僕が美術部に入ったのは、絵を描くためだった。
というのは普通なんだけど、具体的に絵を描いて何がしたかったのかといえば、何気ないものも、絵を描けば、お気に入りになるかもしれないと思ったからである。
さらに言えば絵を見た人に、そうなって欲しかった。
そんな僕はこの街にあるものを題材に、徹底的に細かい絵を描くことに努めた。
見てもらう機会を増やそうと、展覧会やコンテストにたくさん出した。
しかしその出したということが、悪影響を僕に与えてしまった可能性が高くて。
賞が欲しくなってしまったのである。
僕は気づいたら、他の人の絵よりも自分が上手いかどうかばかりにこだわるようになり、そして、何を題材に描こうにも、何にも魅力を感じなくなってしまったのである。
そんな僕が、美堀さんの記事を読んだ時に、かなり心が動いた。
それってつまりは、この街のいかなる景色にも魅力を感じないくらいの僕に興味を持たせたということで、だから相当美堀さんは記事を書くのが上手いんだと思う。
なんだか不思議だった。
ただのネットサイトの記事なんだけど。
それを頑張って一人で作り上げている人が側にいると、特別すごくて、ああ、はい、自分が何にも見てこなかったから魅力に気づけなかったんだなってなる。
さらに、美堀さんの魅力は、正直一目あっただけでも感じたし。
まあそれはなんでかわかんないけど。
とにかく僕は今、そんな尊敬するしかないような女の子と、二人で水族館を楽しんでいるのだ。
さて、それで僕はどんな記事にしようかな。
迷って、だけど特に思いつかない。
自分から隠れた魅力を見つけにいくプロセスは、絵の時以来だ。
だからかなり慎重になってしまう。
けど、なんか心に残るものか……。
うーんと。
「心に残ってるのは……美堀さんかなあ……」
呟いてしまった。
「え、私が、なんか今注目されてます? 先輩に」
「うん。まあそうだね」
うなずく僕に美堀さんは言った。
「それは嬉しいですけど……あの、記事のテーマは……?」
「絵にするよ」
「美堀さんの記事の絵を描きたい」
「写真じゃなくてですか?」
「……うん」
「まあ確かにそのほうが親しみ持たれやすい説はありますけど」
ああ、若干考え込んでる美堀さん。
そりゃあそうだよな。写真でいいのに絵でわざわざ描く必要があるかって話だもんね。
というかなぜ、僕は絵を描きたいと言ったんだろうか。
まだ描きたかったのだろうか。
ふーん。と自分に対して思ったよね。
というのは普通なんだけど、具体的に絵を描いて何がしたかったのかといえば、何気ないものも、絵を描けば、お気に入りになるかもしれないと思ったからである。
さらに言えば絵を見た人に、そうなって欲しかった。
そんな僕はこの街にあるものを題材に、徹底的に細かい絵を描くことに努めた。
見てもらう機会を増やそうと、展覧会やコンテストにたくさん出した。
しかしその出したということが、悪影響を僕に与えてしまった可能性が高くて。
賞が欲しくなってしまったのである。
僕は気づいたら、他の人の絵よりも自分が上手いかどうかばかりにこだわるようになり、そして、何を題材に描こうにも、何にも魅力を感じなくなってしまったのである。
そんな僕が、美堀さんの記事を読んだ時に、かなり心が動いた。
それってつまりは、この街のいかなる景色にも魅力を感じないくらいの僕に興味を持たせたということで、だから相当美堀さんは記事を書くのが上手いんだと思う。
なんだか不思議だった。
ただのネットサイトの記事なんだけど。
それを頑張って一人で作り上げている人が側にいると、特別すごくて、ああ、はい、自分が何にも見てこなかったから魅力に気づけなかったんだなってなる。
さらに、美堀さんの魅力は、正直一目あっただけでも感じたし。
まあそれはなんでかわかんないけど。
とにかく僕は今、そんな尊敬するしかないような女の子と、二人で水族館を楽しんでいるのだ。
さて、それで僕はどんな記事にしようかな。
迷って、だけど特に思いつかない。
自分から隠れた魅力を見つけにいくプロセスは、絵の時以来だ。
だからかなり慎重になってしまう。
けど、なんか心に残るものか……。
うーんと。
「心に残ってるのは……美堀さんかなあ……」
呟いてしまった。
「え、私が、なんか今注目されてます? 先輩に」
「うん。まあそうだね」
うなずく僕に美堀さんは言った。
「それは嬉しいですけど……あの、記事のテーマは……?」
「絵にするよ」
「美堀さんの記事の絵を描きたい」
「写真じゃなくてですか?」
「……うん」
「まあ確かにそのほうが親しみ持たれやすい説はありますけど」
ああ、若干考え込んでる美堀さん。
そりゃあそうだよな。写真でいいのに絵でわざわざ描く必要があるかって話だもんね。
というかなぜ、僕は絵を描きたいと言ったんだろうか。
まだ描きたかったのだろうか。
ふーん。と自分に対して思ったよね。