トラックにひかれそうになって気を失い、私の前世と思われる少女の記憶が呼び起こされた次の日。
処理しきれないくらいに色々なことが起きたけれど、朝はいつも通りやって来る。
スマートフォンのアラームで目を覚ました私は、カーテンを開けて大きく伸びをした。
強い日の光が、ぼんやりしている脳と、けだるさの残る体を始動させてゆく。
どうやら昨日のことは丸ごと全部夢だった、なんてオチではないようだ。
しっかり現実の出来事として、覚醒した脳が認識している。
擦りむいた膝に大きめの絆創膏が貼られているのが、何よりの証拠である。
頭の整理は、まったく追いついていなかった。
幸いにも、今日から三日間はテストの返却のみの日程となっていて、学校はお昼ごろに終わる。じっくり考えよう。
歯を磨いて顔を洗い、軽くメイクを施す。髪をとかして、パジャマから制服に着替える。
「琴葉、もう大丈夫なの?」
朝食の準備をしている母親から心配された。
「うん。むしろたくさん寝たから元気だよ」
「そう」
キッチンでソーセージを炒める母が一瞬だけこちらを見て、すぐに視線をフライパンに戻す。