開花まで、時間がない。


「知ってたんですか? 霧夜さんは、実験が失敗して開花する事を知ってたんですか?」


そう聞くと、霧夜さんは黙って頷いた。


「どうしてです? あなたは俺に助けを求めた。それって、リナちゃんをどうやって救い出せって意味なんですか?」


リナちゃんが本当に花の力で生きているのだとすれば、あの病棟から出る事は死を意味するんじゃないのか?


「人の生死は人が決めることじゃない……。だから、お前に頼んだんだ」


「……俺にリナちゃんをあそこから連れ出させて……殺すつもりだったんですか?」


「殺すんじゃない! 本来あるべき運命に戻すだけだ!」


それは、殺すも同然じゃないのか?


「開花してしまえば、リナの亡骸を抱きしめる事さえできないんだ!! だから、そうなる前にあそこから出したかった!!」


その選択が正しいのか間違っているのか、俺にはわからない。


ただ1つだけ言えるのは、今すぐにリナちゃんに会いに行きたいと強く思うことだけだった――。