから」

「よかった」

「ももは?」

「あたしも平気だよ」

 変なの。

入院中も退院してからも、休校中だってずっとSNSで連絡取り合ってたのに、実際に会ってもまた同じ話をしている。

いっちーと目が合った。

一緒に笑い出す。

「おー! ももたちも早いね」

 その声に振り返る。

「え? さーちゃん?」

 肩まで伸ばしていた髪が、また元の丸坊主に戻っていた。

「伸ばすのやめたの?」

「いや、そうでもないんだけど、やっぱ一回この頭に慣れちゃうと、他の髪型出来ないんだよねー」

 そう言って、自分の頭を撫でる。

その隣でキジはため息をついた。

「知らない人が見たら、罰ゲームさせられてるみたいだから、私は嫌だって言ったんだけど」

「今だけだよ、きっと。こんなこと出来んのも」

 さーちゃんが笑う。

あたしはそんな彼女にも抱きついた。

「なになに? もも、急にどうした?」

「ううん。なんか急に、こうやってしたくなっただけ」

 こんどはキジ。

キジにも抱きついたら、呆れたように笑いながらも、やっぱり抱きしめてくれた。

久しぶりの学校は、それだけでなんだかドキドキする。

「で、本当にそうするの?」

 いっちーはあたしに尋ねた。

「うん。みんなで話し合ったでしょ」

 鬼退治部の部活用アカウントは、公開停止処分を受けたものの、中身は生きていた。

そこで作っていたグループで、この休校中もずっとやりとりをしていた。

あとはそれを実行に移すだけ。

いっちーはあたしを見てそっと微笑む。

そんな表情になぜか、あたしの方が照れちゃったりなんかしちゃったりして。

「なに?」

「ううん。何でもない」

 朝のホームルームが始まって、細木が教室に入ってきた。

いつものクソダサジャージも変わっていない。

何があったのか、噂でしか話しを聞いていなかった他の生徒たちが、心配して細木に群がっている。

一瞬そんな先生と目が合ったような気がしたけど、気にしない。

次の休み時間には、廊下で桃たちとも合流した。

「もも、刀はやっぱり学校に残すの?」

「うん。今はあたしが持つけどね。残しておくべきなのは、あたしじゃなくてこの場所だと思うから」

 自分のものにしてしまうのは簡単だけど、それを誰かに受け継いでいくことの方が、本当は難しいんだ。

あたしは受け取ったこの刀を、次に渡せるような人を見つけなければならない。

ちゃんと守り、育ててくれるような人を……。

「俺たちはもう返しちゃったけど」

 浦島がつぶやく。

「だけど、後悔はしてないよ」

「うん」

 あたしは浦島を見上げる。

「それでいいと思ってるよ」

 金太郎は浦島の肩に腕を置いた。

あたしをのぞき込む。

「で、細木先生はどうだった?」

「別に」

 チャイムが鳴った。

人の波が動き出す。

あたしは笑っている。

「昼休みに職員室来いって言われてる」

「そっか」

 桃もにっこりと微笑んだ。

「いってらっしゃい」

 退屈な授業も、しばらく離れてみたらそのありがたみが身にしみる。

窓から見下ろす壁のない風景にも、すっかり慣れてしまった。

目を閉じると、校庭で体育をしている声が聞こえる。

そんなのも心地良い。

昼休みがやって来て、あたしは職員室へと向かう。
「もも! 来たか、こっちだ」

 職員室でそんな大げさに手を振らなくっても、先生の席くらい知ってるってば。

「廃部の書類は揃った。これで大丈夫だ。問題ない。校長の許可もばっちり取れたぞ」

「凄いじゃん。頑張ったね」

 細木はあたしを見上げる。

フンと鼻息を鳴らした。

「まぁこれは、事前に決まってたからな。で、こっちが新しい書類」

 それを受け取って、目を通す。

びっしりと書き込まれた書類には、一カ所だけ空欄が残っていた。

細木は一つ、咳払いをする。

「そこを決めるのは、お前だと思って」

 細木は顔を真っ赤にした。

自分でその顔をクラス日誌で隠す。

「俺はお前たちが仲良くしてくれているのもうれしいし、こうやって色々やらしてくれるのもうれしいし、ちゃんと頼ってくれるのもうれしい」

 隠しきれていない耳とこめかみから顎にかけての部分が、本当に赤くて笑う。

「俺はずっと嫌われてると思ってたし、実際そうだったし、色々あったけど本当はずっと一緒に色々したかったし、これからもしたい」

 日誌の横からちらりとのぞき込む。

「……お前が、それでもいいって言ってくれるなら……」

 あたしは細木を見下ろす。

きっとこれまでのあたしだったら、何かもっと別の言葉を投げかけていたんだろうな。

「そうしてくれると、あたしもうれしい」

 細木の座っている椅子が、ガタリと大きな音を立てた。

一瞬立ち上がった細木は、またすぐ腰を下ろす。

「あ、もも。お昼ご飯はもうちゃんと食べたか? 時間大丈夫? ちょっとこれを見てほしいんだけどさ、あとで他のみんなとも相談しておいてほしいんだけど、体育科の倉庫に残ってる残りの備品と使えるかなんだけど、調べてみたら……」

 止まらないおしゃべりに、今度はあたしの方がどうしていいのか分からなくなってしまった。

「でね、俺はこっちもいいと思うんだけど、ももはどう思う? いや、もものしたいようにやってもらって全然いいんだけど。例えばね、こんなのもあって……」

「細木先生。もうその辺にしといたら」

 職員室で美顔器をコロコロ顔に当てている堀川が、割り込んできた。

「ふふ。全く。小田っち2号の完成だ」

「小田っち2号?」

 堀川はコロコロで細木を指さす。

「ずっと我慢してたのは知ってるけど、あんまり構い過ぎるとまた嫌がられるよ」

「えっ」

 そう言われた細木の顔は、みるみる青ざめてゆく。

「そ、そ……。んなことは……。あ、イヤ、何でもない」

 途端に大人しくなって横を向いた細木に、あたしはため息をつく。

「別にもう嫌いになんかならないよ。この書類は持っていくね。学校の掲示板、あれでよかった?」

 スマホを操作する。

事前に細木にチェックしてもらっていた、電子掲示板の画面を開いた。

「あぁ、いいよ。とってもよく出来てた。ももはこういうのも上手だったんだね。びっくりした。凄いよ」

「ならアップしとくね」

 あたしは細木と堀川を振り返る。

「じゃ、放課後ね。時間があったら来て」

 教室に戻って、一応は書類に目を通す。

グループメッセージで細木ともやりとりしてたから、まぁそのまんまだ。

何度も修正を加えたそれを、「公開」に設定した。

放課後になって、待ち構えていた桃たちと合流する。

「さっそくアップしてたね。見たよ」

 桃が笑った。

「細木からもらったか? ももがやると後で直すのが面倒くさいから、俺がやる」

 浦島はあたしから書類を奪いとる。

「お疲れさま。ようやくこれからが、本当の本番だね」

 金太郎の優雅に微笑む仕草に、あたしはニッと笑顔で返す。

「そうだよ。忙しくなると思うけど、みんなよろしくね」

 新しく借りた教室に、あたしたちは集まっていた。

「で、どうするの?」

 いっちーは頭を悩ませている。

「『鬼退治』ってのを、他の表現に変えるってことでしょ。鬼退治って、そもそもなに?」

 『鬼退治部』は廃部になったけど、あたしたちは廃部にはしなかった。

『鬼退治』という名称を変更して、新しい部を作ることにしたのだ。

それを皆で考えてる。

「じゃ、これでいいね」

 あたしは細木の残した最後の空欄に、その名前を書いた。

まだ正式認定されたわけじゃないから、(仮)だけど。

教室の扉が開いた。

「三年でも入部出来るって、本当?」

 中くらいのだ。

その後ろには丸いのと細いのもいる。

「俺たちさ、前の学校で部活入ってたんだけど、転校したからね。このまま卒業するのもさみしいなーと思ってて」

 その後ろからも、数人の女の子たちの姿が見えた。

「私たちもいいのかな」

「もちろん! 大歓迎だよ!」

 よかった。本当によかった。

気がつけば、入部希望者は一年だけじゃない。

あふれかえったにぎやかな教室の中で、あたしはうれしくなる。

中くらいのが近づいてきた。

「花田……な、ところでさ。お前、俺たちの名前ちゃんと覚えてる?」

「え? えぇっと……」

 ちらりと横を見る。

助けを求めたいっちーは、ただただ呆れた顔をした。

さーちゃんはニヤニヤとこっちを見ていて、キジは桃たちのところへ逃げ去る。

「わ、分かってるよ。同じクラスなんだもん」

 その中くらいのと目を合わせるけど、次の言葉なんて出てこない。

数少ない男子生徒だ。

もちろん覚えて……。

「俺は門馬」

 中くらいのが言った。

「で、こっちが五島で、こいつは石川」

「あはは、もちろん知ってたさ! 覚えてるっつーの」

 丸っこい五島くんはにこにこ笑って、細っこい石川くんはぺこりと頭を下げた。

「これからよろしく」

 プイと横を向いた中くらいの横顔は、少し赤らんでいるようにも見えた。

「学祭のときに、お前らを見たんだ。模擬戦してるとこ」

 中くらいの門馬が言った。

「俺たちも一緒に来てたんだよ」

「かっこよかった」

 丸い五島と細い石川も、そんなことを言う。

「おーい、もも! 入部届追加でもらってきて」

「了解!」

 あたしは教室を飛び出した。

階段を駆け下りる。

放課後の学校ほど、楽しい場所なんてない。

生徒会室では、はーちゃんとしーちゃんも引き継ぎの真っ最中だった。

入部届を受け取る。

「そんないっぱい入部希望者が来たんだ。よかったね」

「うん。あ、そうだ……」

 あたしは抱えていた小袋を差し出した。

「コレ、差し入れ。うちのママが焼いたクッキー」

「え? ももんちのケーキ屋さんの? いいの?」

「これから教室で、歓迎会するの。たくさん持って来てるから、大丈夫」

「ありがとう。みんなで食べるね」

 生徒会室を出て、急いで教室に戻る。

渡り廊下の向こう、フェンス越しにあの女の子の姿が見えた。

彼女はグッと親指を突き立てる。

『グッドラック。幸運を。君の歩む先に幸あれ』

あたしはそれに、同じように親指を突き出す。

もう少ししたら、細木と堀川、小田っちも教室に来るんだ。

あたしはもう、自分の気持ちに嘘をつかなくていい。

「みんなー! クッキー食べよう!」

 一緒に食べたそのクッキーは、甘い香りを辺りいっぱいに漂わせていた。

【完】

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