「保健室に行くよ! 消毒してもらわないと」


「嫌だ、行かない!」


「どうして?」


「消毒液は、ニキビができるから」


そう言う光の表情は真剣そのものだった。


冗談を言っているようには聞こえない。


「なにそれ。消毒でニキビなんてできるわけないでしょう?」


「できたんだよ! 昨日。ニキビを消すために消毒液で顔を洗ったんだから!」


光はそういって真里菜を突き飛ばした。


真里菜は骨折した腕を壁にぶつけ、うめき声を上げてうずくまってしまった。


しかし光はそんなこと見えていないかのように「ニキビができるからダメ。ニキビができるからダメ」と、呟いている。


「光……」


真里菜は痛みに顔をしかめながらも、悲しそうな表情で光を見つめたのだった。