そう言って母は去っていった時に母に話しかけた一人の男がいた。
「あ、こんにちは」
「えっと……。どちら様ですか…?」
今僕が割って入ったらやばいと思ってみていることしか出来なかった。
「おい、どうした?何見てんだ?」
智に声をかけられてハッと我に返った。
「あ、ごめん。いや別に何も?」
でも、母とその男と話している内容がどうしても気になったから随分昔にやってた盗み聞きをすることにした。
「覚えてないですか」
男はそう行って帽子とメガネを外した。おそらく変装のために着てきたものだろう。
「えっと……、お久しぶりですね……。あの…あの時は色々ありがとうございました」
戸惑いながらも母は深々と頭を下げた。
「いえ、こちらこそ、色々ありがとうございます。色々助かりました」
遭遇してしまったことは仕方ないことだ。話してる内容は大した事じゃなくてちょっと安心した。
「湊のお母さんと話してるあの人知り合い?」
しまった。気になって見すぎた。
「一応……。と、とりあえず行こうぜ」