「あのさぁ、僕バイトしたいんだけど」
そう話したのは、話を逸らしたかったっていうのもあるけど母が冷蔵庫から缶ビールを取りだしたので酔う前に言いたかった。
「急にどうしたの?欲しいものでもできたの?」
バイトがしたい理由は2つある。節子先生にお金をきちんと渡すためと家のためだ。後は…もしかしたら麗音と遊んだりどこかに出かけたりするかもしれないから。これはあくまで願望だけど。
「別に無理にやらなくていいのよ。でも私、湊の『したい』を久しぶりに聞いて少し嬉しいわ。だからって訳ではないけど、無理しない範囲ならしても構わないわよ」