小さなおっぱい。
 おおきなおっぱい。
 綺麗なおっぱい。
 平らなおっぱい。
 大きさや柔らかさ、弾力にハリと、おっぱいと言っても千差万別で、様々なおっぱいがある。
 その中でも、今触れているこれは特に感触が優しい。
 触れているだけで幸せな気分になり、いつまでも触り続けていたくなるような心地良さだ。

――さん。……ジさん。

 おっぱいが俺に話しかけてくる。
 これはもっと触って欲しいと言う事だろうか。
 女性のおっぱいとは、どうしてこれ程までに素晴らしいのだろう。
 おっぱいをムニムニと触る度に、右手が蕩けてしまうようだ。

「……さん! リュージさんってば!」

 大きな声が耳元で響き、見慣れた顔――アーニャの顔が俺の視界を埋めている。

「ん、アーニャ。おはよう」
「お、おはようではないですっ! セシルさんがすぐ傍に居ますからっ!」
「何? どうしたの?」
「ですから、夜伽は二人っきりの時になさいませんか? 私はお世話になっている身なので、求められれば断る理由はありませんが、セシルさんに悪影響が……」

 夜伽って、朝からアーニャは何を言っているのだろう。
 何か混乱しているの?
 確か混乱を治すキュア・コンヒューズっていう薬があったはずだけど。
 調剤室へ薬を取りに行こうかと身体を起こした所で、俺の右手がアーニャの胸に触れている事に気付く。
 そして、あのリアルな感触の夢……ベッドから飛び起き、朝からダイビング土下座する事になってしまった。

……

「まさか、あんな夢をみてしまうとは……」
「まぁ何十人、何百人という女性のを見たわけですし、仕方ないんじゃないですかね」

 おっぱいがいっぱいな、とんでもない夢を見てしまった事を説明し、アーニャが水に流してくれたけど、

「お兄さん、おはよ。どんな夢を見たの?」
「お、お医者さんとして頑張る夢だよ」
「そうなんだ。お兄さん、流石だねー」

 起きてきたセシルの質問を誤魔化したら、関心されてしまった。
 くっ……胸に刺さる。
 本当はエッチな夢を見てしまい、しかもアーニャの胸を触ってしまっていただなんて、絶対に言えない。

「おはようございまーす!」

 唐突に、聞いた事のある大きな声が響いたかと思うと、クリニックの入口からララさんが入って来ていた。
 昨日、疲れ過ぎて鍵を閉めずに寝ちゃったのか。
 防犯意識をしっかり持たないとな。

「昨日はありがとうございましたー! 夕方くらいからは、町の中を人が歩くようになって……本当に助かりました。ありがとうございます」
「それは良かったです。ところで、御用件は?」
「はい。ちょっとついて来て欲しい場所がありまして」
「分かりました……が、少しお待ちいただけますか?」

 ララさんに待合室で待ってもらい、三人で朝食とシャワーを済ませる。
 昨日は疲れ過ぎて皆そのまま寝ちゃったからね。
 着替えなども済ませてララさんの元へ行くと、そのまま外へ。

「凄い。あの建物が一瞬で消えちゃうんですねー」
「えぇ。でも、他言無用でお願いしますね」
「大丈夫ですって。それより、こちらですー」

 暫く歩くと、小さな家に着いた。

「エミリアさーん! おはようございます。昨日お話しした先生を連れてきましたよー」

 玄関から大きな声を出すと、ララさんがそのまま家の中へと入って行く。
 俺たちもついて行くと、寝室で顔色の悪い女性が寝込んでいた。

「私が把握している中で、エミリアさんが一番症状が重くて、歩く事も出来ないんです。リュージさん、エミリアさんを治してくれませんか」

 エミリアさんと呼ばれた女性は顔色が悪く、息も荒い。
 どうやらかなり苦しい様子なので、すぐさま胸に触れる。

「失礼します」

『診察Lv2
 状態:蛙毒(強)、麻痺毒、衰弱』

 大勢の人を診察したけれど、蛙毒の強という状態は初めてみた。
 しかも衰弱とも記載されているし。
 すぐさま倉魔法を使い、取り出したBランクのパナケア・ポーションを少しずつ飲ませて再び診察。

『診察Lv2
 状態:衰弱』

 一先ず毒は治ったものの、パナケア・ポーションで衰弱は治らないらしい。
 衰弱という事は、身体が弱っているので、状態異常とはまた違うみたいだ。
 一先ず、弱って行くのは防ぐ事が出来たので、後は栄養のある物を食べ、身体をゆっくりと回復させて……って、これだ。

「エミリアさん。こちらのポーションも飲んでください。これで良くなるはずですから」

 昨日、風邪を引いている人にも出した、滋養強壮効果のあるナリッシュメント・ポーションを飲んでもらうと、

「……身体が動く! あの辛さが消えた……」
「エミリアさん! 良かった!」

 静かに女性が身体を起こし、すぐさまララさんが抱きついた。