死んでる!!


あたしは咄嗟に美緒から離れていた。


美緒の脈は完全に停止したままだ。


それなのに美緒は目をあけて、どこにも焦点の合わない目でどこかを見つめている。


死後の筋肉の収縮とか、そんなものじゃないことは明白だった。


「成功した……」


咲が呟いた。


あたしは振り向いく。


咲はさっきから目を輝かせ、すばらしい芸術作品でも見るかのような視線を美緒へ送っている。


「儀式は成功したんだよ! 絶対様は人間じゃないから表情はない。会話もしないし、寝ないし、食べない。美緒はそういう存在になったんだ」


咲が近づいても、美緒はなんの反応もみせなかった。


普通、自分のここまで拷問した相手が目の前にくれば少しは怯えてもいいのに。


美緒は咲の存在にも気がついていない様子だ。


「お願い絶対様。あたし、大崎くんの彼女になりたいの」


その場に膝をつき、美緒の手を握り締めて咲は言った。


その声はさっきまでとは打って変わり、優しく、そして可愛いものになっていた。


しかし、あたしはその声を聴いた瞬間激しい嫌悪感と怒りが湧き上がってきていた。


咲の願いは大崎くんと付き合うこと。


たったそれだけの願いのために、美緒はこんな目に遭ったんだ!