遠くから、同級生たちの笑い声が聞こえてくる放課後。

 六つ目の月守(つきもり)風香(ふうか)の記憶だった。

 わたしはイライラしていた。
 シロちゃんと帰ろうとしていたときに、担任の教師に呼び出しを受けて、教室に残されたからだ。

「月守さん、大丈夫?」

 わたしを呼び出した張本人の羽酉(はとり)先生が、下から覗き込むようにこちらを見てくる。
 お互いに椅子に座っているため、目線は同じくらいだ。

「何がですか?」

 不機嫌さをわざとにじませて答える。
 彼女が言いたいことはなんとなくわかっていた。

「いつも、休み時間とか、一人でいるじゃない?」

 思った通りだった。
 わたしはクラスに友達がいないのだ。それを心配して、こうして緊急に二者面談を行うことにしたのだろう。

「まあ」

 はっきり言って、余計なお世話だった。

「何かつらいことがあったら相談に乗るからね」

「大丈夫です。別に、いじめられているとか、そういうわけじゃないんで」

 これは本当だった。

 別に、友達なんて必要ない。どうせ、何年か経ったら疎遠になる。私はシロちゃんさえいれば、他に何も要らないのだ。

 きっと先生もわたしたちの関係が、他のカップルと同じように、恋愛ごっこで終わると思っているのだろう。