神様と二人で寂れた商店街を散歩中、どこからか子犬のような鳴き声が聞こえた。声がする細い路地をそっと覗くと、各家庭の勝手口に麻袋があり、モゾモゾと何かが袋の中で動いていた。

「えっ? 何だ、これ」

神様は、両手をパンッ! と叩く。すると目の前にあった麻袋が消え、辺りに静けさが戻った。


◆◆◆◆◆◆◆【蘇り】◆◆◆◆◆◆◆◆◆

飼っていた犬が、死んでしまった。

唯一、私の支えだったのに……。


死を受け入れられない私は、以前怪しいサイトで見た『蘇り』を試してみた。



まずーーー。


夜中の2時に家の玄関に、死んだ犬を置く。犬の血と飼い主である私の血を片手に乗せた砂と良く混ぜ、その砂を大きな袋に入れる。砂袋は、犬の隣に置いた。


1日目は、これで終わり。


朝、起きて見に行くとなぜか犬は消えていた。でも砂袋は、そのまま。

その砂袋を土に埋め、夜まで待つ。


次の日の夜中2時。埋めた砂袋を取り出し、また家の玄関前に置く。


少し、重くなった?


気のせいかも。



でもーーー。




埋めて、出して、埋めて、出して。

何日もそれを繰り返した。ちょうど1週間目。
砂袋は明らかに重く、ずっしりとして。運ぶ度に汗が出た。


もうすぐ………。

もうすぐ会えるからね。


砂袋をいつものように玄関に置き、私は二階の自分の部屋で寝ていた。


すると、微かに聞こえる甘えた声。
私を呼ぶ懐かしい声。私は、飛び起きると玄関扉をゆっくりと開けた。


「あっ」


砂袋が、グニグニと動いている。しかも、あの声が聞こえた。私に甘えてくる時の声。



【袋が破れるまで、絶対に袋を開けてはいけない】



その注意を私は無視した。我慢が出来なかった。


袋を開けると、2つ。赤目が見え、そして、


そして。



私は、目覚まし時計の音で目を覚ました。
ベッドから起き上がると自分の体じゃないみたいに重く、鏡を見るまでもなく、体の異変に気づいた。



お腹が、膨れてる……。


「えっ、えっ、どうして」


なんで!


なんで!



なんでよっ!!!!



私は、もう一度だけ会いたかっただけなのに。



なん…で……………。




私の膨れたお腹から、あの甘えた愛犬の声がした。