チケットを渡し、中に入るとまずは相模湾に生息している魚たちがいた。
ある映画に出てくる魚たちがいたので妙に嬉しかった。
「やっぱり海の生き物はいいですね」
にやにやしながら佐伯が感想を述べた。
「そーだな」
彰が軽めの相打ちを打った。
「魚たちは自由でいいね」
楓は魚が羨ましいのだろう。ある水槽の前で立ち止まり俺にだけ聞こえるような声で小さく呟いた。
「…そーかな」
俺は魚は不自由な生き物だと思う。
いつも死と隣り合わせで、運良くこの水族館みたいな安全な場所に入った魚はいいけど海で生きている魚たちはいつ死ぬか分からない。いつ人間や大きな魚の食料になるか分からない。
大きな魚は大きな魚でいつまでも小さな魚たちを追いかけなければいけない。掴まれられないなら食べるものがなく餓死する。
それに比べて人間の方が自由だと思う。友達とゲームをする。友達とスポーツをする。この世界について学べる。暖かい家があり、暖かい家庭がある。そして、暖かい友人がいる。